第32話 告白

☆☆☆二人で見る奇跡


日が暮れると、遊園地定番のショーが行われるらしい。


札森は見やすい場所を知っているらしく、手を引っ張られて連れていかれた。


「せんぱい。せんぱい。もう少しで始まるっすよ!」


札森はこれから始まるショーにウキウキしている。


「ショー見るより、ジェットコースター乗った方が楽しいんじゃないか? 今なら空いてそうな気がするし……」


「……先輩。ほんっと分かってないっすね~風情っすよこれが、風情! せんぱい。ほらほら、もうすぐ始まるっす!」


すると、遊園地を照らしていた照明は一瞬で消え、更に強い光が輝いた。


「うわぁ~~~やっぱ凄く綺麗っす~~~」


綺麗な照明。浮かび上がるホログラム。美しい音楽。その全てが圧巻なものだった。


なるほど……これが遊園地に行くってことなんだろう。もし、これが恋人と一緒に行っていれば、きっと、ここで彼女の手を掴んで……キスをしたりするのだろう。


イメージをしてみる。恋人の姿を……遊園地の夜。二人で手を繋いで……


『せんぱい……』


だけど、そのイメージの中にいたのは札森だった……


「うわぁ~~~せんぱいも見るっすよ~なんで私ばっか見てるんすか~? そろそろメインっすよ! ぴひゃ~~~~! 凄いっす~~~! うわぁ~~~」


今日一日で札森をずっと見てきた。


前と変わっていないようで、変わっている部分もある。だから……俺の気持ちだって変わることだってあるんだ。


絶叫マシンを全力で楽しむ札森も、できもしない間接キスを強がる札森も、今こうしてパレードに夢を躍らせる札森も魅力的だ。


女子らしい私服を着ると可愛いと思ったし、一日隣にいて楽しかった。俺は俺の気持ちに嘘をつくことはしない。


札森だからなんて、それで俺が止まるわけない。確かに俺と札森の関係は小さい頃から培ってきたものだ。そこには信頼関係もあるし友情関係もある。


だから恋愛関係になることだけは絶対ないと思っていた……


札森が好きだ……ずっと俺の隣にいてほしい。だけど、札森はどう思っているのだろうか……


いや、そんなことを考えても仕方がないか……もし、何かがあればその時はその時……


だから俺は……札森の手を少しだけ強く握った。


花火が飛び交うショーのラスト。


「せんぱい?」


「……札森……いや、京都みやこ……好きだ」


札森……いや、京都に告白した。


「え、確か私に隙ありますっけど、そりゃショーのラストっすから気が緩みますっすねーー」


どうやら俺の告白に気付いていない……?


ショーは終わった……もう一度言おう。理解するまで何回も言うぞ……


「いや、その隙じゃない。京都……マジで好きだぞ」


「好き……? え。どうしたすか急に……」


駄目だ。好きの意味を理解していない!


「……あぁぁ! これだけ言ってなんで分かんないんだ! 全部言うぞ! 俺はお前に惚れた! 好きです! 付き合ってください!」


「……はい?」


京都から何も返ってこない。


「京都。今日一日でお前と遊んで凄く楽しかったし、これからも一緒に居たいって思った。この気持ちは多分恋愛だ。京都……俺と付き合って」


「……無理っす」


だけど、聞こえたのは拒絶の言葉だった。


「え」


〇〇〇戸惑う札森


咄嗟に断ってしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


え……これ私の勘違いじゃないっすよね。確かに先輩私のこと好きって……


ちゃんと付き合ってって、恋愛の好きって……


先輩。私のこと好き……? 告白……え、先輩?


「せ、先輩私に告白したんすよね……え、好きって冗談すか? 冗談っすよね! ほら、テッテレ~~ってするんすよね!」


「冗談でも何でもない。俺は本気だ。本気でお前のことを好きになった」


先輩の顔は微かに赤いっす。照れているのが少しだけ可愛かったりしますけど……それ以上に私が冷静さを失ってるっす!


「え、いや!? 私っすよ。先輩馬鹿なんすか? 私と付き合いたいって……え? せんぱい私のどこに惚れたんすか。私から見ても、私可愛くないっすよ。身体全然大きくなんないっすし、胸小さいっすし、胸小さいっすし……」


自分で言って死にたく成るっす……どうして胸が育たないんすか……


「いや、お前可愛いぞ。照れてるとことか、今日一日お前を見てしっかりと女の子だなって思った。正直。俺、女子に惚れたの初めてだから……」


「そ、そんなの誰でも言えるじゃないっすか! なんなんすか先輩! あんだけモテたいって言ってたじゃないすか! 私なんかでいいんすか!」


「だから、俺に惚れてほしい女はいたけど、それは好きになってほしい女子出会って、好きになった女子は京都が初めてだから……それに、京都が良いんだ」


私が言い……それに名前で呼んでくれるのせこすぎるっす……そ、そんなの、私だって……


「あ、もしかしてさっき頭殴った時。頭おかしくなったんじゃないっすか……?」


「お前のパンチごときで俺がおかしくなるわけないだろ。いい加減俺が京都のこと好きだって認めろ……」


これ、冗談じゃないっす……本気で先輩私のことを……


「む、無理っす!!!! ほんとに無理っす!」


断るしかなかったっす!

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