第44話 世界を救え!

〇〇〇怪人との戦い


さっきから、明らかに先輩の動きが戦闘モードに入ってるっす。普通に考えてヒーローショーって打撃とかは寸止めのはずっす。そのはずが先輩普通に殴られてるし……


だけど、そのおかげか先輩が悪の戦闘員を次々に倒していくのは臨場感が半端ないっす!


普通のヒーローショーとは違った演出が見られるのは凄いっす。


特に戦闘員が本編通り消えていくのは一体どうやってるんすかね! 最近のヒーローショーは凄いっす!


それに子供達も先輩のド派手なアクションシーンで大盛り上がりでした。


むしろ本編のレッドより動いてる気がするっす……


『正義は必ず勝つ!』


「レッドかっこいいーーーー! がんばれーーーー!」


「……がーっはっはっは! 残念だったな! 例え戦闘員を倒したとしても、この私を倒すことはできない!」


あ―これ負ける奴っすね。見た目も弱そうっすし……


「くらえ! ハイパービーム!」


すると、敵怪人の胸からビームが……え!? 最近のヒーローショービーム出るんすか!?


「っぐ!!!」


そのまま光に先輩が包まれて……


「せんぱい!!!」


客席からでも熱を感じたっす。それを直撃した先輩は……


「アッツ!」


と言うか、せんぱいのレッドスーツに火が付いてる。え、あのビーム本物なんすか!? せんぱいじゃなかったら死んでるっすよ!?


「……え、なんで原型保ってるの……? だが、スーツに火が付いた! これでお前はもう戦えまい! 焼かれて終わりだ」


「……ふんっ!」


しかしスーツに着いた炎は一瞬で消えた。何が起きたか分からなかったっすけど、恐らく人が視覚出来るスピードよりも細かく動いて、瞬時に火を消したんすね。


先輩だからこそできる技っす!


「え、なんで……?」


怪人役の人も相手が先輩ってのが悪かったっすね、先輩がこの程度で倒れるわけないっすよ。


「先輩! そのまま倒しちゃってくださいっスー! がんばるっすー!」


気が付けば私も応援してたっす。


『今度はこっちの番だ! 喰らえ!』


先輩が怪人に近づこうとすると透明な結界のようなものが阻んだっす。なんすかこれ……


「ふははは! こんなこともあろうかと対物理結界シールドを用意してあったのだ! まさかこいつを使うことになるとはな、これは徹甲弾すら通さない鋼鉄のシールドだ! 人間には決して破れまい!」


「はあっ! ふんっ! はぁっ!」


そのまま先輩は複数張り巡らされた。透明なシールドを素手で殴って破壊していった。


まんま番組で見てるような、CGマシマシの戦闘シーンっすよこれもはや!


「……なんで破られてんの……? これ人間が破れるものでは――」


怪人と距離を詰め、回し蹴りを当てる。明らかに一般のヒーローショーでは見られない美しい蹴りっす……


「っぐ……え、人間でこの打撃……だが、私は強化怪人こんなところで負けるわけ――っがぁぁあぁあ!」


先輩の攻撃。その全てが圧倒的でした。子供達も先輩レッドの強さに興奮を隠し切れないみたいでした。


『必殺技! スーパーキック!』


原作ガン無視の飛び膝蹴りを的確に首へぶち込むことで、怪人は吹っ飛びました。


あれ、中の人大丈夫っすかね……普通に死ぬんじゃないんすか……?


「っぐ……無念。やられたぁぁぁぁぁ!」


そして爆発……え!? 爆発するんすかヒーローショーで!?


司会のお姉さんもびっくりしてる見たいっすし!?


「……と、とにかくレッドがみんなを救ってくれたね! みんなもレッドにありがとうを言おうね!」


△△△悪の会議


「ありえないありえないありえないありえない……たかが人間如きにネガロスの怪人がやられただと!? それも一般人だぞ!?」


「落ち着いてください」


「これが落ち着いている状況か!? 代打の人間にやられたのだぞ!? しかも、我らが最高の技術をもってして作ったシールドを一撃で粉砕されたんだぞ? それも、レッド役の人物ならまだしも、代打だ。つまり、その辺で拾ってきた人間と言うことだ。これがどういう意味を持つか分かるのか?」


「ま、まさか!? あのショッピングモール。いや、地球にはあのような人間が何人もうろついている可能性が高いと言いたいのか!?」


「そういうことだ。つまり……もし、ネガロスがここで宣戦布告していたら……私達は……」


「そうか。たかが一般人であの戦闘能力がある地球人を相手にするとなれば……私達の被害は恐らく今まで以上のものになるだろう……」


「つまり結論は……征服……やめよう」


こうしてネガロスは地球侵略を撤廃したのであった。


☆☆☆ヒーローショーが終わり


正直に言えば全身が痛い。何とか死に物狂いでヒーローショーを成立させたけど、明らかにビームとか結界とか出してきたし、あの怪人何者だったんだよぉ……


ビーム喰らった時正直死ぬほど熱かったし、あれ、普通に俺以外の人喰らってたら死んでたぞ……


だけど、京都の応援が聞けただけで俺には百億馬力のパワーが出るのだ。京都の応援がある限り俺は負けたりしない。


途中の透明な壁も滅茶苦茶硬かったが、一点集中で殴れば砕けるものだった。


何はともあれ、怪人を倒して、俺は控室に戻る。すると渡辺さんが飲み物を渡される。


「大丈夫でしたか長田さん。ヒーローショーは無事終わりました。できると信じていましたよ」


「ちょっと、さっきの連中なんだったんですか。なんかビームとか出してきましたけど、普通に死にかけましたよ」


「長田さんがやったキックで怪人役の人が爆発したんで、何も調べられませんよ」


え、あれ、火薬とかじゃなくて本当に爆発してたの?


「え、じゃあ、俺捕まるんですか……人殺しで……」


「そもそも、どこの誰とも分からないから行方不明届けでも出なければ大丈夫なはずです。何か言われてもヒーローショーの演出です。で通しますから」


「え、そんなんでいいんですか? そもそも、戦闘員も消滅したし……」


「たまにあるんですよね。ヒーローショーで戦闘員が消滅することとか、だから長田さんは気にしなくて大丈夫ですよ。しかし戦闘シーン圧巻でしたね、本編顔負けのアクションでしたよ。どうですか、このままアクションスターの道とか、サポートしますよ!」


え……たまにあるの?


それだけ言われると俺はアクション俳優の誘いを丁寧に断り、給料を受け取った。これはデートの足しにできるな!


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