第16話 次は貴方の背中を
「…連絡着いたんですか?!」
甲斐崎さんの驚く声が寮のフリースペースに響く。
話題は少し前に甲斐崎さんに話した僕の初恋の人について。
四年前から音信不通だったのだが昨日急に連絡が入っていた。
「成瀬先生にもそんな人いたんだ…。」
控えめに驚いていたのは少し前に仲良くなった佐倉くん。
最近、恋人である若宮くんとよく僕の元へ訪ねてきてくれている。
「返事なんて来てたんですか?」
「えっとね…。」
携帯で連絡画面を開き二人に向ける。
―『どっか空いてる日ある?』
「…デートじゃないですか。」
「会って少し話すだけだよ、近々留学でアメリカに飛び立つらしくてその前に会えない?って。」
中学の時に沢山驚かされてきた彼女の行動力が健在していた事が嬉しかった。
「返事は?」
「…え、してないんですか?」
「実はまだ…。」
久しぶりの返事に対する嬉しさと安心があったが、それと同時に今の自分と会ってどう思われるかが不安だった。
「…今会ったらがっかりさせてしまう気がして。」
平河くんの件があってから三日。
足はさらに動かしづらくなり杖を使って歩くようになってしまった。
「先生は、どうしたいんですか。」
「…!……前と反対になっちゃいましたね。」
以前佐倉くんに話したこと。
「世間体ではなく自分がどうしたいか、」
そっくりそのまま返されてしまった。
――僕はもっと怖いことを知ってる。
――伝えることは、信じること
「沢山背中、押してもらったから。」
佐倉くんの優しい微笑みとともに力強い思いを感じた。
「ありがとう…。僕、会いに行ってきます。」
「はい、…報告待ってますね。」
背中を押してもらい自然と勇気が出る。
ありのままの僕を彼女に伝えたい、ただその思いで連絡を返した。
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【人物まとめ】
成瀬 綾人…僕、病気、余命ゼロ日
甲斐崎 凪…耳が聞こえない
佐倉 優太…同性愛者
彼女…僕の初恋の人、耳が聞こえない
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