第34話
「じゃ、また来るからなイスカル~」
「もう来るなッッッ!」
赤龍の一件から数日後。
俺は『暗黒令嬢サラ』に扮し、領主イスカル卿に魔酒を下ろしていた。
いよいよ正式販売間近である。
今回はその直前の
「さて、ヴァンのヤツは上手くやっているだろうか……」
あれからヤツにはフリーの討伐者の生き方をオススメした。
外で魔物を狩り、その素材を街内で引き取ってもらう生き方である。
荒くれな冒険者よりもさらにアウトローな生き方だ。
あまり世間と関わりたくない犯罪者がよくそんな生活をしている。
「自由に思える冒険者ライフも、ギルドを行き来していればそれなりにヒトと関わる機会が生まれてしまうからな。あいつにそれは早いだろう」
そう思っての討伐者のススメである。
てか少し前にギルドで大暴れしたばっかだしな。
顔を出せばまたトラブルになりかねん。
「なにごともなきゃいいんだが……」
野郎のことをぼんやり考えつつ、領主邸の敷地を出た時だ。
近くの通りで見知った顔がアホをやっていた。
「――なっ、な!? 頼むよデートしてくれよキャサリンちゅわぁ~ん!」
「えぇ~、ルアくん顔は良いけど中身がゴミクズすぎるんだも~ん」
「ゴミクズッッッ!?」
「前にルックスに釣られてサシ吞みしたら、ソッコー酔い潰れて飛びかかってくるわ避けたら説教かますわ、その場で吐くわ気絶するわお金持ってなくてアタシが払うことになるわでもうマジ最悪だったでしょ~? 死んだほうがいいんじゃない?」
「はぅわッ!?」
「というわけでじゃーねー。次話しかけたら警備兵さん呼ぶからね~」
……娼婦っぽい姉ちゃんをナンパし、そして見事に撃沈している
やれやれあの野郎なにやってんだよ。
「相変わらずだなぁお前は。まぁ元気出せ」
そうしてアホの友人を励ましながら近づいた時だ。
アイツはこちらを振り返るや、パァァアっと顔を輝かせた。
「さっ、サラ様ーーーっ!?」
「えっ、あ」
そこで気づいた。
そう言えば今の俺、サラの姿じゃねーかと!
うっわぁ~~~~、赤龍のこと考えててボーッとしてたわ! マジうっかりだ!
「なっ、なんか知らねーけどサラ様ってばオレ様のこと励ましてくれた!? えっえっなにこれ夢!?」
「いっ、いや今のは違う!」
よしこうなったら即撤退だ。
これ以上ボロが出る前にバイバイだ。
そうして高速移動しようとした瞬間、ルアにがしっと手を掴まれ、
「夢でもいいから――オレ様とデェトしてくださぁぁぁいッッッ!」
「なっ(えぇ~~~~~~~~~~!?)」
お前何言ってやがるんだこの野郎!?
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