リュック獲得

日曜日の朝、俺はアリアからもらった派手なスーツを身にまとい迷宮学園のダンジョンへ向かった。

真っ白なスーツに赤いシャツ、そして背中には大きなピンクのハートが描かれているデザインだ。

これはさすがに目立ち、学園内を歩くたびに周囲の視線を感じるが俺は気にしないようにして進む。


「あれだ、仮面を買おう」


俺はそう心に決めた。そうすればこの羞恥心はいくらかマシになる……はずだ。

道具貸出所に着くと、いつものようにリュックを借りた。

そしてダンジョン入口にある魔法陣に乗り込み、6階層のセーフエリアへと転移する。


今日はポイント稼ぎをすることにした、あの6万のリュックを買うためだ。そろそろ自分のリュックが欲しくなってきた、普通に外で使うだけでも楽だしな。

俺はまず荒野に広がる岩場を目指して歩き出した。そこには鉱石がむき出しになっている岩があちこちに転がっている。


「これ触手で壊せないかな」


俺は触手を使い召喚すると、その黒い触手を大きくしならせて、近くの鉱石が露出している岩に向かって叩きつけた。鈍い音とともに岩が砕け散り、中から鉱石が顔を出す。


「こりゃ楽だな」


その辺に散らばった鉱石を拾い、リュックに詰め込んでいく。俺はとりあえずこの辺りにある鉱石を全て取ることにした。

そして辺りの鉱石がほぼ取り尽くされると、今度は奥にいるサソリの魔物たちに目を向けた。

サソリに向けて氷のトゲを放つと、硬い外殻を貫通し倒れる。するとそれを見た他のサソリも襲いかかってくるが黒剣で斬り裂いていく。


サソリを倒すたびに落とす魔石も、しっかり1つ1つ拾い上げてリュックに詰め込んでいく。

そしてリュックがいっぱいになったら一度セーフエリアへ戻り、ダンジョンの入口へ転移して買取所に向かう。


こうして、鉱石と魔石をポイントに変換する作業を淡々と繰り返していった。

かなり飽きる単調な作業だが、何度も気合を入れ直し、鉱石の採掘とサソリの討伐を続けた。

そして最終的には83500ポイントに達していた。


「だいぶ溜まったな、疲れた」


単調な作業は飽きるし、やたら疲れる。まぁ今回だけだ。

これまで目をつけていた魔法のリュックを買うために、リュックを売っている店へと向かった。

すると前に見た6万ポイントのリュックとは別に、もうちょっと容量の大きい8万ポイントのリュックがあった。


「こっち買えるのか、容量なんて大きければ大きいほど良いしな」


俺は店員に探索者カードを渡してポイントを支払い、念願のリュックを手に入れた。

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