道化師のたのしいダンジョン攻略!
塩ハラミ
入学式
ピピピッピピピッピピピッ
「んんん………朝か」
小鳥のさえずりで目覚める……なんてことはなく、いつも通り無機質な目覚まし時計の音で目が覚めた。
「今日入学式か」
俺はベッドから降り、まだ寝ぼけている頭をスッキリさせる為に洗面所へと向かう。
「ふう……」
冷たい水で顔を洗い眠気をスッキリさせ、鏡を見るといつも通りの地味で平凡な顔があった。
何となく自分の顔を見ていると気が滅入るので、ささっと顔を拭いて、朝食を食べるためにリビングへ行く。
まぁ朝食と言ってもどんぶりにご飯をよそって納豆と目玉焼きをぶち込むだけの簡単なものだ。
俺は納豆目玉焼き丼をささっと完食して洗い物を終わらせ、制服に着替えて迷宮学園へ向かうことにした。
「もうだいぶ暖かくなってきたなぁ」
春のちょうどよく心地良い暖かさにほんわかしながら迷宮学園へ向かう、家から徒歩15分ほどなのでそこそこ近い。
トボトボとしばらく歩いていると、迷宮学園のバカでかい校舎が見えてきた。
迷宮学園は優秀な探索者を育てるための施設で、敷地内にE級ダンジョンを所有している、そして戦闘訓練も行うためかなり広いらしい。
歩いていると同じ制服の人もちょこちょこと見かけるようになってきた、エルフやら獣人やらの異種族の人も多い。
正門前まで行くと、より校舎の巨大さが際立つ。
「すんごいなぁ…」
一瞬圧倒されそうになったが、気を取り直して正門をくぐると、教師らしき人たちが案内をしていた。
「新入生の方はジョブの鑑定がありますので案内通りに進んでください〜」
ジョブ鑑定か、わりと何でも良いが、まぁ近接系が丸いか?
案内通りに進むと体育館のような建物があり、そこに入ると新入生が大勢何列か作って並んでいて、俺もそこの1つに加わった。
順番になるとそこには水晶が付けられた機械があった。
「お名前は?」
「黒木太陽です」
眼鏡をかけた男性は名前を聞くと機械を操作した。
「それでは水晶に手を乗せてください」
「はーい」
言われた通りに手を水晶の上に乗せる。
すると水晶が光り機械が作動した、そして機械から紙が出てきた。
「ジョブは『道化師』…これは珍しい。特殊ジョブですね」
「…道化師?」
俺は思わず聞き返した。道化師って…あのピエロみたいなやつか?それに特殊ジョブってのは唯一無二のジョブで、確か勇者だとか聖女とかが有名だったと思うが、道化師?
「君は…うーん……まぁAクラスかな、特殊ジョブですし。では次の方ー」
そう言うと紙に『Aクラス』と付け足し俺に手渡す。
俺は紙を握りしめながら、なんだか釈然としない気持ちでその場を後にした。特殊ジョブってのはすごいことなんだろうけど、道化師…俺が思い描いていた戦士や魔法使いみたいな格好良さはない気がする。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか入学式の会場に着いていた。広い講堂には、俺と同じように新入生が集まっている。
講堂の中央には大きなステージが設置されており、少し待っていると白髪の年配の男性がステージへ上がってきた。
「諸君、ようこそ迷宮学園へ。私はここの責任者である夜咲剣(やざき つるぎ)だ。
迷宮学園は探索者としての技術と知識を授け、君たちが将来、一流の探索者として活躍できるよう導いていく」
校長の言葉は静かだが、力強く響く。
「まずは自分のジョブへの理解を深め、ダンジョン内での立ち回りを理解したまえ。
そして君達の第一目標はこの学園にあるE級ダンジョンの攻略だと覚えておけ、それを達成して初めて半人前になれる」
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