黒剣の鞘

大剣ゴブリンを倒し、少し経つと集落の中央に階段が出現した。戦闘で疲労した体を引きずるようにして、ゆっくりとその階段を下りていく。

階段の先に広がっていたのは、いつも通りセーフエリアだった。


「ふいぃ…」


中央にはいつものように魔法陣があり、その周囲には少し休憩できるスペースが設けられていた。そして、そこには既に2人の教師が待機していた。

細身で眼鏡をかけた男性教師が俺の姿に気づくと、にこやかに微笑んでこちらに近づいてきた。


「新入生かな?」


「はい」


俺は少し疲れた声で答える。すると教師はさらに微笑みを深め、俺に向かって祝いの言葉をかけてくれた。


「おめでとう、君が新入生で5階層に一番乗りだね。名前は?」


「黒木太陽です」


「ああ、Aクラスの。初日から1人でダンジョンに潜ってたんだって?」


「まぁ、はい」


「ハッハッハ、命知らずというか馬鹿というか。何にしろおめでとう」


そうにこやかに拍手しながら俺に言う。なんだか失礼じゃないか?と少し思うと隣の男性がメガネの男性の頭をパシッと叩き話しかけてくる。


「同僚が悪いね、ノンデリカシーというやつなんだ。

あぁそうそう、5階層からはダンジョンマップで詳細なマップを確認できないんだ。だから次探索するときはダンジョンマップを自動マッピングモードに変更しておいてね、じゃないと帰ってこれなくなるから」


「わかりました」


さすがに疲れが溜まっていた俺は、これ以上は無理だと判断し、セーフエリアの中央にある魔法陣の上に乗り、ダンジョンの入口へと転移した。


ダンジョンの入口に戻ると、まずはドロップ品買取所に向かうことにした。戦闘の成果として手に入れた魔石や鉱石を売却し、ポイントを手に入れるためだ。受付に行き、リュックの中に詰め込んだアイテムを次々と取り出して並べると、店員が丁寧に査定してくれた。


「全部で5000ポイントになりますね」


5000ポイントというのは悪くない収益だ。探索者カードにポイントが追加され、合計で17400ポイントになった。


「黒剣の鞘買えるかな」


大剣ゴブリンがドロップした黒い剣には鞘が付いていなかったので、ちょうどいいサイズの鞘を探すことにした。

商業エリアはいつも通り賑わっていて、さまざまな装備やアイテムが並んでいる。俺はじっくりと店を見て回り、やがてサイズがぴったりな鞘を見つけた。


「これでいいじゃん」


革で出来ているその鞘はシンプルながらも頑丈そうで、俺が手に入れた黒剣にもよく似合う。値段を確認すると15000ポイントだった。ほぼほぼポイントが無くなってしまうが、まぁいいだろう。


「これください」


店員に声をかけて購入し、鞘に黒剣を収めてみる。


「おーピッタシ」


完璧に収まったことを確認し、ついでリュックがどれほどなのか、さらに店を見て回ることにした。

しばらく歩き回っていると魔法のリュックを売っているとこを発見した。

一番安く容量が少ないので価格は60000ポイント。これ貸出所にあるやつと同じだな。

現在のポイントではまったく手が届かないが、頑張れば全然買える値段だな。一々返しに行くのも面倒くさくなってきたし次の目標としよう。

  

リュックを見つめながらそう決意し、店を後にした。

さすがに疲れてきた俺はそろそろ帰ることにした、ダンジョン入口にある道具貸出所へと向かい、そこで借りていた剣とリュックを返す。

にしても大剣ゴブリン強かったな、この調子であれ以上のが来てもやばいし、明日は4階層のボブゴブリンでレベル上げとポイント稼ぎでもするかな。

そう思い俺は帰路についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る