第8話 サッカー部辞めます!

☆☆☆諦め


試合が終わり控室。みんなで特訓したおかげか簡単に勝てた。


「とりあえず初戦突破だ! このままの調子で行こう!」


「なんか俺めっちゃモテたんだけどなんだったんだろう。普通長田コールが起きるはずだろ、あの活躍っぷり」


「いや、それは俺が一番謎に思っている。なんで俺そんなコールないの……頑張ったのに……」


正直に言えば酷く落ち込んでいる。そして俺は決断した。言うなら早い方が良いだろう。


「「「「監督!」」」」


「よくやったぞ。長田。ワンマンプレーだったが、圧勝だったな……次は」


「監督。俺サッカー部辞めます」


「「「「「えーーーーーー」」」」」


部員も監督も声を上げる。


「おい、長田! なんでやめるなんてことを、いやな要素とかあったのか? お前は逸材なんだぞ急に辞めるなんて何故だ……」


監督も俺を引き留めようとしているが……


「……俺の声援一個もなかったじゃないですか……あんだけ頑張ったのに……」


「お、落ち着け長田。確かに不自然すぎる河野コールしかなかったが、それでやめるというのは……大体お前は何のためにサッカーを……全国に行きたくないのか? お前は全国に行ける逸材なんだぞ」


「モテたいからに決まってますよ! 賞賛されたいからやってるのに、サッカーやったらモテるって聞いたからサッカーやったのに……モテないじゃないですか。俺分かるんですよ、このまま県大会優勝しても俺の声援ないって……」


「え」


「ということで、俺は本日をもってサッカー部辞めます。今までお世話になりました」


こうして俺は引き留める仲間の声を無視してサッカー部を辞めた。


「せんぱーい。ぎゃははは……ぎゃははは! あんな頑張ったのに一個も声援ないって逆にすごいっすよ! それとカミイレの技真似した時は素直にすごかったっす!」


ユニフォームを脱ぎ捨て、控室を出た後。一人帰ろうとすると札森がついてくる。


こいつだけは俺のこと応援してたな。


「俺サッカー部辞めるから……サッカー部モテないじゃん……」


「そうやって不純な動機でサッカーやってると女子とか気付いちゃうんですよ。女子からの意見です」


「お前女子だったのか……じゃあ、恋愛相談とか受けてくれるわけだな」


「当然っす。女子はとりあえず肉とご飯食べさせてくれればモテるっすよ」


んなわけあるか。それお前だけだろ。


「とりあえず、お前に恋愛相談することは絶対ないと分かった」


「うぅ~私女の子っすよ! ほら胸だって……胸だって……」


こいつの胸はぺったんこだ。何もない。びっくりするぐらいない。


「ないものをあると言うなと、昔道場で習っただろう。くだらない夢を見る――」


「ま、胸なんてあっても邪魔なだけなんすけどね~とりあえず先輩が部活やめるなら、私も部活辞めるっすー」


お前はそれでいいのか……俺達はそのまま会場を後にした。


ちなみにこの後の二回戦で敗退したらしい。もうサッカー部やめたから関係ないけど。


△△△数週間後


天鶴が辞めた後。炎帝学園部長ミツルが部室へ訪れる。


「え、炎帝学園の人がなんでこのサッカー部に来ているんだ」


「河野雄一はどこにいる?」


ミツルはサッカー部員に話を掛けた。


「あっちにいますけど……」


河野の方を指さす。しかしミツルの求める河野は天鶴だ。当然違うため首をかしげる。


「え、河野だぞ。ふざけているのか? 以前の県大会一回戦で活躍したあの男だ! 彼と一騎打ちを望みたい……」


「あぁ、彼は長田ながたくんですよ。ほんと凄かったですね彼」


「河野ではないのか……。永田ながたというんだな。そうだ。今すぐ彼をここに連れてきてほしいのだが――」


「――彼なら一回戦後にサッカー辞めましたよ」


「なにぃぃぃぃぃ!」


すると河野がやってくる。


「あ、炎帝の部長じゃないですか、どうもです」


「君。永田という部員を知っているか? もし同じクラスなら呼んできた欲しいのだが」


「……(永田なんて奴いたっけ?)いいや、俺のクラスには永田なんてやついませんよ、何か勘違いしてるんじゃないんですか?」


「……(彼は俺達サッカー馬鹿が見た幻だったのか……?)」


そして、炎帝学園はこの後天鶴と会うことはなかったのである。


サッカー部編完!

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