第39話 勝利の代償
☆☆☆恋人
目が覚めた時俺は自室にいた。
「せんぱい……起きたんすか! 大丈夫っすか……全身骨折していて、大怪我っすよ先輩……」
そして、俺はさっきまでの出来事が夢だったのではないかと、そんな不安があった。
だけど、意識が戻った瞬間に押し寄せる尋常じゃない痛みが、夢ではなかったと物語っている。
痛いというのは簡単だが、京都の前だ。我慢しよう。
「あぁ、こう見えて思ったより骨折してるが軽傷だよ。それより京都」
「は、はいっす……」
「俺はクソ親父に勝ったんだ。そのさ、約束覚えてるよな……」
それだけが聞きたかった。もし俺の記憶が幻覚で、も親父に負けていることもあるかもしれない。
「は、はい……でも、せんぱい。ほ、ほんとにわたしでいいんすか? その、私男っぽいっていうか、その、女の子として見てくれるっていうのか」
やっぱ、京都は自分に女性としての魅力がないことを気にしているんだ。
「大丈夫だ。遊園地で京都のパンツ見て興奮したし、京都はちゃんと女の子として見てるさ」
「……はい?」
すると、京都の顔が真っ赤になる。
「な、なー! 何言ってんすか先輩!? わ、私のパンツで興奮したんすか!?」
「あぁ、蹴りの時に見えたパンツ凄くエロかったぞ。内心パンツ見えてラッキーよっしゃぁぁあ! って凄く盛り上がった」
「はぁぁぁぁぁぁ!? せ、せせせ、せんぱい変態ですか!!!!?」
「いや、男に生まれたからには誰もが一度は思うぞ、好きな子のパンツが見たいと。好きな子のパンツの柄が気になると」
「へ、へへへへ! 変態! せんぱいどうしてそんな変態なんすかぁあぁ! って、蹴りじゃパンツ見えちゃうかもしれないっすから! ぐーっす!」
京都の拳が飛んでくる。当然俺に躱せる力など残ってる訳もなく。
「っぐ! あぁぁぁああ! 痛あぁぁっくない!」
ただでさえ痛みで我慢してたのに、京都の全力は全身に響いた。
「あ、ごめんなさいせんぱい……痛かったっすか……そもそも、全身骨折してるんすから……せんぱぁい……ごめんなさいっす」
ウルウルするの滅茶苦茶可愛いんだけど、身体が動いてたら今すぐ抱きしめてるぞ……!
「俺が京都の攻撃で痛むと思うのか? ただ傷が痛んだだけだから気にするな。それに親父を瞬殺できなかった俺が悪いだけで、京都は何一つだって悪くない。だから、そんな落ち込むな」
「せんぱい……凄く優しいっす……どうしたんすかぁ……」
「そ、そんなの……『恋人』……なんだしさ、そりゃ大切にしたいって思うから」
「せんぱい……あぁぁぁぁあ! もう我慢できないっす! ぎゅーーーー!」
「ちょっと京都……っぐっ! うおおおおおおお! いいぞ、最高だぞ!」
京都は俺に抱き着いた。全身が痛むが、京都の包容。正直言って天国だ。
耐えろ。耐えた分だけ京都とハグできるんだ。
「その、せんぱいの身のお世話。私がしていいっすか……その、こうなったのは元はと言えば私がせんぱいをたきつけたのが原因っすので」
正直に言えば、寝れば骨なんて繋がるし勝手に回復する。病院は嫌いだ。あそこに行けば健康が悪くなる。
怪我なんて放置してれば適当に治るもんだと思っているが、京都が俺に尽くしたいと言ってくれている……
京都にお世話……怪我した意味があったのではないだろうか。
「いいのか……京都」
「そ、その、私。せんぱいの……『彼女』っすから……」
顔を真っ赤にして言う京都。滅茶苦茶可愛い……
「京都に一生世話されたいなぁ……楽園すぎるぞ」
「そ、そんなに嬉しいんすか……わ、分かったす。私頑張るっす……」
こうして夏休みは京都の介護されながら過ごした。
骨自体はすぐに回復したので、日常生活はすぐに送れるようになった。
ちなみにクソ親父だが、骨折もなくただ落とされただけなので、すぐに日常生活に戻れた。
だけどその間も、京都に抱き着かれたり、ご飯を作ってもらったりした。
滅茶苦茶美味しかったし、すっごく癒された。京都天使すぎるぞ……!
俺がここまでして勝ったのに骨折もしてないとかどういうことだよ……クソ親父……
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