第40話 夏休みの最後

☆☆☆復活


結局身体が万全に戻るまで、夏休みをほとんど消化してしまった。


その間もずっと京都の傍に居てくれたことは嬉しかったが、京都といちゃつきたい気持ちを我慢するのがきつかった。


だけど、付き合ってからの気まずさというモノは俺達にあまりなく、今までと変わらないような関係が続いていく。


それでも時たま照れる京都が可愛いのだが……


そして夏祭り最終日。


当然……


「せんぱい~~ここ分かんないっすー教えてくださいっす~~~~」


京都が夏休みの課題をやってるわけもなく、俺の部屋で京都の勉強を見ていた。


「今回ばかりは俺のことがあったから大目に見るけど、ちゃんと課題は終わらせないとだめだからな」


「えー先輩酷いっすよ~彼女なんすよ私、もっとその甘やかしてくださいっす!」


「ほ~ら、京都大好きだぞ。よしよし~」


京都の頭を撫でる。


「うへへへ~せんぱぁい……」


京都は頭撫でられるのが大好きなので、これをすれば機嫌が直る。


「じゃ、ここの問題やってこうか」


「……や、物理的に甘やかすんじゃないっす! 勉強を甘やかしてくださいっす」


「だって、宿題終わらせないと怒られるのは京都だぞ。それなら、京都が勉強苦手なのはわかっている。苦手なことでも恋人同士とならできるんだ」


「う~そうっすけど、分かんないところは分かんないんすよ! せんぱい!」


「分かった」


俺は京都を持ち上げて自分の膝の上に座らせる。


「あ、先輩の膝の上っす……うひゃぁぁあっ! くすぐったいっすよ先輩! あひゃ! あひゃひゃひゃ!」


そして京都の弱点である脇腹をくすぐった。


「ここは前に教えたぞ、覚えてないからお仕置きする」


「わ、分かったす! 書きますから! ほら、書いたからやめてくださいっす! ひゃあぁああああ!」


やばい。京都可愛すぎる……もちろん京都が抵抗しようが俺の方が力が強いため、無駄だ。


くすぐりが終わるには、問題を解くしかないのだ。


「はぁ……先輩意地悪っす……仕返しっす! こちょこちょこちょ~」


俺の脇腹を京都が触ってくる。あ~気持ちい~~~京都の手最高……


「あれ、効かないっす……」


「乾布摩擦やりすぎて、くすぐり効かないから。むしろ積極的に京都が触ってきてくれて嬉しいよ。できれば他のとこも触ってほしいな……唇とかさ」


ちなみにまだキスもしていない。京都は思った以上に純情であり、キスをしたいと言っても頑なに拒否される。


もちろん。その先の行為もだ。無理強いする気はないので、今はこうやって京都との時間を大事にしたい。


「なぁぁぁぁに言ってんすか先輩!? ほんと馬鹿なんすか!? 死ぬんすか!」


「冗談だよ。ほら、それより課題を進めよう。ここのやり方は……」


勉強を教え続けて、京都の宿題は終わった。


「あ~~~~宿題全部終わったっす~~~~」


夕方になると勉強疲れもあってか、京都が伸びている。


「お疲れ京都。よく頑張ったな。よしよし」


頭を撫でる。


「もっと私を褒めるっす……ほんとこんな勉強して最強に疲れたっすよ……」


「何かしてほしい事とかあるか?」


「う~ん。組み手ってのも、なんか違う気がするっすし……私達こ、恋人同士なんすから……」


お、もしやこれは誘いか?


「キスするか?」


「しししししないっすよ! 何言ってんすか!!!!」


ちなみにハグまではセーフらしい。


「でも俺は京都とキスしたいぞ。京都が嫌ならしないけどさ。それに京都滅茶苦茶可愛いから……こうやって抱きしめたぁい!」


京都を後ろから抱きしめる。


「せ、せんぱい……それ反則っす……可愛いって……嬉しいっすけど。なんか……」


「何でもするぞ俺は京都の頼みなら」


「そ、っそすか……それじゃ、せんぱい……お、お姫様抱っこ……あーーーーーやっぱなんでもないっす! 忘れてくださいっす! っひゃ!」


今の態勢のまま京都を空中に投げ俺は立ち上がると、両腕で京都にお姫様抱っこする。


「これでいいか?」


「あ、先輩にお姫様抱っこされてるっす……お、重くないっすか?」


「そもそも、京都の五倍とか十倍くらいの物持ち上げあれるから軽すぎるくらいだよ。京都細い方だし小柄だし……それも凄く可愛いんだけど……」


「あ~~~せんぱい……そうっすね、私なんてほんと簡単に持ち上げられるんすよね……ほんと先輩の腕逞しいっすね……どれだけ鍛えればこんな腕になるんすか……血管も浮き出てるっすし」


「血管浮き出るといいものなのか?」


「なんか、がぶって噛みつきたくなるっす。がぶり」


京都が腕を噛んでくる。ちょうどいい刺激が心地よい。


「吸血鬼かよ。吸えるもんなら吸ってみろ。俺蚊に刺されたことないんだよな。よく人間を一番殺してる生物は蚊って言われてるけど、俺蚊にだけは絶対に殺されないぞ」


「先輩の血管硬っ! もし、みんながみんな先輩みたいになったら、人類が蚊を克服したって事っすよね! それに、先輩ぐらい強ければ戦争で武器使わず生身で戦いそうっすし、武器がいらなくなるってことで平和じゃないっすか!」


「いや、そもそも、俺の特訓したら、ほとんどの人類が死滅すると思うぞ。よく考えてみろ。子供の頃にクマと対面したらほぼ死ぬだろ」


「確かに先輩ぐらいじゃないと生き残れないっすね! 人類が平和になればいいなって思ってるんすよ」


「絶対に本気で思ってないだろ」


「そーっすけど。でも先輩の腕やっぱり好きっす……ほんと、力強くて……ずっと触ってたいっす。せんぱい……せ~んぱい……」


京都はずっと俺の腕をすりすりと触り続けた。


やがて、京都が帰る時間になる。


「今日はありがとっす。せんぱい」


「明日からは一緒に学校通おうぜ」


「はいっす! せんぱいと登校~やったやったっす~~~~」


滅茶苦茶喜んでる京都可愛いなぁ……


そのまま京都の夏休みは終わった。そう『京都の課題』だ。


俺の課題は後回しにしたので、結局徹夜で終わらせることになったのである。

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