第19話 悲しい勘違い

☆☆☆勘違い


帰ろうとしている宮藤さんを呼び止める。


「え、ちょっと待って宮藤さん。何か言うこと本当にないの? 宮藤さんはほら、俺のこと放課後に呼び出したんだよね。話したいことがあるって」


「はい、そうです。それは先輩と札森さんが一緒にいることをやめてほしいって」


「ほ、ほら、理由とかってあるじゃん。俺と札森が一緒に居て困るのは宮藤さんな訳だよね。その理由を教えてほしいというか、そのさ、ほら、俺のこと放課後に呼び出したんだよね二人きり!」


「……先輩何を言って……確かに先輩と札森さんが一緒に居て困ります……その理由は……いや、そもそも放課後に二人きりで呼び出したって……!?」


そこで、宮藤さんは何かに気付いた。すると顔を真っ赤にした。


「うんうん。いいんだよ、そんな恥ずかしがらなくて。うんうん。嫉妬なんだよね。大丈夫。全部分かってるから。うんうん……」


腕を組んで頷いていると。


「ばっかじゃないの!? まさか、せんぱい。私が告白すると思ってるんですか!? そんなわけないじゃないですか!」


「はい?」


「え、なんで? あ、でも私が校舎裏で待つとか言ったのが悪いんですけど! とにかくそんな気は一切ないですから。そもそも、せんぱいと今日喋ったのが初めてですし、そんな簡単に人を好きになるとかないですよ」


え……じゃあ、なんで放課後に呼び出したの。


「あの、今後あるとかは……?」


「ないです」


「ほ、ほら、その……ほら、今会話して胸がときめいたりとか……ない?」


「ないですね」


「そう……」


その場でひざまずいた……


「あの、こんなところでひざまずかないでください。汚れますよ」


「……俺……てっきり宮藤さんに告白されると思ってその、凄くドキドキしてたんだ。こんなところで呼び出されたし……やっと、俺の魅力に気付いてくれる人いたのかって思って……俺そんなにモテないかな……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


再び同じくフラれる。いや、最早フラれるというか、そういう段階にも進んでいない。


「泣かないでください! すいませんでした! 確かに私の行動は先輩を勘違いさせてました! その結果先輩の純情を傷つけたしまったことは謝ります。すいませんでした!」


「泣いてはない。ただ精神ダメージを受けているだけだ。あの……お詫びとかにチャンスとかないか? その、もし困ったこととかあったら助けるから。相談乗ったりとかできるし?」


「え、この人まだ諦めてないの……」


「いや、やることなすこと全て上手くいかなくて……ほんとに……悲しいくらいにスポーツで頑張っても他の人が応援されるし、滝から落とされた人助けても別に人とと結婚するし……しまいにはコンビニ強盗のせいでバイトもクビになるしぃ……どうしたらモテるんだ……スクワット千回出来てもなんも意味ないんだよぉ!」


「(この人重傷だ……)」


憐れんだ目で見られている。だけど、なぜか宮藤さんの口元が緩くなっていく。


「あはははははは……」


すると、宮藤さんは笑う。


「確かに……札森さんの言いたいこと分かる気がします。先輩凄く面白いです……その、先ほど言ったこと撤回します」


「え、じゃあまずはお友達からってこと!? 悩みも聞くよ……」


「いいえ、札森さんと一緒にいることですよ」


「そっちはいいんだよ、付きまとわれるの厄介だし……札森は俺を壊れないおもちゃだと思っているんだよ……いきなり膝十字とか腕十字掛けてくるんだぞ。たまにフランケンシュタイナーとかやってくるから、受け身取るの大変なんだよ」


「そのフランケンとか膝十字とかはよく分からないですけど、先輩は札森さんに恋愛感情抱かないんですか? ずっと一緒にいるんですよね」


「ないよ。なんでみんなそれ聞いてくるんだろう。俺と札森は普通に幼馴染だよ」


「そうなんですね……(先輩の方もなしと……)」


宮藤さん何かをノートに書いてるがまぁ、それはいいか。


「ところで、せんぱい。そういえばなんですけど、巻き込んだお詫びと言うかなんというか……その、私の友達に困ってる女子がいるんですよ……」


「――詳しく聞かせてもらおうか……」


「気持ち切り替えるの早いんですね先輩」


「親父に教えてもらったんだ。一回の失敗を悔やみ続けるより次行かないと死ぬような生活送ってたから、でもきっと後で引きずると思う」


親父との喧嘩でミスした時にそれを引きずれば、更に何発も攻撃が飛んでくる。いちいち失敗を気にしてたら、確実に殺されてただろう。


「へぇ、いいお父さんなんですね。仲いいんですか?」


「いや、嫌いな人間を作らない信念の俺が唯一嫌ってるのがクソ親父だ。普通に虐待されてたから。俺じゃなきゃ死んでたよ。それよりも、その子についてだ」


「せんぱい圧が強いです……」


すると、宮藤さんは口を開いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る