第25話 呼び出し
☆☆☆下駄箱の手紙
ふはははは! 補習はあったけど、俺やっぱモテるんだ。『校舎裏で待ってます』と言う手紙が下駄箱に入っていたぞ! なんかデジャブだけど……きっと今回は本当の告白だろう。
まったく、モテる男は辛いな。勉強できなくてもモテんだな!
でも、もし呼び出された子に告白されたとして、俺は付き合うのだろうか?
以前は考えることもなかったのに、なぜか俺の心にブレーキが生まれたのだろう……う~ん……
そして、放課後校舎裏に向かうと……
「せんっぱい! どういうことか説明してくださいよ!!!!!」
宮藤さんだった。流石に俺だって馬鹿じゃない。これが告白じゃないことは分かった。だけど何故だかほっとしている自分がいる。ほんとになんでだろう……
「え、なんのこと、俺のテスト結果もしかしてバレた?」
「そんなことどうでもいいんですよ。それよりも、札森さんに手を出したって本当ですか!!」
俺のテスト結果どうでもいいのか……
「え、手を出したって、流石に手加減してるし怪我させないつもりでやってるよ」
受け身だってしっかり取らせるように落としている。
「け、怪我!? そんなの当り前ですよ! でも、札森さんされるがままだって……」
「そりゃ、されるがままだろう。札森じゃ、優位に立てないだろう」
「は、はぁぁぁぁ!? その言い方だと既に何回もやってるってことですよねぇ! え、せんぱい!? ゲス男ですか!?」
「まぁ、テスト期間中は教え込ませるのにやったけどさ、なんでゲス男なんだ?」
何故か宮藤さんは激情してる。今にも俺に殴りかかってきそうだ。怖い。
「はぁ……!?」
「ぼ、暴力は良くないよ宮藤さん。お、俺は宮藤さんが怪我するところ見たくないから!」
多分俺のこと思い切りぶん殴ったら宮藤さんの腕が折れる。
「許さない……赦さない……札森さんの純潔を奪って……殺す。殺す。殺す……」
突然滅茶苦茶なことを言いだした。
「ちょっと落ち着いて。あいつの純潔って何!? 宮藤さん! 宮藤さん!? 俺はただ札森の勉強教えただけだ!」
「そうやって、札森さんを滅茶苦茶にしたんでしょう! 最近調子悪いのも全部全部あなたのせいじゃないですかぁぁ!」
素人の拳なんて簡単に避けられるのだけど、このまま避ければ宮藤さんが転ぶ可能性がある。
だからワザと殴られることにした。厳密には殴られた瞬間身体を反らすことで、宮藤さんの腕にもダメージは行かないようにする。
「――」「あれ?」
だけど、素人では気付くことはない。何事もなかったかのようにふるまった。
「とにかく落ち着いて、宮藤さん。何か勘違いしているよ……」
その後。宮藤さんに勉強法のことを説明したら、納得してくれたようだ。
「ほんっと……ごめんなさい! 私の早とちりでした……」
物凄く謝罪される。
「いいよ、それより俺を殴って怪我なかった? 宮藤さんの方が心配だよ」
「殴った方の心配する先輩何者なんですか……特に痛いところはないです。むしろ衝撃がなかったというか……」
宮藤さんはかなり申し訳のない気持ちで溢れかえっているはず。
だったら……
「もし、申し訳がないと思うのならさ、宮藤さん。お願いがあるんだけど……」
「お願いですか?」
もうなりふり構ってはいられない……
「うん。じゃあさ、宮藤さん……そのお詫びしてほしいんだけど……」
☆☆☆お願い
「その、私にできるお詫びならします。でも付き合うとかそういうのは無理ですから」
「流石にそんなことは要求しないよ……そんな無理矢理付き合っても長く続かないだろうし、それより、相談に乗ってほしいんだ。最近ずっと札森のことばっか考えてるんだよな……勉強も集中できなくて……」
「……」
宮藤さんがフリーズした。
「……はぁぁぁぁぁぁ!!!(この人も気付いてないの!?)」
「もうそれって完全にそういうことですよ! もうそういうことだから! せんぱい馬鹿なんですか?」
「あぁ、歴史のテスト0点だったから俺は馬鹿だと思う」
「なんで0点なんて取るんですか! カンニングでにしたんですか?」
「いや、答案用紙の項目すべてに『札森』と書いてしまった……」
「っぶーーーー」
すると宮藤さんは吹き出した。
「そ、そんなことって本当にあるんですか……? (もう札森さんで頭一杯じゃん)」
「だから本気で悩んでるんだよ……勉強も手付かずて……そのあいつには内緒で頼みたいんだけど……」
そして俺は札森のことを一瞬可愛いと思ったことを宮藤さんに話す。
「……(もう確定じゃん)」
「とりあえず。せんぱいはこの状況をどうにかしたいんですよね」
「うん」
「とりあえず。札森さんとの関係が気まずくてどうにかしたいなら、先輩がどうにかする必要があると思うんです。その悩みを正直に打ち明けるべきだと思いますよ」
「あぁ……」
何て真摯に話を聞いてくれるんだろう。
「先輩は最終的に札森さんとどうなりたいんですか?」
「え? う~ん……分からないな……」
「まぁ、気持ちに整理がつかないのは当然ですが、札森さんだっていつまでも子供じゃないんです。そのことを胸にとどめておいてください。話は以上です」
「分かった……ありがとう」
それだけ言うと宮藤さんは帰っていった。
札森とどうなりたいか……一体それはどういう意味なのだろうかさっぱり分からなかった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます