9階層

5階層の遺跡エリアはいつも通りひんやりとした空気が漂っていた。

前にミラとメリスと戦っていたオークたちのあの場所まで行ってみることにした、あいつら随分と仲間を呼ぶらしいからな。


「ザベル、出てきていいぞ」


黒剣を軽く叩きながら言う。

すると、黒剣から黒い煙がふわっと出てきて、ザベルが姿を現す。


「ふぃ〜、やっと歩ける!さすがに剣の中でじっとしてるのは飽きるな!」


ザベルはそう言って両手を伸ばし、軽くジャンプして身体をほぐしている。


「まだ発表されたばっかだからなぁ、ニュースじゃ契約のこととか言ってなかったし」


「早いとこ自由に歩き回れるといいな!」


ザベルは明るく言う、もう別個体が発見されてるし契約のこともすぐに有名になりそうだけどな。

俺たちはさらに進み、やがて目の前に少し広めの空間が現れた、前に来たところだな。

そこにはオークたちが数体うろついている。


「そんじゃ始めるぞ」


「はいはーい」


俺はすぐにスケルトンを3体召喚した。

「殺せ」と短く命令すると、スケルトンたち剣を抜き、カタカタと顎をならしてオークに向かって突進していく。

ザベルも後ろから小さな炎の玉をいくつも作り出し、次々とオークたちに向かって放っていく。

スケルトンたちはオークの巨体に臆することなく、剣を振り下ろし、戦闘が激化していく。オークもスケルトンたちに向かって突進して棍棒で殴るが、スケルトンは少しのけぞるだけですぐに剣で斬り裂いていく。

俺も後方から氷のトゲを生み出して放ち、スケルトンたちを援護する。

鋭い氷のトゲは、オークの肉体に突き刺さり、確実にダメージを与えていく。

だが、オークの一匹が雄叫びをあげると、遠くからさらに増援が現れた。オークの仲間が、俺たちに向かって次々と襲いかかってくる。

俺は黒剣を鞘から抜き、オークたちを斬り裂いていく。ザベルも離れたとこから炎の玉を放ち、それが直撃するとオークが怯み、それを狙って斬り裂く。

スケルトンたちはその間も剣を振り回し、オークたちを殺していく。


オークたちの増援はしばらく続いたが、やがて増援も途切れ、最後の一匹が倒れると、辺りは静寂に包まれた。


「ふぅ…終わったか」


俺は剣を地面に突き立て、少し息を整えながら呟く


「よし、喰らえ!ザベル!」


俺は辺りに散らばっている魔石を一つ拾い上げ、ザベルに向かって投げ渡した。


「うおおおお!」

ザベルは歓喜の声を上げながら、魔石に飛びつき、ガツガツと食べ始めた。俺はその間に散らばっている魔石を拾い集め、ザベルの元へ集める。


「ありがと!」


「いっぱい食べて強くなれよ〜」


しばらくガツガツと食べ続け、次第には全て食べきった。


「ふぅ、腹いっぱいだ!」


ザベルがお腹をさすりながらそう言う。

 

「そりゃ良かった、そんじゃ昼飯食って9階層覗いてみるか…昼飯食えるか?」


「おにぎりは別腹だ!」


「…どこでそんな言葉覚えた?まぁいいや、一応剣の中戻っといて」


「わかった!」


ザベルは返事をすると、黒剣の中に戻っていった。俺はゆっくりとセーフエリアに向かって歩き出した。

セーフエリアに戻ると、俺は中央にある魔法陣に立ち、9階層へと転移した。誰もいなかったのでザベルを出して、昼飯を食べ始めた。


しばらくして昼飯を食べ終え、9階層を探索するので、俺は派手なスーツに着替えた。最近スーツに着替えるのに慣れて着替えるのが早くなってきた。

セーフエリアを出ると、目の前には遺跡のエリアが見えた。


「うわ、かったる…遺跡のエリアかぁ。さっき行ったばっかなんだけどな」


森みたいに視界が悪いわけじゃないけど、遺跡はやたら広いし複雑だから、余計な時間を食うのが面倒くさい。というかモンスターハウスのせいで印象がくそ悪い。

俺は浮遊を使って、スケルトンを2体召喚し「着いてこい」と命令して進み始めた。


しばらく歩いていると、前方から何か重いものを引きずる音が聞こえてきた。足を止め、音の方向に目を向けると、そこには巨大な斧を引きずりながらゆっくりと歩いてくる大柄な鎧がいた。


「おいおい、随分強そうなのが出てきたな。リビングアーマー…だよな?」


俺はまず試しに、触手を使ってみることにした。

地面に魔法陣が現れ、そこから太い黒い触手がにゅるっと出てきて横に振り、しなりながらリビングアーマーに叩きつけられた。

リビングアーマーは少し吹っ飛ばされたが、バラバラにならず、普通に立ち直った。


「ええ…なんだよその耐久力」


俺は驚きつつも、再度触手を生み出す。再び触手がリビングアーマーに叩きつけられ、また少しだけ吹っ飛ぶが、今回もバラバラにならない。どうやら触手だけでは足りないらしい。

俺はそこでミラのことを思い出した。そうだ、あいつ蜘蛛の巣焼くとき巨大化した炎の玉を使っていたっけな。

 

「試してみるか」


俺は氷の玉を生み出し、魔力を込めてどんどん大きくしていく。普通の氷の玉がどんどん大きくなり、最終的にはバランスボールほどの大きさになった。


「アッハハハ!!」

 

俺は口角を上げ、声を出して笑い、ステータスを上昇させる。

そして巨大化した氷の玉をリビングアーマーに向かって放った。

氷の玉は勢いよく飛び、リビングアーマーに直撃する。大柄なリビングアーマーはさすがに吹っ飛び、壁に叩きつけられ、バラバラになって光の粒子に包まれ消えた。

よかった、これでダメだったら自信無くしてた。


「やるなぁ、太陽!」


ザベルが拍手をしながら褒めてくる。


「でもこれ魔力の消費がやべーわ。2回ぐらいでガス欠になりそう」


ミラのやつは涼しげに使っていたが、さすがはエルフと言ったところか。

リビングアーマーが落とした魔石を拾い、リュックに入れる。


「さて、進むか」


「はいはーい」


俺は軽く息を整え、再び進み始めた。

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