第31話 カップルドリンク

☆☆☆間接キス


遊び続けて昼になる。当然朝から遊んでいれば腹が減るわけで……


「先輩何食べるんすかご飯」


札森に案内されるまま、遊園地内のレストラン施設へ向かっている。


「俺は基本何でも食う人間だぞ、札森が食べたいものでもいいぞ、ってか、メニュー見たけど遊園地の飯ってすげぇ高いんだな。コンビニで買えばもっと安く済むぞ」


「あーそれはっすね、夢の料金っすよ。こういう場所は夢を見に来てるんすから。あむ……やっぱ甘くて美味しいっす~~~」


と言いつつ札森はチュロスを食べている。シナモン味が好きらしい。美味しそうだな……


「一口くれないか?」


「嫌っすよ。欲しいなら並んでる時一緒に買えばよかったじゃないすか、それに先輩の一口とか絶対大きいし。あむあむあむ」


取られることを恐れたのか、チュロスを平らげた。


「けちんぼ札森……」


「なんすかそれー!」


「でもまあ、俺が食ったら間接キスになるからな、お前照れて全部食ったんだな」


「……は、はい!? そ、そんなわけないじゃないっすか!! 何言ってんすかこのせんぱいは!」


こいつやっぱ照れてる姿可愛いな。


「お前面白すぎだろ……冗談に決まってんだよ」


「は? せんぱいと間接キスなんてできるっすよ? こんなの全然恥ずかしくないんすから! ほんと先輩馬鹿っすね!」


え……?


「じゃあ、先輩。これっす! これ! カップルで一緒に飲む奴っす! 飲みましょうっす!」


「お、おい札森!?」


札森に手を取られて、カフェに入る。店員にカップル限定のジュースを頼み俺達は座った。


「ほ、ほ~ら、せ、せんぱい~~口付けられないんすか? うわ、私をからかおうとして、逆に手玉に取られてざまぁないっすね~~~~ぎゃはははは!」


と言いつつ、札森の顔は真っ赤になってる。


テーブルには一つの容器に二つのストローがある。所謂カップル飲みを誘ってるのだろう。


そもそも間接キスではないけど、こっちの方が顔が近くて緊張する。いや、札森がヘタレてこっちにしたのか……


流石に俺も恥ずかしいが、顔に出せば、札森の言う通り主導権を握られる。冷静を保て……


「俺先に口付けるから、どうぞ」


「せ、せせせせせんぱい?」


ストローに口をつける。あとは札森がつけて一緒に吸うだけだ。


「あれ、もしかして、札森恥ずかしいのか? お前が誘ったんだろう?」


「そ、そんなの当然できるっすよ! 何すか、先輩、そ、そんな安い挑発に乗るわけないじゃないっすか! あはは~~~」


すると札森の顔が近づいてくる。目が泳いでるし顔も真っ赤だ。


「は~~~~わ~~~……わわわわ……せんぱぁい……わぁぁぁぁっ!」


右ストレートが飛んでくる。脳が揺れるが……この程度大したことない。


「どうした。殴って有耶無耶にしようとしているが、お前は未だ口をつけてないぞ。それは逃げだ」


「っくぅぅぅぅ……先輩が硬すぎっす。KOできないっすよ……」


そのまま札森は真っ赤な顔のまま口を近づける。


「わ、わぁ……わぁぁぁぁ!」


そのまま勢いよく札森はドリンクを一気に飲み干した。俺飲めなかった。


「ほほほほ……ど、どうっすか! こんなのなんともないんすよ! 余裕でできるんすよ先輩と! どうっすか! 私の勝ちっす」


何が勝ちなんだよ。


「俺飲めなかったんだけど」


「いいんすよ! はい。これで、間接キスも全く恥ずかしくないんす! 分かったっすか!」


「あーじゃあそれでいいよ。からかって悪かった。札森は、俺との間接キスなんとも思ってないんだな」


「そ、そうっす! そうっすよ! あはははは~あ! そういえばご飯まだでしたね」


「あーそうだな。お前の顔見てたらお腹いっぱいになってきたけど……」


「せせせせせ、せんぱい!? 私の顔でお腹が満たされたんすか!?」


「まぁ、なんか表情ころころ変わってすげえ面白かったぞ」


冗談を交えつつ、適当な軽食を食べて、その後もずっと札森と遊び続けた。

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