第34話 せんぱいとの出会い
〇〇〇京都の心境
遊園地から地元の駅に帰ってきて
先輩が私を家に送ってくれるとすぐに風呂に入る。
……先輩に告白された……
「せんぱい……せんぱい……」
湯船に浸かりながら考える。
先輩が私のことを好き……
「うへ……うへへへへ……先輩が私のこと好き……って! じゃなくてっす!」
正直に言えば、死ぬほど嬉しかったっす。だけど……なんだろう。
私は先輩のこと恋愛対象として見れるのか……そこが問題っす。
宮藤さんの言われたこと、確かに先輩と付き合えれば、ずっと隣にいれるっす。
咄嗟に断ってしまったけど……頷いてれば、今頃先輩の隣にいれたんすかね……
あぁ……でも、断るためにとんでもないこと言ってしまったっす。
先輩と虎徹さんが戦うなんて……
確かに先輩はすっごく強いっす。でも、それは虎徹さんも同じっすから……
うぅぅ……私が頷けば……すぐに先輩と付き合えたのに……
どうして、私、先輩からの告白断っちゃったんだろう……
恋愛なんてわからない。そんなの言い訳っす。むしろ、こんな私と付き合ってくれるのって、先輩ぐらいなのに……
〇〇〇昔の話
ごく普通の家庭に生まれた私は、ごく普通の女子でした。でも運動神経が高くて駆けっこでは負け知らず。
と言うのも、兄妹もいなくて、友人はいて、誰も私の有り余る体力についてこれなくて、しまいに鬼ごっことかだと私が最強すぎて誰も追いかけてこなかった。
言わば最強すぎて仲間外れにされていました。
夕暮れで子供達が帰っていく中。両親は共働きのため返ってくるのが遅いので、一人公園で遊んでいると、頭から血を流して、服もボロボロの男子が出てきました。
「……ようやく、戻ってこれた……っく……っぐ……」
「え、大丈夫……?」
私が男子の元に駆け寄ると、今にも倒れそうでした。
「……お前なんだよ……そもそもここ公園か……じゃあ普通に遊んでるやつだな……」
すると、男子のお腹が鳴る。
「お腹空いた……最後に食ったの三日前……」
「これ食べる……?」
丁度持っていた。ポテチを渡すと……
「い、いいのか……助かる……あむあむあむあむ……美味い……美味い……」
ポテチを飲み込むように食べた。その男子は一瞬で食べ終わると、
「げほっ! げほっ……生き返る……助かった……」
男子は公園の水道水をがば飲みします。
「ありがとう。生き返った。このお菓子滅茶苦茶美味いな……あと水道水泥水に比べたら百倍美味い……」
「いや、頭から血が出てるから、助かっていないと思う……何か事件に巻き込まれたの?」
「こんくらい唾つけとけば治る。ちょっと数日山にこもっていただけだ。熊と対面して怪我しただけだから」
山にこもって……何言ってんだこの男子……言ってることがさっぱり分からない。
「とにかく今日は助かった。素直に礼を言う」
「ちょっと待って君は――」
突然。大きな大人の男の人が私の目の前に立ちました。薄気味歩い笑顔を浮かべて私の手を掴みます。
「君今一人なの?」
「え……」
「ねぇ、おじさんの家来ないかな。お菓子とかいっぱいあるよ。ねぇねぇ行こうよ」
大人の力は強く、いくら私の力でも子供が敵うわけがない。
日が暮れているのもあって、公園にはもう人気がなくなっていた。だから、誰かに助けを求めようにも無理だった。
近くにいるのはあのボロボロの男子だけ……それも今帰ろうとしている。
「おっと、声は出さない方が良いよ。おじさん何するか分からないから……」
笑顔だった大人の顔が怖くなる。その瞬間本能的な恐怖が押し寄せてきた。
「い、いやぁ……」
「おいおっさん。なにやってんだよ」
男の子が大人の手を掴んだ。
「何だガキ……痛い目見たくないなら―――っがぁあ! なんだこいつの握力!」
すると、私を掴んでいた手を放す。すぐに男の子は間に入ってくれた。
「おっさん。さっきの言葉返すぞ、痛い目見たくないなら帰れよ」
「なんだと……ガキのくせに!!! 後悔させてやる」
大人はナイフを持ち出した。
「逃げようよ! ナイフなんて危ないよ」
「天国に思えるよ。熊の爪に恐れなくていいんだから……それにお菓子くれた恩は返さないと」
子供が大人に勝てるわけない……
圧倒的体格差。圧倒的体重差。だってそれは覆りもしない事実なんだから……
だけど……
何かが起きた。
気が付いたら大人が泡を吹いて倒れていた。
「ぐはぁっ……」
「っふぅ……大したことない。えっと、お前は怪我無いか?」
圧倒的不利な状況を一瞬で書き換えたこの男の子……
正直に言えばかっこよかった。
「かっこいい……かっこいい……」
「いや、弱い者いじめしただけだろう。全然かっこよくもないと思うけど……」
「どうして大人を倒すことができたの!? いや凄い……凄いよ君!」
「大したことないよ。あんなの慣れれば素人でも倒せる……足場崩して顔面蹴っ飛ばして脳揺らせば一撃だから」
「じゃあどうしてそんな強いの?」
「それは……俺の家武術の道場やってるから、それだけだよ」
武術……それをできるようになれば、私はこの子みたいに……
「すごい……私も武術習いたい……」
つい口走ってしまった。
「え? やめとけ、死ぬぞ。いやほんとに死ぬから。少なくとも俺ん家だけはやめとけ、いや、ほんとに死ぬぞ。普通の空手道場とか行った方が良い」
「いや。君と一緒のとこがいい……そうしないと強くなれない」
「なんで俺なんだよ。俺の姿見て何とも思わないのか、こんな今すぐにでも事切れそうなやつがいる道場なんか行きたくねえだろ。折角助かった命を大事にしろ」
「でも強くなれるって! 私強くなりたいから!」
「お、おい。なんでそんな強くなりたいんだよ。落ち着けって」
「いいや、落ち着かない! 今すぐ君の家連れてって! 私は武術を体得して最強になるんだ!」
強引に男の子の手を掴んだ。
「お、おい……離れろよ、もう何日も風呂入ってないから臭いぞ俺」
「確かに変な臭いしてるけど、それって修行してたんでしょ!」
「あぁ、そうだけど……」
「凄い! 凄い!」
その後何度も何度も頼むと私は諦めたように道場へ案内された。
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