ステーキ
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夜咲剣は、黒木太陽が出て行った扉を静かに見つめていた。その瞳には鋭さが宿っており、何かを深く考え込んでいるようだった。
しばらくすると彼はゆっくりとスマホを取り出し、画面をタップして耳に当てた。
「私だ」
夜咲は短く一言で通話を開始する。相手の応答を待ちながら、机に置かれた書類に目を通す。
「いや、その件とは別でまた厄介ごとが起きるかもしれん」
夜咲は書類をペンで軽く叩きながら、夜咲は続ける。
「来訪者が現れた。種族は悪魔だと言う」
一瞬、通話の向こうで驚きが漏れるような気配があったが、夜咲剣はそれを無視して話を進めた。
「いや、ダンジョンのとは別だ、会話できるほどの知能がある。……ああ、天使の次は悪魔だとよ。
敵対的かはまだ分からんが、その個体は人間と契約を結び協力関係にあるようだった」
夜咲の声には慎重さが漂う。彼自身、まだ全容を掴みきれていない。
「私が確認したのは子供のような個体だったが…そうだな、これから別の個体が確認されるようになるだろう。その対応を頼む」
彼は相手に対応を依頼すると、軽く溜息をついた。
「私の方も、また明日詳しいことを聞いてみよう。では、またな」
そう言い、電話を切った。スマホを机の上に置くと夜咲は疲れたように背もたれに身を預けた。
「まったく、何故日本ばかり面倒事が起こる…」
部屋の中に彼の独り言が響き、夜咲は一瞬、遠い過去を思い返すように目を細めた。
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学園長室を後にして、俺は帰り道を歩いていた。ふと、あることを思い出し、声に出してしまった。
「げっ、買取所行くの忘れてたわ……はぁ」
思わず溜息が漏れる。ダンジョンを出てすぐに学園長に連行されたものだからすっかり忘れていた。
明日の授業が終わったらまず買取所だな。
そして歩いていると、道行く人々がじろじろと俺を見ていることに気づいた。
何だ?と思ってふと自分を見下ろすと、ダンジョンからそのまま戻ってきたせいで、派手なスーツのままだった。
「くそぉ…こんな屈辱を受けることになるとは…これも全て学園長のせいだ」
心の中で悪態をつきながら、周囲の視線に耐える。すると、ザベルの声が頭の中に響いてくる。
(そのスーツかっこいいと思うけどなぁ)
俺はザベルの感想に苦笑いしながら、足早に家に歩いていった。
家に到着すると、ドアを開けながら「ただいま〜」と呟いた。
そして黒剣を軽く叩きながら言う。
「ザベル、出てきていいぞ」
すると、黒剣から黒い煙が立ち上り、ザベルが姿を現した。
「おお!ここが太陽の家か!」
ザベルは興奮気味に部屋を見回しながら言った。
「そんじゃ早速、飯にするか」
俺は早速、ダンジョンで手に入れた闘牛からドロップした肉のブロックを取り出し、キッチンに向かった。包丁で肉を丁寧に切り分けていると、ザベルが興味津々でこちらを覗き込んでくる。
「何作るんだ?」
「ステーキだよ、ステーキ。うめーぞ」
そう答えると、ザベルは目を輝かせながら言った。
「おお!美味いのか、楽しみだ!」
俺は肩をすくめながらも、「まぁ、この肉が美味いかは知らねぇけどな」と軽口を叩いた。
そして切り分けた肉に塩と胡椒を振り、じっくりとフライパンで焼いていく。片面にしっかりと焼き目がついたら、ひっくり返して反対側も焼き、最後に側面を軽く焼いて仕上げる。
「よし、出来た」
俺はステーキを食べやすいように切り分け、皿に盛りつけた。
「そこの椅子に座りな」
「分かった!」
ザベルは素直に椅子に座り、ワクワクしながら俺の料理を待っていた。
炊いていたほかほかの米もよそい、フォークとスプーンを用意して、ザベルの前に出す。
「このフォークとスプーンを使って食べろよ」
ザベルは言われた通りにフォークを使い、切り分けたステーキを口に運んだ。しばらく咀嚼して飲み込むと、ザベルは目を見開きながら声を上げた。
「うんまー!!」
「そりゃ良かった。ステーキソースもあるからな」
ザベルはそのまま勢いよくガツガツと食べ始める。俺は笑いながら、新しい肉を焼き、ザベルと共に夜ご飯を楽しんだ。
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