第18話 残された僕を訪ねに来た人

彼女との再会と別れから一週間、


ついに僕の足は動かなくなり、車椅子生活を余儀なくされた。


幸いにもバリアフリー式の建築が施されたこの園では生活に不自由なことはほとんどない。


「…これは事務室か。」


事務室に資料を渡しに行く。

周りの支えのおかげもあり僕はまだこの園の職員として働かせてもらっているのだった。




「ありがとう、成瀬くん。そういえば玄関に成瀬くんの知り合いって子が来てたわよ。今客室で待たせてる。」

「ありがとうございます。行ってみます。」


僕を訪ねてくるような知り合いがいた事に驚きつつ、車椅子を走らせる。

だいぶ扱いにも慣れてきた。




「成瀬…?」

「…藍原、なんでここに。」


そこに居たのは数少ない僕の幼なじみの藍原 理人あいはら りひとだった。

病気になる前から仲が良く今も同じ大学に通っている。


「足…動かないのか?」

「うん、結構病気進んでるらしくて。」


数少ない僕の病気を知る人。


「今日はなんでここに?」

「心配だったから。…あと、」


言葉を詰まらせる。



「命日だろ、明日。」

「…忘れてた。」



忘れているわけなかった。

明日は僕の両親の命日。

酷い雨の日、真っ赤な血で染った地面は今も鮮明に脳裏に焼き付いている。

『通り魔殺人』。そんな簡単な言葉で済まされてしまった出来事。


「あれから五年か…。」


僕のお見舞いに二人で来てくれた。

仲が良くて近所でも評判のあるおしどり夫婦。

数分前まで笑っていたのに。


…僕が死ねばよかった。


毎日生き延びる度そんなことを思った。



「来てくれてありがとう、明日お墓参り行きたい。連れてってくれる?」


「おう、朝迎えいく。」


本当に優しい友人を持ったな。






✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【人物まとめ】

成瀬 綾人…僕、病気、余命ゼロ日

藍原 理人…僕の幼なじみ

僕の両親…五年前通り魔に殺される


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