第9話 動画配信者への道
☆☆☆新たな行動
サッカー部を辞めて少しの時が過ぎた。相変わらず俺に寄ってくる女子は一人もいない。
だが俺は諦めない。まだモテる可能性がある。そのためには……そのためには……
「それより先輩遊びましょうよ。屋上で私と弁当食べてる時点でモテとは無縁そうっすけど」
今日も今日とて、俺の隣にはこいつがいる。ちなみに一緒に食べてるわけではない。というより、こいつ俺のストーカーかってくらい後をつけてくるのだ。
「なんで屋上までついてくんの?」
「先輩見てると面白いんで、私どこまでもついていくっすから!」
「俺のこと好きなの? 付き合うか?」
「いえ、恋愛的な感情はないっすよ。それ先輩も分かってると思うんすけど……」
当然冗談で言った。彼女もそれを理解している。
「まぁな。俺もお前とキスとか考えたら……」
『セ~ンパ~イッス~キスッス~』
「「がはははは!」」
想像しただけで笑いがこみあげてきたので爆笑する。
「それで、もうそろそろ、先輩が意味のないモテ努力が始まる時間っすよね」
「なんでお前に言わなきゃいけないんだよ。デコピンすんぞおら」
「まぁ、まぁ、今回は私邪魔しないっすから、言ったら楽になるっすよ」
一応案は出ている。
「スポーツができる奴がモテるのなんて中学生までなんだ。高校生になったらスポーツできてもモテないことがサッカー部で証明された」
「そうっすか? サッカーしてる先輩凄くかっこよかったすけど、なんかあのまま漫画の必殺技を先輩のフィジカルなら完コピできると思うっすよ。シャイニングキックとか!」
ちなみに、札森の言うかっこいいとは、異性に対しての『かっこいい』ではなく少年漫画の主人公に対し言うかっこいいと同じだ。
札森の感性は小学校から何一つ変わっていない。少年の心を持っている。
「あのままサッカーを続けても俺はモテなかった。むしろあまり活躍していない河野がモテてたからな」
「あーほんとあれなんなんすかねー」
「いや、俺に言われても……ということで、運動できる男はモテない。だったら何がモテるか分かるか……?」
とりあえず札森に聞いてみる。
「喧嘩が強い男っすね!」
「そしたら今頃俺はハーレム築いてるわ、中学時代女子一人も寄ってこなかったんだぞ。モテねえよ腕っぷしの強さなんかあっても。だから人は殴らない」
中学時代の失敗である。そのせいか、俺自身暴力は嫌いだ。振るって傷つけることはしたくない。(親父は自衛のため仕方がない)
「じゃ、わかんないっすよ~!」
札森は馬鹿だ。知能も小学生と変わらない。いや、それよりひどいかもしれない。
「っふ、まず俺は勉強ができる。努力したからな……その結果女子に勉強を教える機会もあったし、会話の話題にもなる。だけど、モテるまでは行かなかった。そして……ある結論に辿り着いたんだ」
「そっすかーだからせんぱい眼鏡なんすね~視力良いのに~」
すげえ興味なさそうな顔すんなよ。
「金を持ってる男がモテるんだよ。よくよく考えればそうだよな。なんで早く気付かなかったんだ」
「確かに! お金持ってたらおかし奢ってもらえるっすね! 駄菓子買い放題じゃないっすか。でも先輩金ないっすよね。小遣いも少ないですし」
俺の小遣い環境はクソ親父にせがむと、なぜか『力尽くで奪ってみろ』と言われ、戦いになる。そもそも、リスクがでかすぎるし全身が痛くなるのでせがむこともなくなった。
「おいおい、俺達は高校生だぞ札森。だったらできることがあるだろう」
そう、もう親にせがむことなんてなく、自ら金を稼ぐことが出来るのだ。
「……あ!」
「動画人気配信者だ」「アルバイトっすね!」
☆☆☆人生初めてのゲーム
意見が違った……アルバイトあったじゃん……
「え、せんぱい動画配信者になるんすか? え、無理っすよ先輩話クソほど面白くないっすし」
「ゲーム実況配信をやろうと思うんだ。あれなら、ゲーム流して適当に喋ってれば投げ銭貰えるし、かっこいい事言えば、女子からモテるだろう」
「……がはははは! 先輩がゲーム実況配信とか絶対無理っすよ! 大体先輩ゲームできるんすか? やったことなさそうっすけど」
あのクソ親父が俺にゲームを買い与えることなんてないので、未経験者だ。
「経験ないな。でもゲームって言わば反応速度が物を言わせるんだろ? 俺の反応速度は恐らくプロゲーマー以上だ。相手が攻撃してくるより先に反応出来れば俺が勝つんだよ」
「えーじゃあ、せんぱい一旦やってみてくださいよ。それで私評価しますから」
すると、札森がスマホを取り出し俺に渡した。ちなみに俺はなんかよくわからん機種のスマホを買い与えられており、必要最低限の連絡しかできないクソスマホだ。ゲームなんてやったもんには固まる。
「これは今流行ってる相手を銃で撃ち殺すFPSって奴っす」
「へぇ、お前のスマホ画質いいな。うわぁ……なんだこれ、素手でできないのか?」
「銃で撃つゲームですから。ほら、せんぱい敵が来ましたよ! ぶっ殺してください」
目の前に対戦相手の敵が出てくる。こちらに狙いを定めたな……よし突撃だ……。
「えっと、これかな……」
「先輩何を……壁に隠れないと!」
「うおおおおおおおおおおお!」
『you lose』
俺は三人に銃殺される。そして、死亡した……
「先輩馬鹿なんっすか? 三人に弾道向けられて突撃する人いないっすよ」
「あれ、避けられると思ったんだけどな……」
「ゲームキャラがせんぱいと同じ動き出来ると思わないでくださいっすよ!」
「なるほど、ゲームキャラが俺の反応に追いついてないのか、あのぐらい普通に避けられると思うんだけどな」
実際銃を相手にしたことないから分からないけど……
「いや、銃乱射されて避けるのは人間じゃ無理だと思うんすけど……でも、せんぱいならできそうっすね」
その後俺は真面目にFPSをやりこんだらそこそこ才能があったらしく、フリーマッチで最後の一人になった。
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