第4話 貴方を信じて生きていく

拝啓、生きる希望をくれた貴方へ。



成瀬の言葉二年経ってやっと受け取れた。


「ごめん」なんて受け取るつもりは無い。

最期まで俺らに会う未来を想像してくれてありがとう。

諦めないでいてくれてありがとう。


星名さんが動画を届けに来てくれた時、成瀬と俺が初めて話した空き教室に久しぶりに入った。

見かけによらずコーヒー飲むんだなとか、気を使ってオレンジにしてみた俺がすげー馬鹿みたいだったなとか。

そんなどうでもいいことを思い出してた。


どうでもいいが大切な思い出だったって思った。




心配してた進路のことだけど、俺は教師になることにした。


成瀬みたいにはなれないかもしれないけど、俺みたいな悩みを持ってる子の力になれるような、そんな人になりたい。

できることなら成瀬にも直接伝えたかった。

きっと優しく背中押してくれんのかな。


教師になりたいって思った時、こんな俺が人に何教えられるんだろって思った。


だけど、成瀬に貰った言葉が沢山残ってるって。

褒めてもらった優しさがあるって。


成瀬の言葉を信じることにした。




いつか言ってくれた言葉。


「平河くんが死んだら僕は悲しい」



って。


そんなこと言われちゃったから、死ねなくなった。

悲しんでくれる人がいるって、不謹慎かもしれないけど結構嬉しかった。


死ねなくて本当に良かった。


もう一度成瀬の言葉を聞けて良かった。



生きていてくれてありがとう、って言ってくれて嬉しかった。





生きてて良かった、ありがとう。



成瀬の言葉は俺の片隅になんて置いておかない。

未来に一緒に連れてく。


だから俺の中でずっと生きてて。




それとさ、ピアスありがとう。


割と高そうなやつでびっくりしたけど、このピアスが似合うような人になろうって思った。


ありがとう。




最期になるけど、


星名さんに成瀬ってどんな人なの、って聞かれた時、水みたいな人って言った。


色がないのにきらきらしてて、

そばにいるけど何も知らなくて、



それがないと生きていけないような、そんな人って。





俺はあともう少しだけ、成瀬が生きた未来を想像してみることにする。

忘れるとか、吹っ切るとか、正直まだできそうにないから。






一緒に前に進ませて、ね。








✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

【人物まとめ】

平河 大和…ピアスを沢山開けた子、自傷癖がある

成瀬 綾人…生きる希望をくれた人

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