第7話
春も中頃。
すっかり雪解けした季節だ。
この時期になると、エイジくんたちみたいなピカピカの
「そういう連中は血気盛んで戦闘用スキルも有してるからな。ヘマしなきゃわりとガンガンのし上がっていくんだが」
『ピヨ?』
ヒヨコくんに語りながら、都市南方の『魔の森』を歩いていると、
「――ど、どなたかお助けを~~~~っ!?」
と、女の子の情けない悲鳴が聞こえてきた。
「まぁ、ヘマすればこうなるわけだ」
さて邪龍イヤーは地獄耳だ。
瞬時に声の発生源たる座標を捉えて、いざいくぞっと。
◆ ◇ ◆
「ひぃいぃぃぃぃぃいい……!?」
来たら少し面白い状況になってた。
まず目につくのが、大木の下でへたれ込む女の子だ。
目元の隠れるような長い前髪をしていて、如何にも気弱そうな感じだ。
「血気盛んとは真逆だな。冒険者じゃないのか……とも思ったが」
一応は厚手のローブを装備している上、ちょっと離れたところにナイフが落ちている。
首元にも『Tr№3810.KOMORI:V』と書かれたネームタグが下げられてるしな。
ありゃ『トリステインでの冒険者登録番号3810、コモリ:五級冒険者』って意味だ。
「んで」
『『フッシュゥゥゥウウウッ!』』
巨大一本角の鹿型魔物『ロングホーン・エイク』が二頭、女の子の頭上ギリギリの木の幹に角を深く食い込ませていた。
鳴き声変だな。
「あーなるほど」
まず森で角鹿に襲われる女の子。
ナイフすら投げ出して逃げるも、人類抹殺が大好きな魔物が見逃してくれるわけがない。
んで追いつかれ、二匹同時に突っ込んできたところで……、
「咄嗟にへたれ込んだら、ちょうど後ろにあった樹に角が刺さったわけか」
運がいいなぁ。
運も冒険者には大切な要素だ。
「そっ、そこの人、どうかお助けを~~~……!」
とそこで、コモリって女の子が俺に助けを求めてきた。
いや必要か?
「ナイフ取りに行ってコイツら殺せばいいんじゃないか?」
「こっ、腰が抜けて動けないんですぅ~~~っ!」
ってマジかい。
本当に冒険者とはかけ離れたヘタレっぷりだな。
『『フシュ~~~~ッ!?』』
コモリの呼びかけで角鹿どもが俺に気付いた。
奴らがこちらに首を捻ろうとすると、刺さっていた樹がミキミキッと抉れ、結果的に角が抜けた。
「おお、よかったな鹿ども。コモリちゃんから意識そらしたのが功を奏したな」
「奏してないですよッ!? 何をのんきな~~~!?」
俺に向かって突撃してくる鹿二頭。
フシュシューッと変な鳴き語を出してるが、巨大角による一突きは脅威だ。
文字通り、不意を突かれて一撃死する冒険者は多い。
「こういう時こそ冷静にっと」
俺は寸前で寝そべるように身を屈めた。
『『フシューッ!?』』
頭上で角が
それを感じながら瞬時に≪
虚空より刃付きの巨大ブーメラン『ポメラくん』を握り、
「せいっ」
その場で駒のように一回転。
結果、鹿どもは四肢を斬られてバタッとその場に倒れ伏した。
ここまでほんの数瞬だ。
「よし解決と」
『ギシャーッ、ギシャーッ!?』
「そしてお前は暴れるな」
無駄に意思と目玉付きでキモめんどくさいポメラくんである。
俺はそいつで『フシュ~~~ッ!?』と悶える鹿どもの首を落とし、さっさと虚空に仕舞い込んだ。
その鳴き声なに?
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【今回の登場人物】
俺:本名が恥ずかしい人。三級冒険者。春頃は新人を助けにちょくちょく森をうろついてる。
コモリちゃん:メカクレの五級冒険者。荒事には向かない性格をしているが……?
鹿×2+ポメラくん: う る さ い
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