第11話


 俺が前に歩くとあかりさんが倒れた。

 やはり、無理をしていたんだ。

 

 このわずかな回復が本当にありがたい。

 負けるわけにはいかない!



 ハイゴブリン1体を剣で斬り倒す。

 残ったハイゴブリンとゴブリンキングが俺に斬りかかると見せかけて素通りした。


 後ろにいるみんなが狙われている!

 違う、あかりさんが狙われている!


「クイック!」


 自分を加速させつつ魔法弾でハイオークをすべて倒しゴブリンキングに魔法弾を放ちながら走った。

 もう、魔法は使えない。


 ゴブリンキングに追いつきそうになった瞬間。

 ゴブリンキングが振り向きざまに剣で斬りつけてきた。

 その顔は口角がつり上がっている。


 俺を誘い込むための罠か!



 ゴブリンキングの大きな剣を剣で受けると火花が散った。

 攻撃をいなし、クイックの効果が残っている内にゴブリンキングを連続で斬った。


「うおおおおおおおおおおお!」


 いける! 

 このまま押し切る!


:すげえ、これなら倒せる!

:一方的にゴブリンキングを追い詰めてる!

:重ならやってくれると信じていた!

:行ける! いけるぞ!



 だがその瞬間剣が折れた。

 オーラの込め方が甘くなっていた!?


 それでも俺は折れた剣を何度も何度も突き刺しゴブリンキングが倒れても馬乗りになって剣を突き立て続けた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 クイックが消えても何度も剣を突き刺し続けてゴブリンキングが魔石に変わると俺は倒れるように地面に寝ころんだ。


「ふー! ふー! はあ、はあ、はあ、はあ」


:勝ったのか!

:うおおおおおおおおおおおおおお! 重がやってくれた!

:きたあああああああああああああああああああああ!


:鳥肌が止まらない

:俺も鳥肌が立っている。ホント凄すぎる


 俺は地面に倒れた。


「重、もう大丈夫だ。眠っていてくれ」


 俺は、意識を失った。



 

【冒険者視点】


 残った俺達で重とあかりの倒した魔石を拾った。

 重とあかりが無事な事が分かると役場の人間がお祭り会場に少しだけでも2人の顔を見せる事になった。

 不安になっている村のみんなを安心させたいらしい。

 2人は救急車に乗って運ばれ撮影中のドローンは放置された。


「お、おい、この剣」

「ん、どうした?」

「剣を見てみろ」

「見た、で? なんだ?」


「分からないか? この剣、ただの鉄の剣だ」

「はあ!?」

「一切強化されていない」

「はああ!?」


:おかしくね!

:Bランクでただの鉄の剣!

:魔鉱石とか色々良いのがあるだろ! なんで鉄の剣なんだ!?


:それ以前に普通強化位するだろ!?

:どれだけオーラの込め方がうまいんだ!


:あの早さで剣を振って、よっぽどうまくオーラを込めないとすぐに剣が壊れる

:そう言えば重が言っていた。おじいちゃんから基礎が大事だと何度も言われていたらしい

:重は本当にBランクなのか? 

:おかしい! 色々おかしい! 検証が必要だな



【重視点】


 一瞬だけ目を開くと、村の広場が見えた。

 俺は寝ころんだまま救急車から降りる。

 これは、夢か。


 みんなは広場から避難しているはずだ。

 ここに残っているはずがない。

 それに俺が運ばれるとしたら街の病院だ。

 広場で止まるわけがない。

 稲田村のみんなが集まてくる。

 


「重、ありがとう!」

「重君、ありがとうね」

「重は村を救った英雄だ!」


「触らないでください! すぐに救急車に乗せて街の病院に向かいます!」



 おばあちゃんが俺を拝んでいる。

 村のみんなが俺を讃える。

 前にイチゴジャムを買った少女と少年が何故か泣いている、血を見て怖くなったんだろう。


 いや、これは夢、俺の、願望だ。


 俺はおじいちゃんのようになりたいと思っている。


 俺は目を閉じて眠った。




 重がゴブリンキングを倒すと避難したみんなが広場に戻っていた。

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