大剣ゴブリン
ボブゴブリンの集落を壊滅させた後、俺は周囲に散らばった魔石を拾い集め、また先に進む。
草原を進んでいくと、道中でいくつものボブゴブリンの集落を目にする。戦闘を避けるために回り道を選び、集落にいるボブゴブリンたちに気づかれないようにしながら前進を続けた。
目的地に近づくと、またしてもボブゴブリンの集落が目の前に広がっていた。だがこの集落は他のものとは少し違い、ボブゴブリンたちは革の装備を身に着けていた。そして奥にはローブを身にまとったゴブリンたちが控えている。
「魔法使いか」
俺はその場に身を潜め、慎重にスケルトンを召喚する準備を整えた。地面に魔法陣を展開すると、そこから2体のスケルトンが現れた。いつものようにカタカタと顎を鳴らしながら彼らは俺の命令を待っている。
しかしスケルトンを2体召喚したことで、再び魔力が大きく削られた。俺はすぐに魔力を回復させるために休息を取った。
少し休んで魔力が回復したところで、再び2体のスケルトンを召喚すると、先に召喚した1体が勝手に帰還してしまった。
「制限があるのか、そりゃそうか」
制限なく召喚できたら強すぎるもんな。
十分に魔力が回復するのを待ち、攻撃を開始する。
まずは後ろに控えるローブを着たゴブリンたちを片付けることを優先する。彼らが魔法を使う可能性があるため、先に処分することにした。
俺は氷のトゲを生み出し、魔法ゴブリン(仮)に放った。
氷のトゲは魔法ゴブリンに直撃して地面に倒れ込み、動かなくなった。だがもう1匹の魔法ゴブリンがこちらの攻撃に気づき、すぐに反応を示してきた。
魔法ゴブリンは両手を掲げ、炎の玉を生み出すと、それをこちらに向かって放ってきた。
俺はすぐに氷の玉を生み出し、炎の玉に向けて放った。氷と炎がぶつかり合い、激しい音と共に相殺された。
その音と共に他のボブゴブリンたちも俺達に気が付き、こちらに向かい走ってくる。
「迎え撃て」
そう命令するとスケルトンたちはカタカタと顎を鳴らし、剣を構えた。
俺は再び氷のトゲを生み出し、魔法ゴブリン(確定)に向けて狙いを定め放つ。トゲが勢いよく飛び、ゴブリンに命中すると、ゴブリンは苦しそうにうめきながら倒れ込んだ。これで魔法を使えるゴブリンたちは一掃できた。
スケルトンたちはボブゴブリンたちへ剣を振り回し、次々と攻撃を仕掛けていく。しかし革の装備をしているだけあって、ボブゴブリンたちはなかなかにしぶとい。スケルトンたちも苦戦している様子だった。
「氷のトゲは通りにくそうだな」
俺は氷の玉を生み出し、それをボブゴブリンたちに向けて放った。氷の玉はボブゴブリンの体にぶつかると彼らの動きを鈍らせた。スケルトンたちもその隙を突いてさらに攻撃を仕掛け、俺も氷の玉を放ち、徐々にボブゴブリンたちを追い詰めていく。
スケルトンたちと俺の連携攻撃で、次第にボブゴブリンたちが力尽き、最後の一匹が倒れると集落全体が静まり返った。
「なんだかんだいつも通りだったな」
そう言い一息つくと、集落の奥にある一番大きなテントから、さらに大きな影が現れた。
「まだいるのか?」
そのゴブリンは通常のボブゴブリンよりも明らかに体格が良く、全身に革の装備をまとったゴブリンだった。手には鉄の大剣を握り、その圧倒的な存在感は一目で他のゴブリンとは格が違うことを感じさせた。
本能的に危機感を覚えた俺は、無理矢理口角を引き上げて笑顔を作り、声を上げて笑い、全ステータスを向上させる。笑いが次第に自然なものに変わり、体が軽くなる感覚が広がった。
