第2話 こんな僕
高校科の教室に案内されると五人ほどの職員に迎えられた。この園では数学、国語、英語の主要科目のみ担当の教員がいる。その他の教科は自由科目となり必要な時には参考書などを用いて教えているらしい。
「綾人には自由科目の職員してもらうね。」
「え、僕資格とか持ってませんし。第一まだ学生で…。」
僕は現在大学二年生。訳あって半年間の休学を余儀なくされているのだが。
「資格なんて必要ないわ、自由科目は塾みたいなものだから。それに名門私大通ってる綾人なら大丈夫でしょ?」
「勉強好きなだけなので…。」
お姉さんのあまりの勢いに押されてしまう。
「そういえば高校科の担当は八神くんだったわね!綾人のことよろしくー!私小学科行かなきゃだからあとはお願いね。」
それだけ言って教室から出て行ってしまった。僕の教育係(?)は八神さんと言うらしい。
「高校科で国語の教員をしている
体育会系なガタイの良さと爽やかな笑顔が素敵な人だった。
「成瀬 綾人です、大学休学中の半年間お手伝いさせていただきます。お願いします!」
軽く一礼をして挨拶を済ませると、八神さんは僕の肩に手を置いて言った。
「じゃあ成瀬くん、早速教室行ってみよっか!」
「いきなり…ですね。」
苦笑混じりだった。
「そういえばさっき大学休学してるって言ってたけどなんで?」
八神さんと共に教室へ向かう途中でそんなことを聞かれた。出会って一日目の八神さんには少し重たい話になるかもしれないと思いすぐに返事ができずにいると
「あ、ごめん。無神経なこと言った。忘れて!」
と言ってくれた。気を遣って貰って申し訳ないと思いつつ、その優しさに感動した。
「起立、礼!」
教室に着くとすぐに号令の声が聞こえた。
「おはよう!今日は授業の前に自由科目の新しい先生を紹介するぞー!」
「成瀬 綾人です。大学の休学中半年間だけこの園のお手伝いに来ました。よろしくお願いします。」
生徒の顔を一人一人見ながら挨拶を済ませた。席の数は十ほどあったが座っているのは六名ほどでまばらな拍手が響く。
「自由科目の時間以外でも教室いて貰っていいから何かあったら声かけてね!じゃあホームルーム終わりー!」
今の時間はホームルームだったらしい。八神さんによるとこの後十分間休憩を挟んで一限目が始まるためその時間が仲良くなるチャンスだということだった。
「あんた、何で休学してんの?」
早速一人の生徒に話しかけられた。両耳にピアスの穴が多く見られて不良っぽい感じだった。
「こら平河、ちゃんと敬語使いなさい!それにそのことは…!」
「大丈夫ですよ。敬語も外して貰っていいです。歳近いし距離近い感じして嬉しいので。」
生徒に注意する声にも優しさを感じる。八神さんちゃんと怒れないタイプだな。
「で、何で?」
これは言っちゃってもいいやつだろうか。周りの生徒も八神さんもこちらを注目している。
「何かあった時の為に伝えおきますね。」
――僕、病気なんです。
「…え?」
「は?」
質問してきた生徒も八神さんもすっとんきょうな顔をしてこちらに目を向ける。誰だっていきなりこんなこと言われたら驚くだろう。
「大学は休養のために休んでます。」
「休養のために休んでるなら何でこんなこと…。」
「病気と言っても動けない訳じゃないのでとても暇で。そんな時にここの職員の
僕が患っている病気は外に分かる症状はほとんどない。身体の内部を侵食していき徐々に死へと誘う恐ろしいものだ。
「変な空気にしちゃってごめんなさい。」
重たくなった空気を見かねて言った。こういう空気が苦手だったため言うつもりはなかったのだが、倒れてからじゃ遅いからというお姉さんの言葉から伝えておこうと思った。
「僕の話はこのくらいで大丈夫なので君のお話聞かせて下さい。」
小さく口角をあげて言った。
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【人物まとめ】
成瀬 綾人…僕、病気
八神 圭…国語教員
平河…ピアスを沢山開けた子
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