1階層
神崎先生の説明が終わると、俺は教室を出て中庭へと向かった。
中庭は緑が生い茂った木々に囲まれた空間が広がっていた。少し歩くと、ちょうどいい位置にベンチがあったので腰を下ろす。
俺は改めて自分のジョブ鑑定結果をじっくり見てみることした、用紙には簡潔に情報が並んでいる。
---
ジョブ
『道化師』Lv.1
『成長補正』
- 生命+
- 俊敏++
- 魔力=
- 筋力=
- 頑丈=
『ジョブ特性』
- 軽量武器に補正
- 派手でカラフルな服装だと全ステータス上昇
- 声を出して笑うと全ステータス上昇
『ジョブスキル』
なし
---
「…マジかよ」
俺は頭を抱えた。軽量武器に補正がかかるのはまあいいとして、派手な服装と笑うことでステータスが上昇するって…一癖ありそうなジョブだな。
戦士や魔法使いのように単純な火力で押し通すわけでもないし、かといって神官や狩人などの後方支援のような役割でもなさそうだ。
まぁ盗賊とかと似たような戦い方になるのかな。
「まぁでも、特殊ジョブだって言ってたしな…」
一度は頭を抱えたものの、特殊ジョブという響きに気持ちを持ち直す。特殊ジョブが希少で強力なものだというのは確かだし、下手に気を落とす必要はない…のかもしれない。
「とりあえずダンジョンでも覗いてみっか、前から入ってみたかったんだよな」
俺は立ち上がり、ベンチを後にしてダンジョンの方へ向かった。
ダンジョンのエリアに近づくと、周囲は驚くほどの活気に満ちていた。
他の生徒たちが集まっていて、探索の準備に余念がない様子だ。
物販のエリアではポーションや簡単な食料を生徒が売っていて、ダンジョンに挑む前に装備を整える生徒の姿もちらほら見える。
俺はスマホを取り出し、「ダンジョンマップ」というアプリを開いた。このアプリを使えば、全国にあるダンジョンのマップが確認できる。
俺は迷宮学園のダンジョンを登録し、マップの機能をオンにした。画面にはダンジョンの1階層が地図として表示された。これで迷うことはなさそうだ。
俺は武器を借りるためにダンジョンの入口付近の道具貸出のテントに向かった。
軽量武器…ナイフとかか?でも普通のナイフだとリーチが短そうだし、マチェットあたりがちょうど良いか。
俺はダンジョンの入口付近にある道具貸出のテントに受付の人に声をかけ、探索者カードを提出してマチェットを2本借りる。それと魔法のリュックも勧められ借りた。
マチェットは短いもののずっしりと重量を感じられた。リュックは軽いが軽自動車1台分の容量があるらしい。
マチェットを腰に装着し、リュックを背負う。
「そんじゃ、行ってみっかな」
俺は入口に立つと、そこには大きな魔法陣が描かれているのが見えた。この魔法陣を通じてダンジョン内に転送される。
俺は一歩踏み出し、魔法陣の上に立った。
すると目の前に半透明のウィンドウが現れ、「1階層」と表示されている。
俺はそれを軽くタップした。次の瞬間、体がふわりと浮くような感覚に包まれ、視界が一瞬ぼやけた。
気づくと、俺はダンジョンの内部に立っていた。
周囲を見回すと、岩壁に囲まれた広間のような場所で、床には青白い光が淡く輝いている。
ここはモンスターの侵入を防げて、探索者たちが休息を取るための安全地帯になっている。所謂セーフエリアというやつだ。
俺は周囲を確認しつつ、スマホのダンジョンマップを再度確認する。地図には今俺がいるセーフエリアが表示されている。
「ちょっと見て回ってみるか」
セーフエリアを抜け出し、俺は洞窟を進んでいた。
足元は固い岩で覆われていて、時折小さな石が転がる音が響く。そして徐々に出口の光が見えてきた。
洞窟を抜けた先に広がっていたのは、爽やかな草原だった。
優しい風が吹き抜け、草がゆらゆらと揺れている。
