これは、夢か。古いアパートの1室、懐かしいな




あぁ、お母さんとお父さんもいる




いつも通り、喧嘩しているな。始まると、いつも長いんだ




そして、最後には矛先が僕に向くんだ




この人たちは、いつも好き勝手、僕のことを殴るんだ。




痛いのに、辛いのに、悪いこと…なにもしてないのに




親の夢を見るときはいつもこの場面だ。僕はお父さんとお母さんが好きで、嫌いだったんだ




この人たちは終わると、満足して眠るんだ。僕は痛くて、辛くて、怖いのに




だから僕は………





______________



目を覚ますと、俺はベッドの上で寝ていた。周囲を見渡してみると、迷宮学園の保健室のようだ。

体を起こすと、すぐ横にザベルが立っていて、俺に気づくと嬉しそうに声を上げた。


「お!起きたか太陽!」


俺はまだ少しぼんやりしたまま、頭をかきながらザベルに尋ねた。


「ああ、ここ保健室か?」


「そうだな!あの助けてくれたやつらが運んでくれたぞ!」


「そうか」


俺は自分の体に視線を落とす。制服は少しダメージを受けた形跡があったが、肌には傷一つなく痛みもまったくない。

どうやら、あの光が完全に俺の傷を癒したらしい。

俺はベッドからゆっくりと体を起こし、伸びをしてからベッドの端に腰掛けた。


「帰ってもいいのかな…?」


そう呟きながら、俺は歩き出した。ザベルも後ろからついてくる。カーテンを開くと保健室の先生が椅子に座っていた。先生はにっこりと笑って声をかけてきた。


「あら、起きたのね。傷はもう無いわよね?」


俺は先生に軽く頷いて応えた。


「そうですね、あの光で治ったみたいです…そういえば、あの光って一体なんだったんですか?」


その問いかけに、保健室の先生は微笑みながら説明してくれた。


「あれは聖女様よ。あなた良い体験したわね!」


「え?聖女様だったんですか」


俺は驚いて聞き返した。


「ええ、当たり前でしょ。あんな大規模な癒しと強力な結界を同時に放てるのは、聖女様ぐらいよ」


あれ聖女だったのか、道理でバカでかい光だったわけだ。


「やっぱ凄いんすね、聖女様って」


俺が感心していると、先生はさらに興奮した様子で説明を続けた。


「そりゃそうよ!だってあの聖女様は、かつて勇者様の相棒だったお方よ!?遠方にいたにも関わらず、今回もすぐに駆けつけてきてくれたって隊員の方も言ってたわ!やっぱり『慈愛の姫』の二つ名に相応しいお方なのね…」


保健室の先生は子供のように目を輝かせながら聖女のことを語る。いかん、この人聖女ファンクラブか。


「そ、そうなんすね…それじゃあ、俺はこの辺で帰ります」


俺は軽く手を振りながら、保健室を後にしようとする。すると、先生は最後に注意を促してくれた。


「帰り道、気をつけるのよ〜。まだ残党がいるかもしれないから」


「分かりました。ありがとうっす」


俺は手を振りながら保健室を後にし、廊下を歩き出した。ザベルも後ろからついてくる。


「太陽、あの聖女って本当に凄いやつなんだな!お前もあの力を手に入れたらいいんじゃないか?」


「バカ言うな、ありゃたぶんジョブスキルだよ」


少し笑いながら言いながらも、あの光と結界が作り出す安心感を思い出していた。

やっぱ竜人のトップの竜王と戦って勝っただけあるんだな。


「俺も、もっと強くならないとな」


小さく呟きながら帰路につき、家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る