聞き取り

授業が終わると、俺はいつものように教室を出た。ダンジョンへ行こうかなと思っていたところで、サユリ先生に声をかけられる。


「黒木くん、学園長が呼んでいます。この後学園長室に行くように」


「ああ、はい。またか…」


心の中で溜息をつきながら、俺は学園長室へと足を運んだ。昨日の件の続きだろうが、なんとなく気が重い。


学園長室に到着し、扉をノックする。


「黒木です」


中から学園長の落ち着いた声が返ってくる。


「入れ」


扉を開けて部屋に入ると学園長はデスクに座り、こちらを見ている。この独特な圧迫感は慣れないそうにない。


「何度もすまないな。昨日の続きなんだが、今日は契約をする方法と、悪魔についてもう少し詳しく聞かせてもらいたい」


学園長はそう言って、俺を椅子に座るよう促す。まあ、ザベルとの契約について話すのは難しいことじゃない。俺は思い出しながら話し始めた。


「契約のやり方は…確か、まず契約内容を決めて、次に悪魔の名前を決める。そして最後にお互いの血を飲み合う…だったかな」


学園長は頷きながら、ペンでメモを取っている。アカン、自分で言ってて思ったが契約の仕方が少し禍々しい、特に最後、始末されるとかないよな?


「ふむ…興味深いな。では悪魔を出してもらえるかね?」


俺は軽く息をつき、すぐに黒剣を軽く叩いた。


「おい、ザベル」


すると、いつものように黒剣から黒い煙が立ち上りザベルが現れる。


「どーも〜」


ザベルは明るく手を振りながら登場したが、その場の雰囲気に少し気後れしているようだ。学園長の鋭い視線がザベルに向けられている。


「ザベル、悪魔について教えてくれないか?」


学園長が静かに尋ねる。


「いいよ!」


ザベルはニヤリと笑い、話を始めた。


「俺たち悪魔は強くなるために人間とかと契約して使い魔になるんだ。前まではよく召喚されてたんだけど、最近めっきり召喚されなくなってね。それで悪魔を送り込む方針にしたってわけさ」


ザベルは饒舌に話し続ける。前にも俺に話したことだな。

学園長はじっと聞き入りながら、少し考え込むように問いかけた。


「その方針を決めたのは誰なんだい?」


「女王様だね。俺たち悪魔を創り出したお方で、この世界に送ってくれたのも女王様さ」


ザベルの言葉に、学園長の表情が少し険しくなる。学園長はしばらく沈黙した後、俺に視線を向ける。


「黒木くん、君は身体に異常は無いかね?悪魔との契約で、何か変わったことはあるか?」


「いや、全く問題ないです。特に変わったことも無いですね」


俺は即答した。ザベルと契約したからといって、今のところ身体に悪影響は感じていない。

朝になったら体が悪魔になってるなんてことも無かった。


「そうか。ではこれで話は終わりにしよう。昨日も言ったが、人目のあるところでは悪魔を出さないようにしてくれ。近々、他の悪魔も確認されだしたら、世間にも公表するつもりだ。それまでは控えておくようにな」


学園長の言葉に、俺は頷いた。


「分かりました」


ザベルも、黒剣に戻る。学園長に軽く会釈して俺は学園長室を後にした。


学園長室を出ると、俺は大きく伸びをしながら呟いた。


「疲れた〜…」


本当にあの妙な緊張感には慣れない。学園長も何か圧倒的につまらない一発ギャグでもかましてくれればあの空気もマシになるのにな…いやあの渋い顔で一発ギャグかまされても変な空気になって気まずくなるだけか。

俺は更衣室に向かい、派手なスーツに着替えた。そして昨日売るのを忘れていたアイテムを売りに買取所へ向かった。


買取所に着くと、リュックに入っていた魔石や他のドロップ品を売却し、ポイントが増えるのを確認して、ダンジョンの入口へ向かった。


転移の魔法陣に乗り、8階層のセーフエリアに到着する。そしてザベルも黒剣から出した。


「さて、今日も頑張りますかね」


「おー!」


俺は8階層のセーフエリアを抜け、探索を開始した。 

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