第4話 僕の何気ない日常

「先生…病気、治るの。」

「分かりません。」

いきなり病気のことについて聞かれた。

「治療しねーの?」

平河くんには単純な疑問だろう。突然目の前の人が病気と言われその解決策を探そうとするのは。

「余命宣告されました、に。」

七年前は僕が中学生になってすぐのこと。あの日のことは今でも鮮明に覚えている。突然倒れ、病院に連れて行かれ、余命を宣告され、両親が泣き崩れた。できることなら生まれ変わってもあんな思いはしたく無い。

「…何年って?」

「余命です。」

「……半年って過ぎてるじゃん。」

僕は中学生の夏休み頃死ぬだった。しかしこうして今も普通の生活を送っている。病の進行が止まることはないが薬や検査の甲斐あってなんとかここまで引き伸ばすことに成功していた。

「……いつ死ぬか、分かんないってこと?」

「うん、余命ゼロ日なので。」

「怖くねーのか…そーゆーの。」

怖い…と言う感情を僕はどこに置いてきてしまったのだろうか。

「最初は怖かったな。リストカットとか自殺未遂とか色々騒がせちゃったりして、だけどもありましたよ。」

「良いこと…?」

「僕は本当にいつ死ぬか分からない。こうして話している最中でも、お風呂に入っている時でも、どこか知らない場所で一人でいても死ぬ可能性は0じゃない。…だけどそれは平河くんも同じです。」

「…うん。」

の人が過ごす何気ない毎日を一分一秒無駄にしないでかけがえのなさを感じられるのも、案外悪くないですよ。」

七年間の余命ゼロ日生活から得たのはそんな考えだった。毎日を必死に生きようとかそういう暑苦しさ混じりなものではなく、この人に会えるのはこれで最後かもしれないと言う思いがその人をより大切にさせた。


「そういえば、…時間結構たっちゃってるけど大丈夫ですか?」

「そろそろ出なきゃ。…あのさ、先生。」

「何?」

「これからはって呼ぶから。」

「うん、りょーかい。」

友達の会話みたいで嬉しかった。平河くんのことを少しは知れたのかもしれない。また明日も会えますように、と密かに心の中で思った。


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【人物まとめ】

成瀬 綾人…僕、病気、余命ゼロ日

平河 大和…ピアスを沢山開けた子、自傷行為がやめられない

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