第16話 コンビニバイト

☆☆☆昼休み


「河野。俺バイト受かった! やっとバイトできるぞ!」


昼休み河野と昼食を食べている時に突然切り出してみた。


「え、引っ越し会社とかやるの? 確かに長田の体力ならなんでもできそうだけど」


「いや、普通のコンビニのバイトにした」


「あ、ちなみに私もそこのバイト受かったっすー! せんぱいと一緒っすーやったやったーっす」


突然昼食に入り込んできた札森から衝撃の言葉が発せられた。


「だからなんで着いてくんだよ。バイトまで一緒は頭おかしいぞ普通に」


「せんぱいと一緒の方が楽しいからっす! この前の山の事件も見てる側からしたら最高でしたっすよ!」


「なあ、二人共ホントに付き合ってないんだよな?」


「当然だ」「当然っす」


そこだけは意見が一致している。


「でも仲はいいよな二人共」


「まぁ、そこは小さい頃から一緒に居たから、腐れ縁ってやつだよ」「そっすそっす~」


「へぇ~まぁそうか。だが、長田がバイトかちょっと心配だな」


「あはは、それを言うなら札森のほうだろ。俺よりまともな人は存在しない。がはは!」


「あはは……(長田それ本気で言ってるのか……?)」


なんで、そんな愛想笑いしているんだ河野は……


「せんぱいのがまともじゃないっすよ! この前だって、悲劇に見舞われた女性を救おうとしたらもう婚約済みだったし。何かとモテようとしていつも失敗するじゃないすか。今回もどうせそうっすよ」


「うるせぇ! 金持ってればモテるだろう!」


「え、何その話もっと詳しく聞かせてほしいんだが、札森さん」


「それがっすね~なんかやばい集落で……」


なぜか札森は俺の失敗談を自慢げに話した。


「はははは! イノシシの大群倒したってマジか長田……サッカー部での動き見るに可能だろうけど……でもそれで、囚われの姫を救ったと思ってたら、別の人ともう結ばれてたって……ほんと長田面白いなぁ……! ははは!」


「そうっすよ、だから今回のバイトも絶対面白いと思うんすよ!」


「なるほどな、札森さんの気持ち分かるわ。長田は国宝級のトラブルメーカーだ。一緒に居たら退屈しないよな。現に話聞くだけで面白いもん」


二人で俺を見て爆笑している。


「河野。もしかして俺のこと馬鹿にしてるかな」


「いやいや、してないしてない。これは才能だよ。長田。お前は天才だ。唯一無二の才能を持っている」


「まぁ、俺は天才だと言う自覚はあるさ、天才はモテるのではないのか?」


事実上俺は天才だろう。しかしモテない。


「(自覚あるのかよ)いや、問題は才能の使い方だよ。長田はモテることに才能使ってないんだ」


「でも、ピンチ救われた女子とかって惚れるもんじゃないの? 俺いくらでも助けるよ。あ、でも暴力は振るいたくないから、不良に絡まれてる女子を助けるとかはなしで」


「(長田って争いごと凄く嫌ってるよな、むしろ長田がその力を、暴力に任せてたら今頃この場所は、いや、日本は壊滅してたのではないだろうか……)」


「まぁ、とりあえずコンビニバイトを俺は頑張る!」


「私も頑張るっスー」


こうして俺達の昼食は終わった。


☆☆☆コンビニへ


近場のコンビニをバイトに選んだので放課後に寄れる。バイトの制服に着替えると店長の元へ向かう。


「がははは! せんぱい。バイトの制服似合わなすぎっすよ! がははは!」


札森もコンビニの制服を着ている。まぁ、いつもの札森である。まぁ、顔は悪くはないから似合わないこともないが、素直に似合っているとは口が裂けても言うことはない。


「うるせぇ、さっさと店長の元に行くぞ」


既に出勤していたバイトの先輩たちへ挨拶をする。


「どうもっす! 私は札森京都っす! 初出勤っす! よろしくっす!」


「新人の長田天鶴ですよろしくお願いします」


「はい。長田君と札森さん。まずやってもらいたいことは品出しだね、これとか結構重いけど大丈夫かな」


「力には自信があります」「はいっす!」


店長に仕事を振られると、淡々とこなしていく。


「せんぱい。どっちが早く品出しできるか勝負しませんっすか? 負けた方が今日のバイト代全部貰うってことで」


「……お前俺に負けること考えてないの? それとこれは遊びじゃなくてしっかりと賃金貰っている仕事なんだぞ」


「やる前から負けること考える馬鹿がいるっすか?」


……お前がバカだろ。


品出しは札森と一緒にやる。競争のせいもあってか、かなり早めに終わった。結果は俺の勝ちで終わった。


「あぁぁぁ……今日の給料が先輩に……全部取られるっす……」


酷く落ち込んでいる。


「そうなるって分かってたろ」


「でもっす……あと十秒早ければ先輩の給料全部貰えたのに」


十秒以上差があるならどうすることもできないだろう。


「いいよ、お前の給料はお前の給料だから。だから今後二度と俺に勝算のない勝負を持ち込むな」


「せんぱいやさしいっすね~」


まだ接客を教えられてもらっていないので、聞きに行った。


「まずレジの操作は……」


一通りレジの操作と接客マナーを教えてもらう。なるほど、お客様には笑顔で接客。分からないことがあれば勝手な判断はせず店長に聞く。たばこの番号も覚えたし、大丈夫だろう。初俺の接客だ!


早速お客さんが入ってくる。サングラスとマスクとニット帽の男性だ。こちらを見まわしている。


何か困っているのだろうか……?


お客さんはこちらを確認すると何も持たずにこちらへ来た。


「いらっしゃいませ!」「いらっしゃいませっす!」「金出せ……」


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