第43話
ワシは助ける事が出来ないおばあちゃんを助けようとした。
その事でおばあちゃんを不幸にしてしまった。
それだけの人生じゃが、それでも最後まで見て欲しい。
ワシの愚かさを知れば重の人生に役立つ。
そう信じたいんじゃ。
最後まで見て欲しい。
おばちゃんは生まれつき体が弱かった。
後から受けた傷なら魔法や回復薬で治せる。
じゃが先天的に体が弱い場合治す事が難しい場合もあるんじゃ。
ワシは腕のいい錬金術師からポーションを買っておばあちゃんに飲んでもらった。
腕のいい治癒士にも来てもらいおばあちゃんを治そうとして駄目だった。
そこでワシは回復魔法の技術が進むインドに行く事にした。
ワシが最高の治癒を出来るようになればおばあちゃんを治せると思った。
じゃが、おばあちゃんはワシを引き留めた。
「時成、待って!」
「もう決めたんじゃ」
「お腹の中に子供がいるの!」
「そ、そんな、その体で」
「産みたいの」
「じゃが、命の危険がある」
「あなたとの子供なの、それでも産ませて」
ワシとおばあちゃんは何度も言い合いになったが結局子を産むことにした。
そしてワシはインドに行く事にした。
ワシはおばあちゃんが危ないと知り、狂ったように回復魔法を習得した。
そして修行を切り上げて日本に戻った。
「おめでとうございます、元気な女の子です!」
「無事か! 回復魔法を使うでの」
「お父さん、大丈夫よ」
「お父、さん」
「ええ、だって時成はもうお父さんになったんだから」
その言葉に、娘の姿に涙が流れた。
じゃが難産だった。
おばあちゃんはかなり弱って危ない所じゃった。
ワシはまたインドに向かおうとしておばあちゃんに止められた。
それでもワシは回復魔法を極める為にインドに向かった。
体の弱いおばあちゃんを、回復魔法を極める事で救えるかもしれないと。
その時はそう思っていた。
ワシは何年も修行をして帰ると娘は小学生になっていた。
娘が健康に育っていく、それが嬉しい。
じゃが、修行のいつからか、悟った。
回復魔法では駄目だと。
じゃが、もっと腕を上げれば何かが変わると藁にも縋る気持ちで修業をした。
修行をすればするほど回復魔法ではおばあちゃんを助けられないと分かるようになった。
じゃがそれでもワシはおばあちゃんに回復魔法を使った。
何か、奇跡が、ワシの思い違いで本当は治ると信じたかった。
ワシは回復魔法を極めた後、おばあちゃんに使った。
魔力が切れるまで使った。
「ああ、体が楽になりました」
「すまない。ワシの力では、これが限界じゃ」
「楽になっています」
ワシは諦めなかった。
諦めてしまえば弱って死んでしまうおばあちゃんの運命を受け入れる事になる。
今のままではおばあちゃんは長く生きられない。
ワシはイギリスに錬金術を学ぶことにした。
今度はおばあちゃんだけではなく、娘にも修行を止められた。
娘が泣きながらワシに抱き着いた。
「行かないで! お父さんがいなくてお母さんが泣いていたの! 行かないで!」
ワシの心はハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。
じゃがそれでもワシは、おばあちゃんを助けたかった。
イギリスに行って錬金術を学んだ。
そして最高のポーションを作り日本に戻った。
「ああ、体が楽になりました」
途中から分かっていた。
このポーションはただの気休めじゃ。
おばあちゃんの腕は細くなり、食欲も落ちていた。
そんなある日、アメリカのニュースが飛び込んできた。
時魔法の基礎理論。
回復魔法でも回復薬でもおばあちゃんを癒す事は出来なかった。
じゃが時魔法でもし、時を巻き戻す事が出来れば!
ワシは大量のポーションを置いてアメリカに向かおうとした。
じゃが娘のお腹に赤ちゃんがいた。
それが重じゃ。
ワシはまた引き留められたがそれでもアメリカに渡った。
これが最後のチャンスだろう。
ワシは狂ったように時魔法を学んだ。
そして青の魔眼を開眼した。
「トキナリ、素晴らしい! 君はパーフェクトだ!」
みんなから讃えられたがワシは自分が不完全に見えて仕方がなかった。
青の魔眼で他のみんなが使う魔法をラーニングして改良し続けワシが一番の時魔法使いになった。
ワシの魔法習熟は飛躍的に向上したが時魔法を学び技量を高めるほどに不安が増していく。
『もし、これでだめなら、もう出来る事が無くなる』
そしてワシは、時を巻き戻すリバースの魔法を覚えて日本に、
おばあちゃんのいる稲田村に帰った。
これが最後のチャンスだった。
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