ダンラヴ
3人で探索を始めて歩いていると、俺はふと思い出して横にいる2人に声をかけた。
「ごめん、2人の名前なんだっけ?」
するとエルフの女子が、軽く笑いながら答えた。
「えー、教えてなかったっけ?私がミラフィス、ミラって呼んで!」
ダークエルフの女子も笑顔で続けた。
「私はメリスバーナ。メリスでいいよ!」
「ミラにメリスか、改めてよろしくな」
するとメリスが「コメント表示」と言い、彼女のドローンからディスプレイが現れて、画面に視聴者のコメントが次々と表示され始めた。
『お、コメント表示した』『やあ』『2人とも可愛い』『みんな戦闘かっこよかったよ!』『黒木くんみってるー?』など、様々なメッセージが流れていく。
「みんなコメントありがとね〜」
「へぇ、こんな感じなんだ」
俺が感心していると、ミラが不思議そうに問いかけてきた。
「黒木はダンラヴ普段見ないの?」
「うん、見ないかな。存在は知ってたんだけど」
「へぇ~探索者になるのに珍しいね」
その後、俺が質問を返した。
「今日はどれくらい探索するつもりなんだ?」
ミラは少し考え込んだ後、笑顔で答えた。
「うーん、気分かな!適当!」
彼女らしい軽い口調に、俺は思わず笑ってしまった。こんな雰囲気の中でのダンジョン探索も悪くないなと思いながら歩いていると、前方に甲冑が動く音が聞こえてきた。
「リビングアーマーか」
鎧をまとったモンスターがゆっくりとこちらに向かってきた。その姿を見て俺は新しいスキルを試したくなり、2人に声をかけた
「ちょっと新しいスキル試してみてもいいかな?」
メリスが興味津々な顔で応じる。
「もちろん!やっちゃいな!」
俺はスキルを発動させ、地面に魔法陣が現れた。その魔法陣から、にゅるっと巨大な黒い触手が姿を現す。見た目は吸盤のないタコの触手みたいな感じだな。
触手は俺の意志に従い、鞭のようにしなりながら振り、勢いよくリビングアーマーに直撃した。
「おおっ…!」
直撃した衝撃で鎧の体は吹き飛び、壁に叩きつけられた。リビングアーマーはバラバラになり、光の粒子に包まれて消えていった。
「一撃…!ネタ枠じゃなかったのかこれ」
俺が呟くと、ミラが驚いた様子で言った。
「何そのスキル!初めて見たよ、すごいね!」
ドローンのディスプレイには、視聴者たちからのコメントが続々と流れてきた。
『吹っ飛んでて草』『結構威力あるな』『触手…えっちだ』と、少しおかしなコメントも混じっていた。
俺は苦笑しつつ、コメントを流し見ながらも、進むことにした。
「付き合ってくれてありがとね、それじゃ進もっか」
「はいはーい、楽しんでこー!」
「おー!」
俺がそう言うと、ミラとメリスが元気よく返事した。3人で奥へとさらに進む。
しばらく談笑しながら道中に出現した魔物を倒ながら進んでいくと、俺たちはさらに広いエリアにたどり着いた。そこには壁や天井、地面の至る所に蜘蛛の巣が張り巡らされていて、モンスターハウスにもいた前脚が刃物のようになってる蜘蛛がうじゃうじゃといた。
それを見てメリスが喋りだした。
「ブレイドスパイダーの巣だね。ミラ、ここは派手にやっちゃおうか!」
その言葉に応じて、ミラが楽しそうに返事をする。
「あいあいさー!」
ミラは両手を上に掲げ、ゆっくりと集中し始めた。彼女の手元に、炎が生み出され、どんどん大きくなっていく。少し遠くにいる俺にも熱気が伝わってくるほど、その炎は巨大になっていく。
「すごいな…」
ミラはその巨大な炎を両手で制御し、そのままブレイドスパイダーの巣に向けて放った。
「いっけー!」
放たれた炎は一直線に蜘蛛の巣へと向かい、直撃する。すると1箇所に集まっていた炎が爆発するように広がり、ブレイドスパイダーたちの巣全体を焼き尽くしていく。
「炎魔法もいいなぁ…」
俺がそう言うと、ミラは得意げに微笑んだ。
「でしょー?結構威力も強いし、こうやって使えば広範囲を一気に攻撃できるから便利なんだよね!」
しばらくの間、俺たちは燃え盛るブレイドスパイダーの巣を見つめていた。やがて炎が徐々に鎮火し、巣はほぼ燃え尽きて、跡形もなく消え去っていた。残ったのはわずかな燃えカスだけだ。
メリスが満足そうに頷きながら言った。
「完璧だね!」
「でしょー!」
だがその時、上から巨大なブレイドスパイダーが降りてきた。
「うわっ!メスのブレイドスパイダーだ!」
ミラが驚きながら叫んだ。メスのブレイドスパイダーはその巨体で素早い動きでこちらに突進してくる。
それを見てメリスは雷を放った。雷が直撃したブレイドスパイダーは動きを鈍らせる。俺は触手を使う。
地面に魔法陣が現れ、そこから巨大な黒い触手が姿を現す。触手はブレイドスパイダーの胴体に勢いよく振り下ろされた。触手が直撃すると、その衝撃でブレイドスパイダーの胴体が潰れ、その場に倒れ込んだ。
俺はほっと息をついたが、メリスはケタケタと笑い出した。
「ビックリしたー!でも黒木の触手、やっぱ強いね!頼りになるわ〜!」
「ま、何とか役に立ってよかったよ」
そう言いながら、俺たちは倒したブレイドスパイダーたちが落とした魔石を拾い集めた。辺りにはいくつかの魔石が散らばっていて、それぞれのリュックに手際よく収納していく。
「じゃあ、また探索を再開しようか」
「おー!!」
「行くどー!」
そう言って3人で歩き出した。
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