第2話 貴方が生きた証



拝啓、温かさをくれた貴方へ。






綾人くん、僕への言葉をどうもありがとう。






会えなくなってから二年が経とうとしている今、僕は病院の院長を無事継ぐことが出来ました。



今日も沢山の子供たちや患者さんと話して、忙しいけど楽しい毎日を送ってる。


そんな日常に綾人くんが居てくれたらどうなってたのかなって、よく考えたりもする。


きっと忙しい僕を気遣ってご飯に誘ってくれたりしたのかな。

温かい笑顔で子供たちと笑ってたかなって。






そんな未来はもう来ないのに。







だけど、どうにも忘れられないんだ。


君との思い出を振り返る度、綾人くんが生きていた未来を信じていたくなる。

それはとっても苦しくて、辛くて、悲しいけど、

僕の大切な生きる糧になった。








初めて会った日からずっと不思議な子だと思ってた。



僕は医者という立場で余命宣告をして、ご両親が悲しんでて。

まだ中学生という若さだったし、君自身も悲しかったと思う。



綾人くんは「大丈夫」って笑ってたよね。


本当に強い子なんだなって思った。

同時にずっと心配だったけど。




だけど、それから五年くらいたって病室で一人、泣いてたのを見た。

泣いているところを見たのはあれが初めてだった。


お見舞いに来た人や看護師さん達に気付かれないように静かに肩を震わせていて、見ていてすごく…苦しかった。



あの時優しく抱きしめてあげられるような勇気が僕にはなかった。

本当に後悔してる。ごめんね。



綾人くんの平気な振りに気づけなくてごめん。




動かせなくなっていく身体を見てきっと悔しかっただろうし、居なくなってしまうこともきっと怖かったと思う。


普通の子供と同じように生きたいと、ただ願っていただけなのに。

どれだけ辛くても、苦しくても、笑ってたよね。

君は本当に優しい人だった。

その笑顔に、優しさに、何度も何度も救われたよ、ありがとう。









僕は絶対、綾人くんを忘れない。













成瀬 綾人が生きた証は、僕の中にある。






僕が持つ記憶も、君に貰ったたくさんの言葉も、僕自身の心も、









そのどれもが君が生きた証。









たくさんの思い出で、君をまた探すから。







その時はまた、あの温かい笑顔を見せてね。










また、ね。













和月 悠里










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【人物まとめ】

和月 悠里…成瀬の主治医、医院長

成瀬 綾人…温かさをくれた人

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