アドレナリンとジョブ特性
またしても剣とリュックを借りた俺は、再びダンジョンの3階層へと向かった。
ダンジョンに入り、セーフエリアの洞窟を抜けると殺風景な荒野が広がっている。
「火吹きのスキルレベルでも上げるかね」
俺は歩きながら、口から小さな炎を吹く。火吹きは魔力を消費しないようだが、発動には大きく息を吸い込んでから吐き出す必要があるため、少しばかり労力がかかる。小さな炎がちらちらと舞いながら周囲の空気を温めた。
「役に立つ日が来るといいけど、ハー…フゥーー」
ひたすら火を吹いて練習しながら道を進んでいく。途中で何体かのゴーレムに遭遇するが、攻撃される前に氷の玉を生み出して的確に撃ち込み、次々と倒していった。
ゴーレムたちは遅い動きで俺の攻撃を避けられず、すぐに岩の塊となって崩れ去る。
「氷魔法もだいぶ使い慣れてきたな〜」
そう考えていた矢先、突然足元が崩れた。何が起こったのか一瞬理解できず、俺はそのまま下へと落ちていった。
「うおおお!!」
急速に落下する中で、俺は何とか体勢を整え、地面に向かって着地の準備をした。やがてゴツンと地面に降り立つと、周囲を見回す余裕もなく、すぐに奇妙なざわめきが耳に届いた。
「いってぇ…なんだここ?」
辺りを見渡すと、目の前に無数の蟻の魔物が蠢いていた。サイズは大型犬ぐらいはありそうだ。
その光景に一瞬息を呑むが、すぐに彼らがこちらに気づき、一斉に襲いかかってきた。
「やばすぎ…!」
俺はすぐに氷のトゲを生成し、最初に迫ってきた蟻に向かって放つ。氷のトゲが蟻の体を貫き倒れていく。さらに剣を振り回し、襲いかかってくる蟻を片っ端から切り裂いていった。
蟻たちは個々の強さこそ大したことはないが、その数が圧倒的だった。次から次へと押し寄せてくる蟻の大群に、徐々に体力が削られていく。息が荒くなり、焦りが募る。
そんな時、ふと頭に浮かんだのは自分のジョブ特性だった。
「そうだ、笑えば全ステータスが上がるって…やるっきゃないか」
最初は無理やりぎこちなく笑おうとしてみた。だが、自分の間抜けな笑い声に自分でも思わず吹き出してしまった。そうなると、次第に楽しくなり、自然と大きな笑い声を上げるようになった。
「アハハハハハハ!!」
笑えば笑うほど体が軽くなり、動きが滑らかになっていくのがわかる。剣の振りがさらに鋭くなり、氷魔法の威力も増していく。放った氷のトゲは、数体の蟻を一度に貫通するほどの威力を持っていた。
そしてレベルアップの高揚感とアドレナリンも混じり、どんどんハイになっていく。
俺は笑いながら、迫りくる蟻たちを次々と倒していった。まるで踊るように軽やかに剣を振り、氷のトゲを飛ばしていく。
徐々に蟻の数は減っていき、やがて最後の一体が倒れると、辺りは静寂に包まれた。
「ハ…ハ……つ、疲れた」
俺は剣を鞘に納め、深呼吸をして体を落ち着けた。周囲には倒された蟻のドロップ品が散らばっており、その中には大量の魔石が落ちていた。
そしてその中に見つけたのは、光り輝く玉、スキルオーブが2つあった。
「ふ、2つ!?まじか!」
スキルオーブを2つ見つけた時、疲れは一瞬で吹き飛んだ。
まず、1つ目のオーブに触れると頭の中に情報が流れ込んできた。それはスケルトン召喚というスキルで、スケルトンを召喚して戦わせることができるスキルだった。
「どえらい使えそうなスキルきたぞおい、ご褒美か?」
俺はそのスキルに即座に魅了された。今回みたいなことがあってもかなり楽になるかもしれないな。
次に、2つ目のスキルオーブを手に取ると、再び情報が頭の中に流れ込んできた。それは浮遊というスキルで、地面から浮かび上がり自由に空中を移動することができるスキルだ。
「これは…ついに俺の時代がきてしまったか」
俺は思わず笑みがこぼれた。どちらのスキルも冒険に役立ちそうで実に素晴らしい。
俺は即座に1つ目のスキルオーブを握り割ると、粉々になった破片が光となり、俺の体内に吸収されていく。次の瞬間、スケルトン召喚の知識が完全に浸透し、使い方を理解する。
次に、「浮遊」のスキルオーブも同じように握りつぶす。再び光の粒子が体に吸収され、浮遊が使えるようになった。
「さっそく試そう」
俺はまず浮遊を使ってみることにした。少し魔力を集中させると、体がふわりと地面から離れた。
下を見ると足元が浮いているのがわかり、ゆっくりと前方へ動き出す。
「おおおお!楽しい!」
浮遊していると視界が広がり、周囲を見渡すのも容易だ。地形に縛られずに動けるため、次の戦いでも大きなアドバンテージを持てそうだと実感した。
次はスケルトン召喚だな。俺は魔力を使い、スケルトン召喚を試す。すると地面に魔法陣が現れ、そこからスケルトンが召喚された。鉄の剣を持ったスケルトンは、俺の命令を待っている。
「おお、これがスケルトンか!」
スケルトンはじっと俺を見つめている、どんな指示にも従ってくれそうな忠実な雰囲気がある。俺は軽く手を振って指示を出してみた。するとスケルトンは顎をカタカタ鳴らし、指定した方向に向かって歩き出した。
「これでさっきみたいな状況になってもかなり戦えるようになったな」
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