第6話 合宿へ

☆☆☆海へ


なんやかんやで簡単なサッカー部の特訓が続いた。時は流れ合宿へ向かうこととなる。合宿場は海近くにあるみたいで山もあるらしい……うぅ……トラウマが……


山と言えば幼い頃クソ親父に放置された記憶がある。あの時はほんと死ぬと思った……子供に自炊させるってやばいだろ……


そして何よりも……


「今日からマネージャーやります札森っす~皆さん全国目指して頑張るっすー」


こいつが合宿についてきたことだった。なんかサッカー部のマネージャーやると言いだして腹立つし、当然。俺の邪魔をしてくるだろう。


「長田。どういうことなんだこれ……」


河野に話しかけられる。


「いや、俺にも分からない……最悪だ……どうしてこんなことに……」


こうして、合宿が始まった。かなりきつい特訓が待ってると思っていたがかなり優しいものだった。


てっきり、滝から落とされたりとか、素手で熊退治させたりするのかと思ったが……普通の体力トレーニングなどで、大して負荷がかかってない。


ご飯も用意されているみたいだし調達する必要もないのは凄く優しい。


「飲み物っす! どうぞ皆さん飲んでください! どうぞどうぞー! あ、そっちにすぐ向かいますっすー!」


札森は人より何百倍も体力があるので、常に走りまくり皆のフォローをしている。マネージャーが一番走ってる気がするが……


「監督! 一人倒れたっす! 涼しいところに運んできまっすね! よいしょ」


自分よりも大きい人間を容易く持ち上げ、走りながら運んでいく。


「あのマネージャー……体力やばくないか? 練習してる俺達より走ってるぞ……」


「それに息一つ乱してない……どんな体力してるんだ。声すげえでけぇ……うるせぇ」


すると、適当に走り込みをしていた俺の元に札森がやってきた。逃げよう……スピードを速める。


「せんぱい先輩! 何さぼってんすか! サッカー部真面目にやってるんすか? こんなメニューじゃ先輩一切疲れないっすよね」


付いてきた。さらにスピードを……


「おい、長田! お前は走り終わっているぞ! それ以上はオーバートレーニングに……」


原岡監督に止められるが、舐めてもらっては困る。あと、単に札森から逃げたい。


「お前はマネージャーの仕事しろよ……俺はこの楽な特訓でいいんだよ! 楽なんだから!」


「なんでですかーー! 真面目にやってないとモテませんよ!!!」


「うるせー」


「先輩待ってください~~~~せんぱいせんぱいせんぱい~~~! あ~~~~!」


そのまま俺は山に入り込み木と木を飛び移り、完全に札森を巻いた。


しかし、この山。熊とかでないのか……自炊できないじゃん……とりあえず食べられる山菜を食べた。


その後合宿場へ戻ると、監督に何故か怒られることとなる。


☆☆☆説教


夜。監督に呼び出される。


「長田。なぜ私のメニューを無視してそれ以上のトレーニングをした?」


「……その、監督。俺ばかり特別扱いして甘やかさないでください! 皆の特訓と同じにしてくださいよ! マネージャーが言ってた通りその、あんなの特訓でもなんでもないですよ!」


「え」


何故か監督は驚いている。


「え?」


「……(おかしいぞ。長田は特別一番きついメニューにしたはずだ。周りの十倍は過酷にしているつもりだし、普通のメニューでも皆は脱落してるのに……長田が一切辛いとか言ってるところや表情すら出していない……だとしたら、長田はふざけているわけではない……?)」


なんか俺のことを疑ってるみたいだけど……こんな腑抜けた特訓ばっかで俺は本当にモテるのか気になってきた。


「岡原監督……俺このままでいいんですか……本当にこのままいけば俺は……サッカーがしたいんですよ俺は……」


「私は原岡だ。長田。サッカーというのは一人でする競技じゃないんだ。ただ、前に出て点数を入れるフォワードだけが一見目立つように見えるが、その裏では多くの人達によって支えられている。たとえ個の力が強くても……仲間との絆がその子の力を無限に強くする。それに……」


そういえば、サッカー部入ってるけど一切ルール教わってないんだけど大丈夫かな……監督の言葉は最後らへんサッカーの専門用語ばっかでよくわかんなかった。


「……ところで長田は、どういう特訓を望んでいるんだ? 私には君が望む特訓が想像できないのだよ。どうすれば甘やかしてないと君に納得させられる?」


「まず。こんな合宿場に泊ってる時点で甘やかしてるなって……」


「え」


「それに山にも熊でないですし、寝起きはいきなり滝から突き落としたりもしないですよね……あと、どんな状況でも気絶だけはしないために首吊りの練習とか(※絶対に真似しないでください!)俺のクソ親父ならもっと過酷なことしてますよ……」


幼少期からクソ親父に滝から落とされたり、何度も死ぬような思いをしてきた。


首吊り練習は本当に死ぬかと思った。相手にチョークスリーパーかけられて意識が飛ばないために数分間縄で首を縛るとか……(※二度目ですが絶対に真似しないでください!)


「お、おい、待て。長田。お前普段からそんな……いや、普通に死ぬだろなんで生きてるんだお前……息子を滝から落とすって……ライオンじゃないんだから……」


「そのおかげか、体の頑丈さには自信があるつもりです。いえ、これは幼い頃の話です。今は自分の意志で拒否できるから大丈夫です! だから手心なんて加えなくて大丈夫です!」


「長田……(なんだこいつ……本当になんでサッカー部に入ってるんだ?)」


そういえば、この話するの監督が始めてだったな……


「だから生半可な覚悟じゃないんです。俺は……サッカーがしたいんです」


モテるために……


「分かった。今度からお前に甘えは一切消す。地獄のような特訓になることを覚悟しておけ……(もしかしたら、こいつなら本当に……全国を取るかもしれないな……)」


「はい!」


その後も生ぬるい特訓が続いたのだった……監督全く話聞いて無かったじゃん。

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