揉め事
商業エリアに足を運んだ俺は、さまざまな店が立ち並ぶ賑やかな通りを見渡していた。
色んな武器を物色するためにここに来たが、それどころでは無さそうだ。魔法のアクセサリーやらポーションやら気になるものだらけだ。
通りを進んでいると、遠くから何やら揉めている声が聞こえてきた。
人混みの中声の方に目をやると、そこにはクラスメイトのエルフの男子と、ガラの悪い別の生徒が言い争っていた。
「なにやってんだ…?」
興味を引かれ、俺はその場に近づいていった。
「そもそも貴様が列に割り込んだのが悪いんだろうが!」
「割り込んだなんて証拠どこにあんだよ?」
エルフの男子はクラスメイトの一人だが、名前はまだ知らない。揉め事の原因はどうやらエルフがガラの悪い悪い生徒に列に割り込まれたことらしい。
ガラの悪い生徒は、やたらとエルフのクラスメイトに対して煽り立てている。
「これだからエルフは嫌だね、傲慢で全部人のせいにしてきやがる」
「なんだと…!」
口調も荒々しく、エルフの男子を侮蔑するような言葉を投げかけていた。その様子を見た俺は放っておくわけにもいかないと思い、二人の間に入った。
「俺は見たよ。お前が列に割り込んだとこ」
「ああ?誰だテメェ」
「お、お前…」
「どうする?これで二対一だけど」
もちろん見たのは嘘だ、これで引いてくれれば良いが…
「なら証拠出してみろよ、見ただけじゃ何の証拠にもならねぇだろうが」
ちっ、何を強情になってるんだこいつは。仕方ない、プランBだ。
俺はエルフに話しかける。
「な?分かったろ、こういう馬鹿は話をするだけ無駄なんだ。ほら行くぞ」
「あ、ああ」
「ああいう育ちが悪くて頭も悪い、常識も分からないような猿とは関わるだけ損だよ」
「んだとテメェ!!」
俺がそう言うと、煽られたガラの悪い生徒は激昂し、拳を振り上げた。そして、その拳が俺の顔に向かって飛んでくる。
俺はそれを自分から近付き、思いっきり殴られる。
「うわぁぁぁっ!!」
俺は大袈裟に吹っ飛んで、周囲の商品棚に突っ込んだ。商品が崩れ落ち、周囲に注目が集まる。
俺は顔を手で覆い、その場で痛がりながら大声で助けを呼ぶ。
「誰か助けてくれぇぇぇ!!」
商業エリアは一瞬で騒然となり、すぐに学園の職員が駆けつけてきた。職員は俺の様子を見て驚き、暴力を振るったガラの悪い生徒をその場で取り押さえた。彼は激しく抵抗したが、すぐに力でねじ伏せられた。
俺は心の中でほくそ笑みながら、その様子を眺めた。そして職員たちは俺を保健室へと運んでいった。
くそ、あいつ本気で殴りやがって。いてぇ、鼻血も出てきやがった。
---
保健室に着くと、俺はベッドに寝かされ、すぐに治療魔法を受けることになった。
担当してくれたのは、落ち着いた雰囲気を持つ綺麗な女性の先生だった。彼女は優しい手つきで魔力を込め、俺の顔を癒してくれた。
「『ヒール』…うん、これで大丈夫ね。もう痛みはないはず」
女性の先生は微笑みながら言った。彼女の治療魔法のおかげで、痛みはすっかり消え去った。実際には大した怪我ではなかったが、念入りに治療してもらえたことに感謝した。
「ありがとうございます、先生。すっかり治りました」
俺は感謝の言葉を伝え、保健室を後にした。扉を開けると、そこにはクラスメイトのエルフ――ケイルが待っていた。
「黒木…だったか、大丈夫か?」
心配そうな表情を浮かべているケイルに、俺は軽く笑って応えた。
「全然大丈夫だよ。綺麗な先生に治してもらったし」
俺が軽く笑い飛ばすと、ケイルはほっとしたように息をついた。そして申し訳なさそうに頭をかいて言った。
「俺が無駄に揉め事を引き起こしてしまったせいで、迷惑をかけた。今度何かお詫びをさせてくれ」
俺はその言葉を聞いて肩をすくめた。
「いや、別にいいって。あいつが全部悪いんだし、気にするなよ」
ケイルは何度も頭を下げて感謝を示してくれたが、俺は軽く手を振ってその場を終わらせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます