第26話 福引き
☆☆☆一緒の帰り道
結局数日が経つが悩み晴れないまま、放課後になった。
このままでは本当にダメだと判断して思い切った行動をしてみる。
「ふ、札森。一緒に帰らないか?」
「え、せ、先輩が誘ってくるんすか……」
「ダメか?」
「それは……いいっすけど……う、嬉しいっす……」
「そ、そうか……」
前は俺が断ってたのに、札森と一緒に帰っている。
しかし、今までと違って会話が盛り上がらない。ただただ気まずい時間が続いていく……
どうしよう、普段札森とどんな会話してたっけ……いや、むしろ札森の方から話題を振ってくれているから分からない……
「そ、そういえばっすね、せんぱい。私商店街で買ったもので福引券あるんすよ。二枚。一回引きますか?」
札森が話題を振ってくれた!
「あぁ、俺そんなくじ運ないと思うから、ティッシュ出ても文句言うなよ」
「大丈夫っすよ。どうせ私もティッシュっすから」
「そうか……じゃあ、商店街寄るか」
「はいっす……先輩。先輩……もう少し近くによっていいすか……」
すると俺にくっついてくる。離れろと言おうとしたが、やめた。
むしろ、なんだろう。札森と距離が近い方が居心地がいいような気さえする。
だけど、絶壁の崖を駆けあがった時のような心拍数になっている。
街の商店街へ足を運ぶとそこそこの列ができている。
えっと、特賞が遊園地のペアチケットで、後は商品券や自転車とかだ。
「先輩。遊園地あるっすよ」
「いや、無理だろ。ティッシュ出るに決まってるだろ。賭けてもいいぞ」
「そんな夢のない事言わないでくださいよ。遊園地行きたくないすか?」
「いや、遊園地行ったことないから楽しいのが分からないんだよ」
あのクソ親父が遊園地なんか連れていくわけないのだ。
「確かに虎徹さんは連れて行ってくれないっすよね。すっごく楽しいっすのに、今せんぱい賭けてもいいって言いましたっすね」
「あぁ。言ったが、小遣い寄こせとか言うなよ」
「はいっす。じゃあ先輩が遊園地のチケット当てたら、私がもらうっす」
「いいぞ、勝手にしやがれ」
そのまま俺達の番が回ってくる。どうせティッシュだろう。
「じゃあまず私からっすね!」
ガラガラを札森が回すと出た色は白。つまり……ティッシュである。
「ほらやっぱりティッシュだ。こういうのは二枚じゃ当たらないんだよ。福引券大量に持ってる人が当ててこそ釣り合うってものだ」
「うぅぅ……そんなに言わなくてもいいじゃないっすか」
さてと、俺の番か……どうせティッシュだろう。
ガラガラを回すと出た色は……金。え?
「おめでとうございます! 遊園地ペアチケットです!」
……マジか。俺こんな福引で一生分の運使い切ったのか……
「せんぱいすごいっすーーーーー!」
☆☆☆ペアチケット
俺は遊園地のペアチケットを受け取る。
「せんぱい。すごいっす。すごいっす! まさか本当に当てるなんて思わなかったっす! ほんとすごいっすよこれ!」
札森は凄くはしゃいでいる。
「賭けは札森の勝ちだ。ほらペアチケットだ」
札森に景品のチケットを渡した。
「ありがとうっす~せんぱい!」
多分札森は宮藤さんと行くのかな。遊園地ってどんなところなんだろうな。
「じゃあ先輩夏休みになったら一緒に行きましょうっす!」
思ってもない誘いに驚きを隠せない。
「……え、俺が? いいのか?」
「先輩が当ててくれた遊園地のチケットなんすから、一緒に行かないとっす」
「でも、賭けに勝ったのは札森だし、そのチケットも札森のだから……」
「もーーー! だから、私が先輩と行きたいんすよ! だから、夏休み一緒に行くっす!」
……俺と一緒に行きたいのか……俺と……
「分かった。でも、俺本当に遊園地とか分からないから。そこはよろしく……」
「はいっす……先輩と遊園地。先輩と遊園地……っす!」
「お、おう……」
札森が凄く喜んでいるので、こっちまで嬉しい気持ちになってきた。
夏休み……少し楽しみになった。
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