「アハハハハハ!!よし!!」
俺はすぐにスケルトンたちに命令を下した。
「避けることを専念して戦え!」
俺は浮遊のスキルを発動し、体を宙に浮かび上がらせた。
次の瞬間、大剣ゴブリンが雄叫びを上げ、猛然と突進してきた。
「グオオオオオオオオオ!!」
俺は上空から氷の玉を生み出して放った。だが、大剣ゴブリンはその攻撃を鉄の大剣で受け止め、勢いを緩めることなくこちらに突っ込んでくる。
スケルトンたちは大剣ゴブリンに向かって剣を振りかざすが、大剣ゴブリンはそれを意にも介さず鉄の大剣を横薙ぎに振るった。スケルトンの一体が避けきれずに直撃し、バラバラになり消えてしまう。
俺はすぐに新しいスケルトンを召喚し、再び氷の玉で援護する。スケルトンたちは再度大剣ゴブリンに立ち向かうが、その圧倒的な攻撃力に圧されている。
俺もスケルトンを氷の玉で援護しつつ、有効打を与えるにはどうすべきか考えていると、大剣ゴブリンが突然俺に狙いを定め、驚異的な跳躍力を発揮し、俺のいる空中にまで飛び上がってきた。
「嘘だろ!?」
ここまで飛び上がってきた大剣ゴブリンは、俺に鉄の大剣を振り落とす。反射的に自分の剣を構え、なんとかその一撃を受け止めたものの、勢いを殺しきれずそのまま地面へと勢いよく落下してしまった。
「ぐぉっ…!」
地面に叩きつけられた衝撃が全身に走り、痛みが襲い、口から血を流す。だが、降りてきた大剣ゴブリンは痛がる暇すら与えず、追撃のために大剣を再び振りかざしてきた。
俺はとっさに転がり、どうにかその一撃を避け、土埃が舞い上がり視界が一瞬曇る。
その時、スケルトンたちは俺を守るために大剣ゴブリンに追いつき、剣を振り切り傷を作った。そしてスケルトンたちが大剣ゴブリンの注意を引いている間に俺はどうにか立ち上がり、スケルトンたちと共に再度戦闘に加わった。
「アハハハハハ!!」
笑い声を上げてステータスを向上させ、剣を振るい大剣ゴブリンに攻撃を仕掛ける。攻撃を加え続けることで、大剣ゴブリンの注意をスケルトンと俺の間で散らしていく。
スケルトンの1体がやられると同時に、俺は氷の玉を生み出し放った。それは大剣ゴブリンの頭部に直撃し、鈍い音を立ててゴブリンはよろめき、その巨体がぐらついた。
「殺せ!!」
俺はスケルトンたちと共に、全力で追撃を仕掛けた。剣を振り下ろし、スケルトンたちも同じく大剣ゴブリンに猛攻を加える。
「グオオオオオ!!」
大剣ゴブリンは雄叫びを上げ、剣を振り回す。スケルトン2体に剣が直撃しながらも、大剣ゴブリンの腹と足に剣を突き刺すことに成功し、そのままバラバラになり消える。
剣を刺され怯んでいる隙を見逃さず、俺は大剣ゴブリンの首に剣を突き刺した。そして、大剣ゴブリンはうめき声を上げながら倒れていった。
「グオオォォ…」
大剣ゴブリンが光の粒子に包まれ、消えていくのを確認すると、俺はその場に尻もちをついてしまった。
「し、死ぬかと思った…」
全身が疲労で重くなり、息を整えながら安堵のため息を漏らす。辛うじて勝利を収めたことに、ほっと胸を撫で下ろした。すると俺の体に高揚感が広がった。レベルアップしたようだ。
そして光の粒子が完全に消えると、そこには鍔が無く、刃が黒い剣が落ちていた。持ってみると手に馴染む感覚があった。
「死ぬ気で戦った報酬がこれだって考えたら少し微妙だな…」
そう言いながらも初めての武器のドロップに喜んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます