第17話 初出勤。コンビニ強盗に遭遇
☆☆☆コンビニ強盗
お客さんは包丁を持ってくる。あれ、でも、どこにもバーコードない……とりあえずマニュアル通りに……
「はい。ポイントカードお持ちでしょうか!」「すっすっすー!」
「金出せっつってんだろう! これが見えねえのか!」
「こちらの商品にバーコードがないみたいですので、少々お待ちくださいね」
……まさか、これは店長が言っていたクレーマーというものだろうか! 駄目だ……店長。どう対応したらいいんだこのお客さん。
滅茶苦茶苛立ってるし包丁振り回すし、俺の接客態度がそんなに気に入らなかったのだろうか。
「お前じゃ話にならねえんだよ! 上の人呼んで来い!」
「あ、二階のカフェの人ですか? 今呼んできますよ」
「上ってそっちじゃねえよ! お前ふざけてんのか!」
「すいません。至らないところばかりで、今日初出勤なもので」
「いや、初出勤でも分かるだろ! お前! これが何なのか分からないのか! 包丁だぞ包丁。それにマスクにサングラスにニット帽! どういうことか分からねえのか!」
包丁を欲しいなら、そういえばいいのに……なんなんだこのクレーマー……でも、笑顔で接客笑顔で接客……
「シャイな人ですか? あ、最近いますよね、人と目を合わせたくないからサングラスつける人。あ、俺は別にそういうの大丈夫ですよ」
「そんな分けねえだろう! シャイだったらこんな喋らねえよ!」
「(先輩……あれコンビニ強盗って気付いていないっすね。多分相手の人初心者マーク付いているから、行けそうかと思ってる見たいっすけど……多分包丁ぐらいじゃ凶器認定されないんすよ先輩は……面白すぎるっす……リアルでコントやってる人初めて見たっす……)ぶぶぶぶ……」
駄目だ。もう俺には手に負えない……
「店長! このお客さんどうしたらいいですかー!」
「お、長田君! ちょっと! なんでそんな冷静なの! 包丁振り回しているよ!」
何故か死ぬほど慌てている店長。まさか俺の態度が良くなかったからとか!?
「でも、店長。この人お客様ですよね。だったらしっかりとした接客をしないと」
「え、お前俺のことお客さんだと思ってるの? こんな身なりだぞ」
え?
「え、違うんですか? 包丁買いに来たものだと……」
「ちげぇよ! どう見ても俺はコンビニ強盗だろ! 見ろこの格好! 俺はお前のこと脅しているの! 包丁買いに来たわけじゃないんだよ!」
コンビニ強盗。え……コンビニ強盗!? やばい!
「ててててててて、店長! コンビニ強盗に遭遇したときのマニュアル教わってませんよぉ! ど、どう接客したらいいのか分からないですよぉ! 俺はどうすれば……」
「まずは自分の心配してよ長田君! お金渡していいから! ほら、命大事に!」
「え、そしたら俺の給料から天引きとかにされちゃうんですよね。俺は嫌ですよそんなの! そもそもレジの開け方俺教わってないですし! 強盗さんもどうして俺の時に来るんすか今日初出勤なんですよ! 俺やっとバイトできたと思ったのに!」
「知らねえよ! あぁもう調子狂うなあ! こうなったら!」
「いや天引きとかしないから、長田君本当に彼やる気だから逃げて! 自分を守って!」
「くらぇぇぇぇぇぇぇ!」「長田君!!!!!」
すると包丁が俺の元に……
――パキンッ
刃が俺の前腕に当たるとはじけ飛ぶ。
「え?」「長田君!?」
「危ないじゃないですか、強盗さんが怪我したらどうするんですか」
「長田君大丈夫!? 今腕に刃が当たって……血は……出てない」
「せんぱいなら大丈夫っすよ。身体頑丈っすので、それにしても強盗さん運が悪いっすね~~せんぱい相手に強盗は出来ないっすよ~~~」
「とりあえず凶器はないから取り押さえろぉぉぉ! 皆ぁ!」「ううおおおお!」
「うわぁぁぁ!」
すると、店長達が勇気を振り絞り強盗犯にタックルをして動きを封じてた。
事前に店長が通報していたらしくて警察が来た。
☆☆☆クビ
その後警察の事情聴取に付き合い、店長に裏へ呼び出された。
「長田君! いくら身体が頑丈だからって、包丁で刺されたら人は怪我するんだよ!」
「すいません包丁ぐらいじゃ脅されてる認定されなくて、包丁で俺怪我したことないんですよね。熊に引っかかれた時は流石に血が出ましたけど」
「君どんな生活送ってるの。でも、本当に怪我無いんだよね」
「はい、むしろ、全力で俺の腕に当たった、強盗犯の手首とかおかしくなってると思うんですよ。そっちの方が心配です」
「えぇぇ……包丁向けられて怖くなかったの?」
「いや、一切。本当にクレーマーかなって思ったぐらいですから。えっと、俺の接客態度ダメでしたかね」
「ダメとかそういう問題じゃないような……とりあえず。長田君。君はクビね。君が強盗に出くわしたら心臓がいくつあっても足りないよ!」
「えええええええ!」
「あははははは! せんぱいバイト初日でクビになっているっす! じゃ、私もやめるっす!」
またしても、俺は失敗をしてしまった。でも今日分の給料もらえるしいいか!
バイト編完!
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