第22話



「ボアの次は、『リザードマン』が大量発生かぁ」



 今日の俺は渓谷地帯に来ていた。



「ヒヨコくん、リザードマンって知ってるか?」


『ピヨピヨピヨピヨピ~ヨピヨ』


「なんて?」



 うんどうせ知らんだろうから説明しよう。



「二足歩行のトカゲ人間だよ。爬虫類の分際でパンチとかしやがる」



 そいつらを探して岩だらけの小道を歩いていく。


 他にもギルドから冒険者たちは来ているが、みんなあえて散り散りになってた。



「強さはそんなでもないさ。豚鬼トロールと違ってパワーはないし、突猪ボアみたいに頑強さもないからすぐに死ぬ」



 ただ。



「アイツら、爬虫類らしく『擬態』できるんだよなぁ」



 というわけでスキル発動≪収納空間アイテムボックス≫、解放。


 そこから鎖付き大型ブーメラン『ポメラくん』を出し、そのへんの岩壁にブン投げた。


 すると、



『シャアァッ!?』


「おー当たった」



 岩肌から出る血と絶叫。


 刹那、ブーラメンが刺さった場所が変色。

 串刺しになったトカゲ人間の死体が姿を現した。



「特殊能力【環境擬態】。この力が厄介なんだよなぁ。しかも渓谷の小道でやってくるから、集団で動くヤツほど餌食になる」



 まず突然の奇襲を受けてビックリ。

 ここで一瞬身体が固まる。

 そっから咄嗟に動こうにも、仲間がいるせいで避けるスペースもなく、剣を抜くのにも気を遣う始末だ。


 結果、見事に一撃クリーンヒットを貰うわけだな。



「んで今や、ある程度散らばって動くのがベターになったってわけだ。まぁ俺みたいに目がいいヤツは、事前に察知して仕留めりゃいいんだがな」



 鎖を引っ張ってブーメランの『ポメラくん』を手元に戻す。

 真っ黒な見た目で目玉もあるちょっとキモい武器だ。


 ちなみにコレ。

 魔物『武装怨霊リビングウェポン』の破片を使った結果、その凶暴性が復活してしまっており……、



『――ギシャァアアッ!』


「おー騒ぎ出した」



 この通り、勝手に叫んで暴れる凶器と化していた。



『ギシャシャシャシャッ!』


『ピヨピヨピーヨピーヨピヨ!?』


『ギシャーッ!?』


「叫び合うなお前ら」



 こんな狂犬ブーメランになったので、改造して鎖を付けたわけだ。


 鎖の末端には腕輪が付いており、収納空間から具現した時に俺の腕に嵌るようにしている。

 それで引っ張って戻せるわけだな。


 まぁ暴れず勝手に戻ってきてくれるのが一番なんだが。



「なぁポメラくんよ。突っ張るのはもういい加減にしないか? 俺はお前と仲良くしたい」


『ギシャシャ~ッ!』


「俺も元は『 暗 黒 破 壊 龍 ジ ェ ノ サ イ ド ・ ド ラ ゴ ン 』ってしがない魔物なんだ。まぁ今は細胞を人間に変えてるから、お前ら魔物からも敵判定されちまってるけどさ」


『ギッシャーーーーーッ!』


「一緒に楽しくやっていこうぜ? いがみ合うなんて疲れるだけだ。仲良く平和に友好的に。俺たちの手は暴力ではなく繋ぎ合うために、口は罵倒ではなく愛を語るためにあり」


『ギーーシャーーッ!』


「うるせぇな殺すぞ劣等種」



 邪龍パワーは軽く込めて岩壁に投げた。


 瞬間、アホのブーメランは音速となり、空気の壁を突き破りながら岩肌に衝突。

 その衝撃で壁周辺に張り付いていたリザードマンどもが『シャーッ!?』と喚きながら十匹以上落ちてきた。


 お、ラッキー。



「やったなポメラくん、友情の力だな」


『ギシャァアア~……!?』



 ブーメランをまた引っ張り戻す。


 ほぼ砕けてるが、スキル≪物体修復オートリペア≫で元通りっと。


 よし。



「やはり友情は偉大だな」


『ギシャァァ……?』


「友の俺たちだから発揮できた力だよな」


『シャ、シャァ……ッ?』


「なぁ俺たち友達だよな???」


『ギシャ~~~ッ!?』



 勢いよくコクコクと頷いてくれた。


 うんうん。

 これからは『仲良くしよう』って言ってる相手に無為に噛みつくのはやめような?



「さて。へばりついてたトカゲどもが落ちてきてくれたんだ」



 片手にポメラくんを構え、もう片方の手には突猪ボアの頭蓋槌『チャーハン』を出す。



「マイホーム建設資金のために、狩りまくるとするか!」



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