スケルトン

俺は蟻の巣から抜け出すために浮遊を使い、体を軽く浮かび上がらせた。足元が地面から離れ、視界がぐっと広がる。

この浮遊は魔力を消費しないようでかなり便利だ。


「よし、行くか」


そのまま慎重に浮遊を続け、蟻の巣から上昇していく。無事地上に戻ると、荒野の風が体を包み、冷ややかな空気が心地よい。 

まるで風に乗るように軽やかに、地面を滑るように移動できるこの感覚はなかなかに素晴らしい。

無理矢理欠点をあげるとすれば移動速度か、歩くのと同じぐらいの速さなので急ぐときは普通に走らないといけない。

まぁ足が疲れないってだけでもメリットとしてデカすぎるが。


ここなんかは特にそうだが地面の凹凸や障害物を気にすることなく進めるので、サクサクと目的地へ進める。

ダンジョンマップを見ながら進むと、視界の先に巨大なサソリのような魔物が現れた。体長は5メートルほどもあり、その鋭い尻尾が不気味に動いている。


「こいつが階層ボスか」


俺は地面に降りる。サソリは俺に気づくと尻尾を高く上げ、そこから何かを噴出してきた。

横に飛び退って避けると、地面に落ちたそれは紫色のネバネバした液体だった。


「まぁ毒だよな」


サソリが次の攻撃の準備を始める前に、俺はスケルトンを召喚する。地面に魔法陣が現れ、そこから光が放たれる。すると魔法陣の中心からスケルトンが姿を現し、顎をカタカタと鳴らしながら立ち上がった。


「サソリを殺せ!」


俺の命令に従い、スケルトンはすぐに動き出し、迷いなくサソリに向かって走り出した。

俺はスケルトンを援護するために、氷のトゲを生み出し、それをサソリに向けて放った。鋭いトゲがサソリに浅く突き刺さり、注意を引くことに成功する。

その間にスケルトンがサソリに接近し、剣を振り下ろした。


スケルトンの剣がサソリに確実なダメージを与えていく。サソリもハサミの部分を振り当て反撃するが、スケルトンは、怯むことなく攻撃を続ける。


「そうか、スケルトンには痛覚が無いから恐怖心も無いのか」


俺はさらに氷のトゲを放ち、サソリの動きを鈍らせていく。サソリは次第に疲れを見せ始め、その動きが遅くなってきた。スケルトンは猛攻を続け、着実にダメージを与え続ける。


そしてスケルトンが傷口に深く剣を突き刺し、傷口を広げるようにして切り裂いた。するとサソリは力尽きたようにその場に倒れ込み、動かなくなった。そしてサソリの体が光の粒子に包まれると、地面に魔石をドロップした。


「帰還しろ」


そう言うと魔法陣が現れ、スケルトンが帰っていった。俺は魔石を拾い上げ、リュックにしまう。


「さてと、次の階層へ進むか」


サソリを倒したことで出現した階段を下りる。やがてまた洞窟のようなセーフエリアに出た。俺はその場に浮遊し、深呼吸をして疲れた体をリラックスさせた。


「ふう…一息つけるな」


さすがにここまでの戦闘で疲れがたまっていた。セーフエリアで少し休息を取りながら、次の階層に向けて気持ちを整えた。

リュックからおにぎりと唐揚げを取り出し食べ、水筒から水を飲む。


飯を食べて一息ついた俺は、次の階層へと進むために立ち上がった。セーフエリアを出て洞窟を抜けると、目の前には草原があった。


「荒野よりは全然いいな」


俺は軽く伸びをし、浮遊を使う。体がふわりと浮かび上がり、地面から1mほどの高さを保ちながら滑るように前進する。


「草原は風が気持ちよくていいな」


しばらく進むと、遠くに何かが動いているのが見えた。それはボブゴブリンたちの集落だった。ボブゴブリンたちが20匹以上あちこちで集まっているのが見える。


「こいつらいちいち数が多いな」


俺は見つからないように浮遊を解除し、地面に降り。スケルトン召喚を使うことにした。今回は敵の数が多いから2体呼ぶ。

魔法陣から光が放たれ、そこから2体のスケルトンが姿を現した。

カタカタと顎を鳴らし、剣を持ったスケルトンたちは、俺の命令を待つように立ち尽くしている。


だが、スケルトンを2体同時に召喚したことで、俺は一気に疲労を感じた。

どうやらこのスキルはかなり魔力を消費するみたいだ。召喚した瞬間、体の中から魔力が一気に吸い取られたような感覚が広がり、意識が少しぼんやりとする。


「なるほど…まぁそりゃそうか。強いもんな」


無理は禁物だと判断し、魔力を回復させるためにその場で一度休憩を取ることにした。

やがて、疲労が消え、十分な魔力が回復したことを確認すると、俺は再びスケルトンたちに目を向けた。彼らは相変わらずカタカタと顎を鳴らし、静かに俺の指示を待っている。


「よし、暴れてこい!」


俺の号令とともに、スケルトンたちは一斉に動き出した。ボブゴブリンの集落へと駆け込み、鉄の剣を振りかざして襲いかかる。

ボブゴブリンたちは突然の襲撃に驚き、混乱している様子だが、スケルトンは容赦なく剣を振り下ろし斬り伏せていく。

やっぱ防具がないボブゴブリンたちには剣が通りやすいな。

 

「こっちもやるか」


俺は浮遊を使い、スケルトンたちを援護するために氷のトゲを生み出す。それを上空から次々とボブゴブリンに向かって放ち、彼らの数を減らしていく。上空から氷のトゲ、地上からスケルトン2体の猛攻によってボブゴブリンたちは追い詰められていく。


スケルトンたちも棍棒による反撃を受け少し怯むも、すぐに体勢を立て直し、切り裂き続ける。俺も次々と氷のトゲを放ち、援護の手を緩めることはなかった。やがてボブゴブリンたちは次々と死に、最後の一匹が地面に崩れ落ちた。

集落にはボブゴブリンがドロップした魔石が散らばっている。俺は一息つき、周囲を見回して戦闘が終わったことを確認する。


「おつかれさま、帰還」


俺が命じると、スケルトンたちは再び魔法陣に吸い込まれる。


「さて、戦利品を回収するか」


俺はリュックを背負い直し、ボブゴブリンたちが残した魔石を一つずつ拾い上げていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る