クラス分け
入学式が終わると、俺たちは教室への案内を受けた。
教室に着くと、ドアを開けて中に入った。教室の中にはすでに数人の生徒が座っている。
俺はドアのそばに立ち、軽く観察する。
エルフの男が2人、エルフの女が1人、ダークエルフの女が1人、狐の獣人の男が1人、狼の獣人の男が1人、猫の獣人の女が1人、竜人の女が1人、鬼人の男が1人、天使の性別不明が1人。
ふと気づいた。俺以外、全員異種族じゃん。
エルフ、獣人、竜人…それに天使までいる。なんて多種多様なクラスなんだろうか。
軽く溜息をつきながら、空いている席を探し、そっと座る。
教室内は、想像していたよりも静かだ。誰も話していない。初対面の生徒たちが互いに様子を探っているのか、それとも単に無口なのか。
そんな静寂の中で、俺は少し気まずさを感じつつ、スマホを取り出した。
何も考えずスマホで時間を潰しているとドアが開いた。
教室に入ってきたのは、背筋がピンと伸びた人間の女性だった。彼女は俺たちを見渡しながら前に立つと、落ち着いた声で話し始めた。
「皆さん、ようこそAクラスへ。私はこのクラスの担当教師、神崎サユリです。これから1年間、私が皆さんを指導することになります」
神崎サユリはそう名乗り、手元の資料をパラパラとめくる。黒い髪に鋭い眼差し。
いかにもできる教師って感じだ、そして美しい。
「さて、まず最初に授業について説明します。迷宮学園では1日に1回だけ授業があります。
それ以外の時間は各自、好きに過ごしてもらって構いません。校内には様々な施設があり、戦闘や魔法の訓練をする場所も揃っています。こちらがその地図です」
神崎サユリがそう言うと、皆に地図を渡していった。
そこには、迷路のように入り組んだ校舎の構造が描かれている。グラウンドや魔法訓練場、鍛錬室など、各施設が細かく記されていた。
「基本的にグラウンドでは戦闘や魔法の訓練が行われています。各場所にその訓練内容に適した教官がいます。
広大な場所ですので、武器やスキルの実践練習に最適です。
そしてもちろん、グラウンドの反対側にはダンジョンがあります。
ダンジョンの入口付近には武器や道具の貸出も行っているので活用してください」
俺は地図を見ながら考えた。この広い施設で好きな時に自由に訓練ができる。確かにこれは一見して理想的な環境だ。けど、逆に言えば自分の力を高める責任は完全に自分次第ということになる。
「そしてダンジョンポイント、通称Dポイントですね。
私が今から配る探索者カードを持っている状態でダンジョンに潜り、魔物を倒す、ドロップ品を売る、資源を獲得する、階層を突破することでポイントを獲得する事ができます。
このDポイントを使うことで様々な取引を行うことができますので、ダンジョンには積極的に潜ってください。
食堂とかでも活用できますよ」
そう言い探索者カードが全員に配られる。
「さて、何か質問がある方はいらっしゃいますか?」
その時、静かだった教室の空気がわずかに動いた。エルフの男の一人が手を挙げ、冷静な声で質問を投げかけた。
「クラス分けの意味は何なんですか?」
神崎サユリはその質問に対し、落ち着いて答えた。
「クラス分けの基準は単純です。優秀か、それほどではないか、という違いです。
Aクラスにいる皆さんは、入学時点で優秀と見なされた生徒たちです。もちろん、これからの努力次第でその評価は変わることもありますが」
優秀かそうでないか…俺もAクラスにいるってことは、ひとまずその「優秀」とやらに分類されたということだろうか。
その時、さっき質問をしたエルフの男が突然俺の方を見てきた。
「そこの人間は、それほど優秀なのですか?」
その声に、教室内の視線が一斉に俺に集まる。突然矛先向けるのやめてもろて。
俺は返答する間もなく、神崎サユリが代わりに答えてくれた。
「ああ、彼は特殊ジョブを持っています。潜在能力で言えば、ここにいる誰よりも高いかもしれませんよ」
クラス中の注目がさらに強まるのを感じた。なんか焚き付けてねーか?勘弁してくれよ。
「もう質問はありませんか?それでは説明を終わりとします。
この後は学園の探索なり、好きにしてもらってかまいません。では、解散」
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追記
エルフの女2人からエルフの女1人とダークエルフの女1人に変更しました。
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