第12話 貴方とまた会えたなら
成瀬先生、私に傘を差してくれてありがとうございました。
先生が亡くなってから日が経つにつれて、貴方を忘れていく恐怖に襲われていました。
人は人を忘れる時、一番最初に声を忘れるそうです。
生前、先生が言ってたこと。
「みんなに覚えていて欲しいとは思わないんです。ただ、残しておきたくて。」
私は貴方の声を忘れてしまいました。
動画越しに聴こえる雨音混じりの声ではなくて、貴方の優しい声を。
ごめんなさい。
あなたが見せた悔しそうな悲しい顔も、楽しそうに笑う顔も、愛しそうな顔も、、
私は見ることが出来なかったから。
そんなことに気づいたら、生きていることが辛くなりました。
だけど、、
この先何があっても成瀬先生の光は忘れないと思います。
貴方の温かさは忘れないと思います。
2年越しの先生の言葉がそれを思い出させてくれました。
貴方の言葉は本当に色んなものをくれました。
私、先生のことがとても羨ましかったです。
弱音も吐かず、いつも人を見ていて、言葉をくれて。
強い貴方が羨ましかった。
綺麗な光を持つ貴方が羨ましかった。
先生の言葉はいつも私の胸に一直線に突き刺さるんです。
何の汚れもない、その綺麗な言葉が羨ましかった。
だけどとても心配でしたよ。
色んな人に傘を差し続けて、貴方を雨から守ってくれる傘はあったのですか?
貴方に降り注ぐ雨はどんな強さで、どんな雨だったのですか?
生きている間に止むことはあったのですか…?
私はたくさん救ってもらったのに、先生のこと何も知りませんでした。
ごめんなさい。
いつか私に『言葉をよく見てる』と言ってくれましたね。
自分ではそんなつもり全然なくてびっくりしました。
とても嬉しかったです。
見えない私でも、ちゃんと見えてたんだって。
本当にありがとうございました。
最後にもう一度、
あの時はちゃんとした言葉で伝えられなかったから、この場で。
先生のことが好きでした。
貴方の温かい光がずっと好きです。
先生の優しい言葉が好きです。
私には貴方との思い出が沢山ありました。
手を差し伸べて心配してくれる友人がいました。
強く生きたい。成瀬先生のように。
また、どこかで会えたなら
その時は傘を閉じて、虹を見ましょう。
羽乃 美織
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【人物まとめ】
羽乃 美織…顔が見えない子
成瀬 綾人…忘れられない光を持つ人
この世界の綺麗なところで、 桜空 ゆうき @Kigaya
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