第15話


 はい『魔の森』到着!

 大量発生中の『チャージボア』見つけてガシッボカッ勝利!

 その血とか肉とかゲットして調理場に帰還!(お肉は売れる)



 そんなわけで酒の製造過程に桃だけじゃなく血も投入。

 さっきと同じく『暗 黒 破 壊 龍 ジ ェ ノ サ イ ド ・ ド ラ ゴ ン』ファイヤーで作ったみたら……。



「な、なんじゃぁこりゃぁ」




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・『邪龍黒炎魔物酒』 レア度:5 種別:果実酒・血酒 製作者:ジェイド



 糖度:5

 アルコール度数:90

 容量:10リットル

 特殊能力【頑強】



 チャージボアを用いた血酒。

 魔物は人類に害なす存在。細胞も有害であり、肉を食する際にも完全に火を通さなければならない。

 ゆえに血を飲むなど自殺行為なのだが、『存在の劣化』により有害性も弱体化。

 人類がどうにか飲める範疇に収まり、また飲んだ者に一時的な効力を及ぼす魔の酒と化した。


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 結果:謎のお酒が出来ました☆




「いや特殊能力がつく酒とか聞いたことないぞ……」



 この世界には『スキル』だけでなく『特殊能力』というモノも存在する。


 魔物と、魔物を素材とした物品が宿しているものだな。


 たとえば俺の『チャーハン』だ。

 チャージボアの頭蓋骨から作ったあのハンマーは、特殊能力【頑強】を宿している。


 それは単純に丈夫って意味じゃない。



 明らかに“耐久限界を超えるダメージ”にもある程度耐えられるのだ。



 ゾウに踏まれてもマジで大丈夫ってな。



「……なるほど。この酒も魔物を使ってるわけだから、特殊能力を宿すにも不思議じゃないか」



 こんがり焼けたお肉とかじゃない。

 俺の特殊な『暗 黒 破 壊 龍 ジ ェ ノ サ イ ド ・ ド ラ ゴ ン』ファイヤーで血をそのまんま発酵させて有害性だけ弱めて見せたんだ。

 まぁこういうこともあるわな。



「ンで、【頑強】の効果は文字通り、能力を受けた者をタフにすることだったか」



 戦闘では非常に有用だ。

 要は死にづらくなるんだからな。



「魔物から作れる酒だから『魔酒』といったところか。コイツは冒険者にとっての新しい切り札になりそうだな」



 テキトーに酒を造ってたら前代未聞の発明をしてしまった。


 こりゃ魔物と戦う奴らの助けになれるアイテムだ。

 アルコール強すぎて飲酒後数分でぶっ倒れるだろうし、肝臓が酒を処理しきるまでの限定的能力付与だろうが、それでも強力な切り札になる。

 コレがあれば死者もぐっと減るだろう。



「秘密にする選択肢は流石になしだな。よし売るか」



 といっても俺が売るわけじゃない。


 俺の望みは“ほどほどな平穏”だ。


 常識を破るような発明をして大注目、ってのは性に合わない。


 つーわけで、



「やるかぁ……久々にアレ」



 ぼさぼさの黒髪をぼりぼり掻きつつ。

 俺は『細胞』に力を込めた。

 

 むむむむむ~。




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