第30話 一回転するジェットコースター

☆☆☆遊園地到着


札森と一緒に入場口を潜ると、そこはもはや別世界だった。外国のような景観が広がっている。流石遊園地だ。


「凄いな……これが遊園地なのか……」


「どうすか、初めての遊園地は、まだまだ驚くのは早いっすよ! これからが遊園地っすから! 急ぐっすよせ~んぱい!」


札森に手を引っ張られ、流れるままに人の少ない奥の方へ連れていかれる。


「開演直後だと奥の方が凄く空いてるんすよ。だから最初にこの辺のアトラクションをいっぱい乗っていくっす!」


札森の言う通りごった返していた入り口と違い、奥の方は空いていた。あまり列もできてないためすたすたと列が進む。


一回転するジェットコースターだ。


「お、おう。じゃあまずこれからか、結構高いんだな」


「あれれ~せんぱいもしかして怖かったりしますか? 意外と絶叫マシン苦手だったりとか! そしたら、私先輩の弱点知っちゃうって事っすね!」


「まだ苦手か分からないから、そんな調子乗んな」


手刀で軽めのチョップをする。


「痛いっす~~~って」


「そうやあ、こういう一回転するジェットコースターって回ってる最中に緊急停止したら落ちるのか?」


「急に怖いこと言うのやめてもらえませんか? え、ほんと止まったら死ぬっすね」


「あの高さから落ちたら死ぬだろ。いくら受け身取っても下がコンクリかあのレールじゃ衝撃を逃がし辛い」


「まぁ、止まることなんてないっすよ。ジェットコースターっすから! 安全装置だってあるはずっすから」


まぁ、そうだよな。俺の考えすぎだ。


俺達の番が回ってくると札森と二人で座る。肩にかかる安全バーを下ろす。凄い圧迫感だ……


「だ、大丈夫っすよね。途中で止まったりとか……落ちたら死ぬっす……死ぬっす……」


なんで札森が一番震えてるんだよ。絶叫マシン好きなんじゃないのか? 止まったこと想像する。落ちてから数秒の猶予があれば……行けるな。


「大丈夫だ札森。もし止まって落ちても俺が隣にいれば助かる。あの高さならどうとでもなるぞ」


札森の震えた手を掴んで励ました。


「せん……ぱい……」


そのままジェットコースターが動き出す……ガタガタと上に上がっていき、そのまま落ちていく。


「きゃ~~~~~」


結構な速度が出ているな。だけど、このぐらいならクソ親父に滝から落とされた時の方が勢いがあったな。それに、命の安全が保証されてるなら、そんな怖いものではない。


「おぉ……」


だけど、滝の時とは違い軌道がころころ変わる。なるほど……これが絶叫マシンの魅力というモノか……


そして、このアトラクション一番のポイントである、一回転が訪れる。


「せせせせ、せんぱいぃぃぃぃぃ~~~~」


札森は俺の手を痛いぐらいに掴んでいる。そのまま勢いのままぐるりと回転した。


まぁ、当然であるが一番上で止まることはなくそのままジェットコースターは終わりを迎えた。


「はぁ……何とか大丈夫でしたっすね……死ぬかと思ったっす」


「いや、ジェットコースターの事故ってよくある物じゃないから大丈夫だろう」


「そ、それでどうっすか、先輩……ジェットコースター楽しかったっすか?」


「う~ん。まぁビビってる札森の顔見てるのすげえ楽しかった。めっちゃ口大きく開けてたなお前……」


「え、私のこと見てたんすか……? え、そんなに面白かったんすか?」


ちょっとからかいたくなった。


「いや、凄く可愛かったぞ。女の子っぽくて」


「……はぁぁぁ!? わ、私がか、可愛かった!? そ、そんなわけないじゃないっすか!? 何言ってんすか先輩!?」


「冗談だよ。絶叫マシン自体全然平気だったから、他のも乗ってみたいと思った」


「うぅぅ……なんかせんぱい意地悪じゃないすか?」


口を膨らませる札森は普通に可愛い。何度も俺の胸を叩いてくる。結構胸に響くな。


「と、とりあえず。そうやってからかうのやめてくださいっす。私ほんとにかわいくないんすから! そ、それより、先輩。次のアトラクション行くっす! 遊園地は最初で躓いたら全アトラクション乗れなくなるっすから!」


その後も俺達はいくつもの絶叫マシンを乗り続けた、


その間も楽しむ札森の姿から目が離せなかったのである。






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