第7話 桃色の鯨を描く子
現在自由科目の授業中。この時間は皆本校で出た課題やテスト勉強など、それぞれ好きなことをする時間だ。
ふとある生徒に目がいった。
「
「はい…。」
彼の手元には桃色の鯨の描かれたスケッチブックがあった。
彼の名前は
「桃色の鯨も可愛くて良いね。素敵です。」
「
そう言ってスケッチブックから鯨の絵を切り離してしまった。何かまずいことを言ってしまったのだろうか。
「失敗した…何で、覚えたはずだったのに……。ごめんなさい…ごめんなさい……。」
「咲!大丈夫か?!成瀬、養護の先生呼んできて!」
「うん…!」
軽いパニックになったようにぶつぶつと呟き始めた高平くんに気付いた平河くんが叫ぶ。僕は急いで先生を呼びに向かった。
「本当にすみませんでした…。」
事態が落ち着き普段通りの業務を始めた職員室で僕は八神さんに深く頭を下げた。
「成瀬くんは悪くないよ。俺の説明不足だった、ごめんね。」
八神さんはそういうと、高平くんについて説明を始めた。
「咲くんは色覚異常を持ってる子なんだ。普通の人とは見え方が少し違ってる。そのこともあって親御さんも色々厳しくされてたみたいで、間違った色使って怒られたのがトラウマになってるんだ。」
高平くんは現在寮で生活している。おそらく寮生活を望んでいたのも厳しい生活を逃れるためのものだろうと教えてくれた。
「八神先生、養護室にいる咲くんから電話です。」
ほかの教員の方が八神さんに受話器を渡した。
「咲くん!目覚めたのか、良かった!…成瀬先生?いるよ、今一緒。…分かった。」
一通り話終えるとこちらに受話器を向けた。
「咲くんが成瀬先生と話したいって。」
今僕と話して大丈夫なのか…?
嫌な思いさせてしまったのに…。
「成瀬先生、大丈夫。」
ぐるぐる考えていた僕に八神さんは優しく言った。
静かに受話器を受け取る。
「代わりました、成瀬です。」
『…先生と話がしたいです。忙しいですか…?』
思ってもいない言葉だったが、こんな僕と話したいと言ってくれるのなら断る理由はなかった。
「僕も話したいです、養護室向かいますね。」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
【人物まとめ】
成瀬 綾人…僕、病気、余命ゼロ日
高平 咲…色覚異常を持つ、親へのトラウマ
八神 圭…国語教員
平河くん…ピアスを沢山開けた子
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