一瞬、ここがダンジョンであることを忘れてしまいそうなほど、気持ちよくのどかな場所だ。
しばらく歩いたところで、何かが茂みから現れた。小柄な体に緑色の肌、そして醜悪な顔つき。棍棒を握りしめ、低く唸り声を上げながらこちらに向かってくる。
「ゴブリンか…」
比較的弱いモンスターの一つだが油断はできない。俺は腰のマチェットに手を伸ばし、抜き取った。
握った瞬間、なんとなくではあるが武器の扱い方が手に馴染むような感覚があった。軽量武器補正の効果だろうか。
するとゴブリンが一気に突っ込んで攻撃してきた。俺は冷静に大きく振りかぶった棍棒の一撃をかわす。
そして隙だらけになったゴブリンの首をマチェットで切り裂いた。
ゴブリンは苦しげな声をあげるとそのまま倒れ込み、光の粒子に包まれて消え去った。その場には、小さな紫色の石が転がっていた。
「魔石か、いいね」
魔石はモンスターが倒された際に時折ドロップする、魔力を持つ石だ。様々な使用用途があり、ピンポン玉サイズのゴブリンの魔石でも安いが売れる。Dポイントではどんなもんなんだろうな。
俺はその魔石を拾い、リュックに放り込んだ。
「思ったよりあっさり倒せたな、もうちょい戦ってみよう」
俺は再び歩き出した。ゴブリンを倒した後も、いくつかのゴブリンと遭遇したが、特に苦戦することもなく、ゴブリンたちを次々と片付けていった。
ダンジョンマップを見ながらさらに奥へ進むと、次の階層へ降りる階段の前にモンスターが立ちはだかっていた。ゴブリンに似ているが、体格は一回り大きく、筋肉が張り詰めたように力強い姿をしている。
「ボブゴブリンか」
階層ボスとして配置されているらしいが、強さ的にはただのゴブリンの強化版といったところだ。
ボブゴブリンが低い唸り声を上げ、こちらに向かって突進してくる。間合いまで来ると棍棒を振り落としてきた。
俺はそれを横に飛び避け、すぐにマチェットで肩を切り裂く。肉質がゴブリンよりも硬く、致命傷にはならなかった。
するとボブゴブリンが痛みを堪えながら再び攻撃を仕掛けてきた。また同じように棍棒を振り下ろされる。
俺は一歩引き、すぐに反撃でマチェットを腹に突き刺して切り裂いた。ボブゴブリンはうめき声をあげながら崩れ落ちた。光の粒子に包まれ、消え去っていく。
「…ふぅ、やったか。思ったよりしぶとかったな」
俺は息を整え、勝利の余韻に浸っていた。だが次の瞬間、体の中に熱い何かが駆け巡るような感覚が広がった。
頭の中で何かが弾けるような気分になり、一瞬混乱したが、すぐに理解した。
「レベルアップか。凄いなこれ」
強い高揚感が全身を包んでいた。特に何か強くなった感じはしないが、なかなか癖になる感覚だ。
そして、ボブゴブリンが消えた場所には、光る丸い玉が残っていた。
「お!スキルオーブじゃん」
スキルオーブとは使用することでスキルを獲得できるアイテムだ。スキルオーブを手に持つと、頭の中にスキルの情報が流れ込んでくる。
どうやらこれを使えば、氷を生み出し操る魔法を使えるようになるらしい。
まぁ氷魔法か、魔法系のスキルは高値で売れるが…さすがに自分を強化したほうがいいよな。
俺はスキルオーブをしっかりと握り、力を込めた。オーブがパリンと音を立てて砕け、その破片が光となって俺の体内に吸収されていく。
吸収された瞬間、魔法の使い方を理解した。試しに氷の玉を生み出してみる、生み出した物は自由自在に動かすことができ、勢いよく放つこともできた。
他にも尖った氷や氷の壁なども作れたので、自由度は高そうだ。
ただあまり使いすぎると妙に疲労が溜まるため、程よく使うほうが良さそうだ。まぁ俺魔法職じゃないしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます