ニュース

家に帰ると、俺はすぐに「出てきていいぞ」と言い、黒剣を軽く叩いた。すると黒剣から黒い煙が出てきて、ザベルが姿を現す。


「ふぅー、今日は剣の中にいる時間が長かったな〜」


ザベルは伸びをしながら体をほぐすように動き回る。


「角兎がいなけりゃ出といて良かったんだけどな」


俺は手洗いをして、早速冷凍庫から昨日切り分けた肉を取り出し、薄切りにしていく。手慣れた動きで全ての肉を切り終えると、次に玉ねぎを取り出して切っていく。

フライパンにすき焼きのタレと水を入れて火をつけ、切った玉ねぎを放り込み、煮立らないように弱火にしてじっくり煮込んでいく。俺は牛丼に入る玉ねぎは味が染み込んでいてトロトロじゃないと嫌なんだ。


しばらくすると玉ねぎにすき焼きのタレが染み込んで、しんなりとしてきたので、薄切りにした大量の肉をフライパンに投入し、一緒に煮込んでいく。

そして牛肉に火が通ったのを確認すると、火を消して、どんぶりに白いご飯をよそい、その上に作った具をたっぷりとのせた。そして忘れずにつゆを回しかける。


「はい、牛丼の完成だ」


俺はザベルに牛丼とフォークを渡す。ザベルは嬉しそうにどんぶりを受け取り、鼻をくんくんとさせて牛丼の香りを堪能した。


「いい匂いだな!美味そうだ!」


そう言って、早速フォークで牛肉を口に運ぶと、ザベルの顔がぱっと明るくなり、「うんまーい!!」と叫んだ。

大口を開けてガツガツと食べるザベルを見ながら、俺も自分の牛丼を食べ始める。

箸で肉を摘まんで口に運ぶ。自分で作ったとはいえ、なかなかの出来だ。やはりすき焼きのタレは素晴らしい。

しばらく無言で食べていると、つけていたテレビのニュース番組にふと目が留まった。


「新たな友好的種族が発見されました。その種族はなんと、悪魔です」


画面にはニュースキャスターが登場し、次にザベルによく似た悪魔の姿が映し出された。

俺は牛丼を食べる手を止め、少し驚いた顔でその画面を見つめた。キャスターはさらに続ける。


「悪魔はこのような姿をしておりますので、発見された際には最寄りの探索者組合へご連絡ください」


「おいおい、昨日の今日だぞ。対応くそ早いな。いやまぁそりゃそうか、魔物の方と勘違いして殺しちゃまずいもんな。

てかザベル以外の悪魔って友好的なもんなのか?」


ザベルは牛丼をもぐもぐしながら喋る。


「生まれたばっかのやつは比較的な!でも強くなったやつはかなり個性的だぞ!」


「じゃあ、ザベルは生まれたばっかりなのか?」


そう聞くとザベルは少し照れくさそうな顔をする。

 

「いや、俺は生まれてから結構経ってるんだよ。ただ他のやつみたいに強くなりたいって思わなかったから、自分の住処でぐうたら過ごしてたんだ。

だけど女王様に『いい加減強くなってこい』って言われちゃってさ!ちょうどその頃に方針が変わったから、実験がてら強引にこの世界に飛ばされたってわけ!」


「へえ、そうだったのか」


女王様って悪魔を生み出した神様みたいなもんだよな?それからわざわざ言われるとか、どれだけぐうたらしてたんだこいつ。


「でも飛ばされてすぐに太陽に出会えたのは幸運だったよ。誰かの使い魔になるのが第一目標だったしな!」


「アハハ。サソリに食われる直前だったもんな」


そう考えたらほんとに幸運だな、飛ばされてすぐにサソリにやられて終わりなんて笑い話にもならないし。

 

「そういえば、強くなるには使い魔になるのが手っ取り早いとか言ってたな。なんでなんだ?」


「俺もよく分かんないけど…たしか、魂の欠片の吸収を共有できるからって言ってたかな。悪魔って生まれたばっかだと結構弱いし」


弱い…のか?あんだけ魔法連発できりゃ結構強そうだけど。まぁ単発の威力は低いか?


「ふーん、なるほどな。あ、そうだ。明日はザベルを強くするために魔石集めするか」


「お、いいな!」

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