第3話 人生初めての合コン

☆☆☆初合コン


こうして俺はサッカー部の合コンへ参加することになる。一度家に帰りファッション誌で勉強した髪を整え、十八時時を回り近くのファミレスにて待ち合わせをしていた。


別のサッカー部男子に連絡が回っていたようで、あっちの方から声をかけてくれた。


「君が河野の代わりに来てくれた長田ながた君だね。さんきゅー! マジで助かる! 男子一人少ないと空気死ぬし、マジ助かった!」


長田おさだだよ……訂正するのは……いいや、ながたででも、どうせ俺は変わりだし。


「河野から聞いている通り、俺、全然合コンが分からないんだけど。代わりで大丈夫だったか?」


「大丈夫。大丈夫だよ。トークとかは俺達の方で上手く回すから、長田君は河野の代わりをやってくれればいいだけだから!」


頷くしかできなかった。サッカー部の男子。何というリア充っぷり。


そのままバスケ部の女子が来た。バスケ部なだけあって、身長たけぇーでも、普通に可愛い女子達だ。スタイルもいいし……運動している女の子って良いものだな!


人数は4対4でファミレスに入っていく。ドリンクバーをみんなで注文した。


「それじゃ自己紹介始めようか、俺は……」「私は……」


自己紹介が始まり、俺の番が回ってくる。そうだ。自己紹介ぐらいうまくできなきゃ、合コン来た意味がない。河野に頼まれたんだ。失敗するわけには……!


河野の代わり……河野の代わり……


「俺は河野雄一。サッカー部だ」


「「「(河野の代わりってそういうことじゃない!!)」」」


「え、サッカー部って自己紹介する意味なくない河野君~ここサッカーじゃん~面白いの~ポジションどこやってるの?」


やばい……サッカーやったことないからポジションとか一つしか分からない! ボール蹴って入れるだけのゲームじゃないのか……?


「ゴ、ゴールキーパーやってる」


「「「(河野はMFだよ!)」」」


「(それにゴールキーパーは俺だから!)」


何故か男子二人が慌てている。


「あれ、確か、小田君もゴールキーパーやってるって言ってたけど……もしかしてほけ――」


やばい。疑いの目が……


「俺達のチームはゴール二人で守ってるんだ。絶対に点数を入れさせないためだよ」


「「「(オフサイド! 長田君もうそれ以上喋るな! サッカーのルール知らないだろ君!)」」」


「でもオフサイドは……」


オフサイドってなんだ……?


「俺達はサッカーの常識を根本から変えようとしてるんだ。だから、常識にとらわれない戦法を考えて挑んでいく予定だよ」


「へぇ~凄いんだね。河野君が提案したの?」


「うん。俺発案」


「「「(長田……何言ってんだ?)」」」


「河野君凄いねー、ねぇ河野君って、今二年生なんだよね」


「そうだけど」


「全国行く気とかないの?」


全国大会か……サッカー部やってるなら当然あるよな。やっぱり青春で汗を流すのが部活動の醍醐味だし……


「「「(全国は無理だよ! 俺ら弱小校だぞ!)」」」


「当然あるよ。まだ俺達二年生だから引っ張っていけないけど、本気でやってるんだからさ」


多分河野ならこういうだろうな……


「うわ~すごい! すごいね河野君!」


「「「(河野は絶対言わない……)」」」


その後普通に会話をしていた。そのうち一人の女子が俺に話を掛けてくる。


「河野君は好きな食べ物ある?」


「基本何でも食べるけど、しいて言えば普通のご飯だな」


幼い頃俺はクソ親父に厳しく育てられすぎたせいで、まともなものを食べた試しがなかった。虫とか……野草とか……鹿の生肉とか……今思い返すだけでも恐ろしい。


「普通のご飯……もしかして、河野君野草とか食べてた感じ? ウケルーー」


「「「「「がはははは!」」」」」


「うん。食べても大丈夫な野草なら見分けれるよ」


俺の場合。体調悪くなるやつ食べても大丈夫なのだけど……


「「「「「へぇ……」」」」」


やばい空気が死んだ……何かまずいこと言ったのか!?


「じゃ、ゲームの時間だ! 負けた人は特製まずいドリンクバーを飲む罰ゲーム付きのやつ!」


死んだ空気を男子が変えてくれた。なんかゲームするのか……!


そしてゲームはルールを大して知らなかった俺が惨敗。罰ゲームのジュースは俺の前に出された。


「河野君! 一気だよ! 一気!」「一気! 一気!」


「「(あのドリンクは前に一度男子をトイレ送りにした不味すぎるドリンク。一口でも飲んだら最後トイレに避難する。長田君には悪いけど、一度席を外してもらう!)」


一気に飲めってことか、これが合コン……


俺は一気に用意されたドリンクを飲み干した……っ! これは……!


「……美味しい」


小さい頃に飲まされた鹿とか熊の生血とか、土から掘り起こしたミミズのジュースより百倍マシだった。


むしろ……美味しい方なのでは?


「「「「「えぇ……」」」」」


「体調悪くなったりとかしないのか……? おいおい……」


「いや、ここ十年は体調壊したことないよ。身体は凄い頑丈……あ、ゴールキーパーだから!」


今上手いこと言えた!


「(ゴールキーパー関係ねぇ……)」


「(あれドリンク間違えたか……ちょっと一口……ぐえぇぇぇ!)」


一人男子がトイレに行った。そんなに美味しかったのかこのドリンク。


「すごい~河野君! すごいね~~!」


その後も色々なゲームをしたが馴染めなかった。罰ゲームも何が罰ゲームなのか分からなかったし、人生の中で一番女子と会話した気がする、(まともに会話したことあるの札森しかいないし、あれは女子認定していない)


そして時間は流れ合コンの終わりが訪れる。


「じゃ、全国大会出場できるように頑張ってね~河野君~出来たらまた一緒にご飯食べよう!」


……全国大会出場出来たら……俺に可能性が?


「(結局何の成果もなかったな今回。これも全部長田君が意味不明ムーブかましたせいだよ……)今日はサンキューな、長田ながたくん! 長田君? 何か考えてるの? そんな星空をロマンチックに見上げてさ」


確かに全国とかそういう舞台に出れば、それだけ知名度も上がって女子にモテる可能性が広がる。スポーツができる男子はモテると聞いた……


だったら……


「俺。サッカー部入る……」


「「え」」

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