第6話 貴方がくれた光
拝啓、優しい強さをくれた貴方へ。
成瀬先生。いかがお過ごしですか?
先生がいなくなって私の心にはぽっかりと穴が空いてしまいました。
私のこと沢山心配してくれていたなんて知りませんでした。
だけど、先生と話すことで私は支えられていましたよ。
先生の言ってた通り、病気で音が消えるようになって独りになっていた気がしていて。
見かねた母が私を四葉園に入れてからも、寂しさを感じていました。
そんな私に光をくれたのは貴方でした。
先生が私に、優しい強さをくれたんですよ。
先生だって頑張ってるからとかそんなことではなくて、
抗って、もがいて、信じて、生きていたから。
本当に綺麗な光でした。
病気を負い目に感じて事故だと嘘をついていた私とは違って強い人なんだと思いました。
最期に手話で言われたこと、
『告白は上手くいった?僕は言えたよ。』
って。
中学生の恋バナみたいで思わず笑っちゃった。
告白は、上手くいきました。
先生に一番に報告しようと思ってたからまだみんなには言ってません。
でも多分気づいてるかな。
応援とアドバイス、ありがとうございました。
一年記念の時に大和にあげようと思ってたピアス、成瀬先生のがあるからって拒否られた時には別れてやろうと思いましたけど、
これから先もずっと一緒にいたいなって思ってます。
先生も伝えられたんですね、良かった。
いつか会ってみたいです。先生の初恋の人。
いや、多分好きだった人。
先生のことだから恋なんてしないって言うと思って言えなかったけど、先生はずっとその初恋の人のこと好きだったと思います。
楽しそうに、寂しそうに話してたから。
女の勘ですけどね。
もし、もう少しだけ先生が生きられてたらって最近ふと思って。
きっと変わらず恋バナしてたなって思いました。
残り少ない時間だから大切にした訳じゃない、
成瀬先生と過ごす時間だったから、大切にできたなって。
かけがえのない時間をありがとうございました。
この先何があっても成瀬先生とすごした日々は忘れません。
忘れたくないです。
星名さんに成瀬先生の事聞かれて、初恋みたいな人だって話をしました。
心の底から出会えてよかったと思えた、私に沢山のことを教えてくれたから。
これから生きていく間、先生こんなことしてたなとかふと思い出して。
今何やってるのかなって、どうしようもなく考えて。
もう会えないんだ、って切なくなる。
初恋みたいな人。
だけど私は笑って生きてますから。
先生と過ごした時間が苦しくて泣きたくなるくらい、本当に良い思い出だったって。
一緒に生きられて良かったなって、笑いながら生きます。
また、どこかで。
沢山の優しさをありがとうございました。
貴方に出会えて良かった。
甲斐崎 凪
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【人物まとめ】
甲斐崎 凪…耳の聞こえない子
成瀬 綾人…優しい強さをくれた人
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