第5話 不純すぎる動機

☆☆☆サッカー部入部


入部届を顧問に届け、放課後になるとサッカー部集合場所である校庭へ、ジャージに着替えて向かった。少し遅れたけど大丈夫だろう。


すると、かなり強面の男がサッカー部にいた。恐らくこの人が河野が言っていた指導者の『岡原監督』だろう。他の部員は息を上げている。


「無理ですよ、いきなり外周50って……死んじまいますよ!」


「どいつもこいつもしけた面してやがる……どういうことだ!」


なるほど、やはり、モテるにはまず顔からということか……すると監督の視線は俺に向く。


「お前、今何分だと思っている? 五分も遅刻だぞ!」


「二年の新入部員です。今日から初めてサッカー部に入部します。遅れてすいません! エネルギー補給してました!」


「……やはりこの部活はたるんでるな……もう一度鍛え直す必要があるぞ! 外周十周! お前は百周だ!」


あ、そんくらいでいいんだ。指導者の指示に従っていけば俺はモテるようになるだろうし、とりあえずモテるために頑張ろう。


「「「「「「え~~~~」」」」」


「わっかりました~!」


まぁ、準備運動だろう。他の部員たちは既に走らせたから息が切れているな。


「るんるんるんるん~」


とりあえず走って走って走った。走るくらいなら全然余裕だ。言われた百週は余裕で終わらせた。


「岡原監督! 百週終わりました!」


いい運動だった~凄く気持ちが良い!


「私は原岡だ。それに息が切れていないぞ? 無茶を言ったつもりだが……ズルしたか?」


「ズル……なんのことですか?」


「……え?」


何か食い違ってるような……


「……それより後何すればいいんですか? 次のメニューは!」


「とりあえずスクワット1000回だ。さっさと取り組め」


少ない……あ、これもしかして新入部員だから優しくしてもらってるのだろうか。


とりあえずその場でスクワットをやった。時間はかかったが休むことなく1000回を終わらせた。いい準備運動だ! やっぱ優しいなぁ……


「終わりましたよ。岡原監督」


「原岡だ。確かにズルはしていなかった。スクワットも力を逃がしてなかったし、しっかり腰を落としてやっていた。しかし……汗もかいてないな……」


「いやいや、ズルってそういうことですか、監督も意地が悪いですよ。こんな簡単なメニューじゃ皆平気ですよ~加減なんてしなくていいですから~」


「(……こいつマジで言ってるのか、恐らくさっきのスクワットを見るに、百周も余裕で終わらしたのだろう。彼の異常な体力。それに一目発せられる異常なプレッシャー、彼は恐らく『本物』だ……彼がいれば恐らく全国出場も……いや、制覇も夢ではないはず……全く。素晴らしい逸材に出会えたのかもしれない。昔の血が騒ぐ……あの頃のサッカー部が戻ってくるかもしれない!)」


「失礼した。君。名前は?」


「長田天鶴です」


多分監督に覚えられた。これで、俺は女子モテに一歩近づいたのだ!


その後も特訓が続いた。でも初心者だと思われたのか大したものではなかった。しかし他の部員は悲鳴を上げていたので、他の部員の分まで俺が特訓しておいた。


しかし、サッカー部……いいな……凄く楽。特訓って言うからもっと過酷なものを期待していた。


△△△職員室にて、


「原岡監督。少しやりすぎては? 部員の半数が悲鳴を上げていましたよ」


部活が終わり、職員室でサッカー部顧問が原岡監督に話を掛けていた。


「あのくらいで根を上げていたらサッカー部再興なんて夢のまた夢だ……長田天鶴という男を知ってるかね……?」


「えっと、二年生からの新入部員ですよね」


「彼は……本物だよ、恐らく全国で活躍できるほどの逸材だ。尋常じゃないスタミナに、一切倒れないフィジカル。そして、何をされても曲がらない屈強なメンタル。サッカーに必要な物全てを兼ね備えている。もしかしたら、本当にあの頃のサッカー部が戻ってくるかもしれないぞ。俺はあいつの背中にかつてのエース……太田の影が見えた」


「あれ?(確か長田君って、モテたいからサッカー部入りたいって言ってなかったっけ……? そんなに真面目に取り組んでるの)」


「とりあえず、私は合宿を開きたいと思うのだが、大丈夫かね?」


「え、えぇ、問題はないと思います。色々することはありますけど。でも長田君がいたら全国行けるって、彼はそんな逸材だったのですね……」


「あぁ、磨けば光る彼は天才だ……」


☆☆☆友人との帰り道


部活が終わり俺は河野と一緒に帰宅していた。


「ぐぇええ……疲れたぁあぁ……」


「河野たちのトレーニングそんなにきつかったのか、大丈夫か? 背負おうか?」


「頼んだ」


「うん」


河野を背負って帰路を歩く。


「長田お前凄いな……よく、原岡の指導付いてけるよ、俺の分までやってもらったし……」


「俺の場合は新入部員だから皆の分より優しくされただけだよ、だから、申し訳ないと思ってみんなの分フォローしただけ」


「そうだっけ……?(長田の方が俺らより酷い仕打ち受けてた気がするけど……むしろ倍以上やってた気がするけど)」


「俺サッカー部頑張ってみようと思う。こうやって一つの目標(モテたい)に向かってみんな努力するのなんか、青春っぽくていい……! 河野たちと一緒に!」


「長田……俺も頑張るぞ! うおおおお!」


こうして青春の一ページがまた増えていく……

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