第14話 ヤバスギ様の祟り
☆☆☆祟り
滝から二人を下し安全な場所へ連れていくと俺は儀式のあった滝上へ戻ってくる。
「あ、せんぱいこんなところにいたんすか~何さっきすげぇ見どころあったんすよ。まさか滝からダイビングするとか、結構この村体育会系っすよね~」
お前は、これを体育会系の乗りで片付けるのか……いや、こいつの場合俺が基準になってるから、滝から落ちることが死と繋がってないのか。
「せんぱいせんぱい。私もダイビングしていいっすか?」
「やめとけ、飛び込んだ人は特別な訓練を受けているんだよ。お前滝のダイビング訓練してないだろう」
「そっすね~でも、先輩は虎徹さんにやらされてたんで、できますよね」
まぁ昨日やったんだけどな。
しかし、この村の連中は人が死んだのに何でこんな喜んでるんだよ。今年は豊作とかそういうことばっかり言っている。げらげらを笑いやがって。薄気味悪いな……まぁ、二人共生きてるからいいんだけど。
とりあえず、宴が行われるらしくて、俺達はそこに一緒へ向かう。敵意をむき出しにしていないのか、村人とは良好的な関係を気付いている。(表面上はだけど)
「「「「ヤバスギ様~ヤバスギ様~」」」」
宴が行われる中、何かが襲来するような凄い音がした。地面が揺れるような、凄い振動だ。
何かが此方に押し寄せてくる。それは村人も同じように気付いたらしく、騒がしくなった。
「いったいこれは……何が起こって。まさかこれは……」
「「「「「ヤバスギ様の祟り!」」」」」
……え、本当に祟りが起きるのか……
「ひゃは~やばいっすね~ヤバスギっす~せんぱいどうするんすか? 何か来るんすか?」
でも、この感じ、肌で何かを察した。経験からして、この振動の正体は……
「イノシシの大群だ……」
「え、イノシシの大群すか!?」
すると、イノシシの大群が姿を現し、虚闇村の宴を悉く破壊していった。
悲鳴。悲鳴。悲鳴。イノシシを退治しようにも、足腰弱った老人達の同調圧力の塊では猪突猛進に敵うことはない。
吹き飛ばされていく。壊されていく。もしこれがヤバスギ様の祟りだと言うのなら……
だから俺は……
「札森は安全なところで撮影しとけ……分かったな」
「あ、せんぱい。やるきなんすね! 頑張ってくださいっす!」
そのまま俺は暴れまわるイノシシの大群の元へ走って行く。
この動画を繭浦さんに見せたら約束果たした証拠となるし。
そしたら、きっと繭浦さんも俺に惚れて告白すること間違いなしだ……ははは!
☆☆☆イノシシの大群
イノシシの力は人よりも断然強い。流石野生で育っただけあるな……
「河野さん?」
「あんたらは、ここで下がってろ……俺がどうにかする!」
そのまま俺はイノシシ数体と力比べをした。
「っぐ……! うおおおおおおお!」
数体ぐらいならどうにかなる。だけど大群だ……でも、こう考えればいいのか……飯がいっぱいあると。
イノシシ普通に食っても美味い。よく子供の頃ひっ捕らえて食べたなぁ……
「凄い! 河野さん一人であのイノシシの相手している……!」
「うおおおおおおおおおお! オラァ! オラァ! オラァア!」
イノシシひっくり返し、そのまま拳を思い切り叩き込んでいく。一撃で気絶させて行った。
後はそれを繰り返していくだけでどうにかなる。何度かイノシシに突進されるが、それで体勢が崩れるやわな体幹をしていない。
「うおおおおおおらぁぁぁ!」
やがて、イノシシの数は減っていく。するとイノシシは立ち去っていた。
「凄い……河野さんがイノシシの群れを一人で追い払った……」
「「「「「河野! 河野! 河野!」」」」
そして、追い払った俺は一種の英雄として扱われたのだが……
☆☆☆敵対
正直、村人から賞賛されても何一つ嬉しくないんだ。これで、この村に対する義理も果たした。イノシシの群れはもう来ないだろう。それに、もうこれ以上の撮れ高は存在しない
「これも全てヤバスギ様があなたに力を与えてくれたおかげなのです」
「いや、俺の力」
「「「――――」」」
もう同調圧力に屈する必要はない。
「俺達はこの村を出ていきますから、昨日はお世話になりました」
「――そうはさせません。貴方達はもうこの村の住民です。きっと素晴らしい生活が送れますよ」
「いいえ、この村には出会いがないので俺は住みたくないです。いくらご飯が美味くても、俺は顔が良い女と、スタイルの良い女がいない、踏みとどまりませんよ!」
「「「えぇ……」」」
「ですが、残念ですね。いくらあなたの力が優れていても時期に……」
恐らくこいつらは俺に睡眠薬を持っただろう。何回か意識が飛びそうになったが、そのたびに顔を殴って意識を回復させている。
「睡眠薬を持ったつもりなら俺には効きませんよ」
「……気付いていた……だったら力づくで」
「この人数ぐらいで俺を止められると思いますか?」
「いいえ、その必要はありません。一瞬で終わります」
すると、村人が手を挙げる。その瞬間殺気が……これは――
すぐに後ろに飛ぶと、ドカーンと激しい音がした。
これは……猟銃だ。
「死角からだったはずなのに……どうして避けたのですか!?」
「……これは俺達を怪我させる気でやってるってことでいいんですよね」
流石に足を撃たれれば怪我するだろう。俊敏性も落ちる。
今の銃声でどこに相手がいるのか分かった。まずそっちをすぐに黙らせるか!
「え……」
狙撃手は此方に数秒で来るとは思っていなかったのか、驚きを隠せない。
そのまま銃を奪い去り真っ二つにへし折った。
「っひぃ!」
正直人に暴力は振るいたくないので、圧倒的力の強さを見せつける。
「――こんなもんで俺を殺そうとしているのか? 熊は殺せても俺は殺せない。俺を殺すなら、ミサイルでも用意することだな!」
これだけ言うと村人は俺に対する敵意がなくなった。
よし、これで大丈夫か。
「じゃ、俺達は帰る。文句はないよな?」
「は、はい……」
こうして俺達は虚闇村を離れることとなる。
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