モンスターハウス

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転移した場所はまさに地獄絵図だった。周囲を取り囲むのは、ボブゴブリン、前脚が刃物のようになっている蜘蛛、リビングアーマー、そして豚の顔を持つオークたちが、牙を剥き出しにしてこちらを睨んでいた。


「なんかこんなんばっかだな」


幸いにもスケルトン2体が一緒に転移してきていた。俺はもう1体のスケルトンを召喚し、命令する。


「鎧のやつは無視して暴れまわれ!」


俺の命令を受けたスケルトンたちは、カタカタと顎を鳴らしながら動き出し、周囲の魔物に向かって突撃していった。剣を振り回し、次々とゴブリンや蜘蛛、オークたちに攻撃を仕掛ける。


「アッハハハハ!!」

 

俺はいつものように、口角を引き上げて笑い声を上げた。道化師のジョブ特性でステータスが上昇し、体が軽くなるのを感じた。最近笑うのに慣れてきている自分が少し怖い。

すると、背後から何かが風を切って飛んできた。振り返ると、鋭い前脚を持つ蜘蛛が俊敏な動きでこちらに飛びかかってきていた。


「おおっ!」


間一髪で黒剣を盾にしてその攻撃を受け止めたが、衝撃で腕が痺れた。飛び込んできた蜘蛛の力は予想以上に強く、前脚で押し込まれる形となった。俺は力強く押し返し、地面に着地した蜘蛛の胴体に黒剣を振り下ろして斬り裂く。

蜘蛛は気色の悪い断末魔を上げ、地面に崩れ落ちた。するとボブゴブリンが棍棒を振り下ろしてきたので横に飛び避け、すぐに首を切り落とした。

隙を見ては、手頃なリビングアーマーに氷の玉を生み出して放ち、バラバラにしておく。再生する時間ぐらいは余裕ができるはずだ。 

オークが大きな棍棒を横に振り攻撃してきたので、しゃがんで避け、頭を叩き斬る。

再生したリビングアーマーに再度氷の玉をぶつけ倒す。飛びかかってきた前脚刃の蜘蛛の攻撃をよけ、斬り裂く。襲いかかってきたボブゴブリンの攻撃を避け、斬り裂く………

 

「アッハハハハ!!数多すぎんだろ!!」


笑いながらステータスを上昇させて、氷の玉を生み出し放つ。氷の玉は複数の魔物を巻き込んだ。 

周囲を見渡すとスケルトンたちも懸命に戦っていた。リビングアーマー以外の魔物たちには剣が良く通り、次々と倒していく。だがオークは若干手強く、スケルトンたちも少し苦戦している様子だった。

すると1体のスケルトンがオークの棍棒によって倒されたので、またもう1体呼び出して攻撃させる。

俺も負けじと魔物たちを倒していった。




「ハァハァ…」


戦闘が終わり、周囲を見渡した。魔物たちをすべて倒し、静寂に満ちている。


「終わったか」


そう呟いた瞬間、この空間の中央に魔法陣が現れた。何が出てくるのかと警戒しながら見ていると、豪華な宝箱が現れた。


「…さすがにトラップはないだろ」


俺は宝箱のほうへ歩き、宝箱を開けた。そこにはスキルオーブがあった。


「ここまで頑張ってスキルオーブなのか、いやまぁレアなんだけど」


黒木太陽はそのスキルオーブを手に持つと、頭の中に情報が流れ込んできた。


「黒い触手を生み出し、攻撃する…なんだそりゃ?」


予想外のスキルに驚きつつも、どこか興味をそそられる。


「…面白そうだな」


俺は迷うことなくスキルオーブを握りしめ、力を込めて割った。オーブは割れると同時に光となって体に吸い込まれる。

その瞬間、スキルの使い方を理解した。

スキルを手に入れたことで満足し、魔物たちが落としたドロップ品を拾っていく。

全て拾い終わると壁の一部が音を立てて動き出し、階段が出現した。


「階段?」


階段を下りた先はセーフエリアだった。どうやら6階層に到達したようだ。


「もう6階層かよ。まだ全然5階層探索してないんだけど」


一旦戻るとするか、触手試してみたいし、もうちょい5階層を探索してみたい。

セーフエリアの中央にある魔法陣を使って、再び5階層へと転移することに決めた。

5階層に戻ると、転移してすぐに例の教師2人が目に入った。彼らは俺を見るなり驚いた表情を浮かべた。


「もう6階層に行ったのかい?」


驚かれたことに少し苦笑しながら、俺は事情を説明する。


「いや、転移トラップ踏んだら魔物がたくさんいるとこに転移してしまって、そんで全部倒したら、6階層への階段が出てきたんすよ」


その説明に、教師の一人は大笑いした。


「ハッハッハ、モンスターハウスか。運がいいんだか悪いんだか分からないねぇ。でも、よく無事だったもんだ」


「ま、何とかなりました」


俺は苦笑しながら答え、再び5階層の探索を始めることにした。

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