第42話 放課後デートの先で

☆☆☆学校で


「よ! 長田久しぶりだな、お前怪我してるって聞いたけど大丈夫だったか?」


そう、夏休みに河野に誘われていたのだが、身体が動かないので断っていた。


「悪いな……ちょっと全身骨折してたから、でもさ、夏休みで俺。彼女が出来たんだ!」


「……」


何故か河野がフリーズした。


「……おい、どうして彼女出来てるんだ? しかもその前に全身骨折って……どういう経緯でそうなったの?」


親父のことは端折って京都と恋人になったことを話す。


「あー結局二人付き合ったんだな。お似合いなんじゃないか」


「そりゃ当然だろ。俺と京都だぞ」


「前まで恋愛感情ないとか言ってたのにいざ、好きになったらあっという間だったな。おめでとう」


ほんと、ここまで来るのにあっという間だった気がする。


「ありがとう……」


「ところで、長田はどこまで進んだんだ?」


「いや、まだ手を繋いだところだぞ。キスしたいって言っても拒否られてるから」


「札森さん随分と純情なんだなー」


「まぁそういうところも可愛いんだけどな」


どや顔しておく。


「それで今日の放課後デートする予定なんだが……どうしたらキスまでもっていけるか河野は分かるか?」


「そういうことなら任せろ!」


☆☆☆放課後デート


京都と下駄箱で待ち合わせをしていた。


「せ~んぱい! せんぱいせんぱいせんぱい~~~」


京都が後ろからタックル顔負けの勢いで抱き着いてきた。一般人ならこれで突き飛ばされているが、俺なら当然受け止められる。


「京都来たか。よしデートするぞ!」


「はいっす! デートデート……! そういえばどこへ連れて行ってくれるんすか?」


「一応ショッピングモールに行こうかなって思ってるけどどうだろうか」


これも河野からの提案だ。


「ショッピングモールっすか、何か買いたいものでもあるんすか? せんぱい」


「いや、ただ京都と一緒にいろんなもの見たいからさ」


「先輩……ほんと私のこと好きなんすね……えへへ~~~」


くそぉ……照れてる京都可愛いな……


「じゃ、行こうか京都。制服デートだ」


「はいっす!」


こうして俺達はショッピングモールへ向かう。


△△△悪の地球外生命体


ここは世界征服するために暗躍し続ける宇宙からの侵略者『ネガロス』の基地。


幹部たちは今日も密かに世界征服のための計画を会議していた。


「ほほう、この地球には『ヒーローショー』というモノが存在しているのか」


『ヒーローショー』それは、日曜の朝にやってるヒーローが現れて、悪い奴を懲らしめる、勧善懲悪の舞台。


「つまり、このヒーローショーを台無しにすることが出来れば、我らが『ネガロス』は世界の脅威となりえるわけだ。子供共の楽しむ顔を想像するだけでわくわくしてきたぞ……ククク」


「どうやら、近くのショッピングモールでヒーローショーがやるらしい。まずは手始めに、レッドの中に入ってるやつに下剤を持ってやろう……これで、ヒーローショーは開催できなくなるはずだ……ふははははは!」


「「「「はははははは!」」」」


☆☆☆ショッピングモール


「着いたぞーデートだ!」


俺達はショッピングモールに着くと、京都はとあるポスターが目に入ったらしく駆けていった。


「へーせんたい戦隊センタイジャーショーやるんすか!」


「あー京都確かこういうの好きなんだっけ。見に行くか?」


「え、いいんすか? せんぱいこういうのあんま興味ないかとおもうんすけど」


「京都が好きだってもの理解し合えたらいいなって思うんだ。分からないから教えてほしいんだけど」


「もう~~~せんぱい~~~実はこのシリーズもう四十年も続いていて、最近だと若手俳優の登竜門にもなってるんすよ。やっぱ日曜朝はセンタイジャーと覆面ライター見ないと始まんないって言うか、元気の源って言うくらいで、だから駅伝とゴルフは許せないって思う所でっすね……」


う~ん。何言ってんのかさっぱり分かんない。


「今度京都が好きなシリーズ教えてもらっていいか?」


「はいっす! 一緒に見ましょうっすよ!!!」


やったー京都と一緒に居られる……どさくさに紛れて胸を揉もう。


時間を見るともう少しでヒーローショーがやるらしい。


「とりあえず会場に向かうか、ここから少ししたら――」


「体格よし、骨格よし……あのーすいませんそこのお兄さん」


すると、かなり慌てている三十代くらいの女性が俺に話を掛けてきた。


「えっと、俺のことですか」


「はいはい、そこの見た目凄く強そうなお兄さんです。運動は得意ですか?」


「あ、先輩もしかしてこれスカウトってやつじゃないすか? せんぱいアイドルデビューしちゃってくださいっすよーぷっーくすくすくす……」


「そんなわけないだろ。俺がアイドルなんて似合わないの一番分かってる。えっと、はい。運動は一通りできると思いますよ」


「えっと、アイドルのスカウトではないんですけど、その、私こういう者で」


渡された名刺には渡辺と書かれてあり、このショッピングモール責任者だ。どうやらヒーローショーの運営を担当しているらしい。


「その、お願いがあるんです! その、これから行われるヒーローショーでレッド役の人が体調不良になっていて、本番に出られる状況ではないんです。そこで体格もばっちりのお兄さんにお願いしたいんですけど……もちろん給料はお払いします。どうかお願いします」


つまり俺にセンタイジャーのレッドをやれと言うことか……いや無理だろ。


「……えっと、いや、俺ヒーローとか分からないですし、俺に務まるとは思えないんですよね、そもそも俺今デート中でして……あ、俺の彼女です。めちゃくちゃ可愛いですよね」


京都とデート中だ。そっちを優先したい。


「あー……そうですよね。突然話しかけて申し訳ございません。他の人を探します……」


渡辺さんが別の人を探そうとすると、京都がつぶやく。


「えー先輩のレッド見たかったっす。絶対『かっこいい』と思ったのに…‥もったいないっす――」


「――レッドやります」


京都が俺をかっこいいと言ってくれるだと……そんなのやるに決まっているじゃないか!


「え……でもさっき断って」


「大丈夫です。俺ならできますから。多少格闘技には精通してますので」


「ありがとうございます! それでは控室に来ていただいて……あ、彼女さんも特等席でどうぞ!」


こうして俺は右も左も分からないヒーローショーに出ることになった。

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